橋本:ツアーでプレーしている女子プロでも、パッティングで芯を外してしまう選手が、実は結構いるんです。とくに、芯よりもトウ側へずれてしまう選手が多い傾向です。
目澤:ブレード型のパターで打点がトウ側へずれると、ヘッドが当たり負けしてボールは右へ転がってしまいます。かつては、ブレード型を使いたくても、それを嫌がってマレット型を使う選手が多くいました。そこで、登場したのがトラスでした。ブレード型でも、打点のブレに圧倒的に強いことが女子プロの間で浸透して、使用者が増えていったと思います。
橋本:米国の大きなアマチュアの試合に勝ったあの女子選手も、その試合でトラスを使用していましたね。
ビル:ローリー・マキロイもブレード型に愛着をもつ選手のひとり。メジャーでの最初の優勝もブレード型のパターでした。彼の場合は、左へ巻きこむミスに悩んでいました。その対策として、スパイダーを試し、左右ブレの小ささを実感して、スパイダ―を使うようになったんです。パットの左右ブレはパターの重心深度が関係します。通常ブレードの重心深度は約10ミリで、10メートルの距離で10ミリ芯を外すと、左右に2.5カップずれることがわかっています。対して、スパイダーの深度は35ミリ。そのぶん慣性モーメントが大きくなり、スパイダーの場合は同様のミスヒットでも左右に1カップのずれで収まります。マキロイのパットスタッツ上昇はこうした背景もあるんです。
目澤:そうですね。CG(重心)が後方にあれば、フェースが閉じる心配がなくなるのでストロークにも好影響を与えます。そして、左右の打点ずれは、ボールの回転にも影響します。トウに当たればフェースは開き、バックスピン傾向が強まってしまう。これもパットが外れる要因です。
ビル:ちなみに、マキロイは試合ではスパイダーが今のエースパターですが、練習ではブレード型を使って、ストロークのコンディションをいつも確認しています。技術とギアの両面から自分のパッティングを診ています。こういった努力も事実としてあります。
斜め上から45度の角度で入れた溝の秘密
橋本:トラスも、スパイダーも、ピュアロールというインサートが入っていますね。インサートのないパターとマシンテストで比べると、ボールの回転がまったく違います。ピュアロールインサートでは打ち出しから順回転で安定しますが、通常のパターは逆回転(バックスピン)で打ち出されるケースが続出します。
ビル:ピュアロールインサートには溝が入っていますが、溝の入り方がボールと正対ではなく、上から斜め45度の角度で溝を入れています。これによって、順回転、つまり「ピュアなロール」で打ち出されるわけです。我々の調査では、通常のアマチュアの場合、4球に1球(25%)は順回転で打ち出せていません。つまり、36パットの人は9パットが逆回転傾向。これがパットの数が減らない理由のひとつ。PGAツアーのトッププレーヤーだと、そのミスは10%以下です。数年前の、全盛期のジェイソン・デイは、ほとんどが順回転のパットで、ミス率なんと5%以下でした。
目澤:ビルが話したとおり、トッププレーヤーは自分の技術で順回転をボールに与えられますが、アマチュアの場合は、それが課題のひとつ。ピュアロールインサートによって、それがパフォーマンスとして再現できるというわけですね。
稲見萌寧、高橋彩華、堀琴音、申ジエ、永峰咲希…トラスが日本の女子ツアーで人気になった背景、R・マキロイのパットスタッツを押し上げたスパイダー効果、そして、ボールに順回転を与えるピュアロールテクノロジー。知っていたようで、知らないことばかりの興味深いトークショーでした。