ラウンドレッスンをよく行う北野正之プロに聞くと、自身も若いときはイライラ全開だったという。
「30代のときは競技ゴルファーでしたから、プレーが遅い選手を見てはイライラしまくりでした。人より上に行くことばかり考えていたので、相手のミスを望んでいたくらいです。でもイライラが増すほど、自分のプレーはガタガタになり、スコアも最悪なものに。そこで心理学やメンタルの本を読んで勉強したんです。イライラしたままプレーしてもいいことは絶対にありません。せっかくゴルフに来たのに不快な気持ちでラウンドを終えるのはもったいないですよね。だからこそ、イライラの原因は何か? どうすれば対処できるのか? を知ってほしいんです」
どうしてイライラするのか? その原因はどこにあるのか?
「ゴルフを始めた頃は自分のプレーで精いっぱいですが、ラウンドに慣れてくると周りが見えるようになります。すると知らず知らずのうちに同伴者や前の組など、周りのプレーヤーに“マイルール”を当てはめてしまうんです。このマイルールは人それぞれ異なりますが、要は初心者だったときに上司や先輩から教わったラウンドのマナーです。たとえば素振りは2回までとか、バンカーで打つときはレーキを一緒に持っていく、最後に打ったらクラブはしまわずサッとカートに乗る、などです。これらの大前提が、スロープレーしてはいけない、周りに迷惑をかけてはいけない、プレーファストを心がけよう、というものです。そしてこのマイルールを誰かが破ると自分のなかで、あの人は遅いとバツ印をつけてしまい、イライラモードに突入してしまうのです」
いつの間にか自分だけのルールを他人に照らし合わせてしまうのだ。その結果、プレーが遅い、進行が遅いと決めつけ、イライラがどんどん増していくわけだ。
「イライラを抱えたゴルファーはプレーが雑になりがちで、周りにも悪影響を及ぼします。また、ゴルフに対して意欲が高いゴルファーでもイライラは起こります。早く打ちたいという前向きな気持ちが強いからです。イライラを悲観する必要はありません。このイライラは、すべて自分自身の心の問題です。だれでも簡単に対処できますよ」
"行動モード"でイライラを激減させよう!
ゴルフのイライラを放置しておくとどんどん悪化していきます、と北野プロは警鐘を鳴らす。
「あの人はプレーが遅いと決めつけてしまうと、いつの間にか“監視モード”に入ってしまいます。するとその人のプレーばかり気にしてしまうのです。さっきは素振り4回、今度は5回……。ボールを捜しに行くのになぜクラブを持って行かない……。こうなるとイライラは倍増していくだけです。
大前提として他人の行動や考え方は変えられません。もう少し早くプレーしよう、とアドバイスはできますが、それですぐに変わるものでもありません。前の組をにらんでも、プレーを監視しても、イライラはなくなりません。それならどうすればいいのか? 簡単です。他人は変えられないのですから、自分から行動を起こせばいいのです」
自分から動く“行動モード”こそが、イライラ解消の特効薬になるというのだが、具体的にどうすればいいのだろうか?
「同伴者の場合は、自分から積極的に協力することです。ティーショットが曲がって林に入ったら、自分も一緒にボールを捜す。イライラしているときは、ボール捜しを遠くで監視しているはず。そして『早くしろよ』なんで毒づいていることでしょう。でも一緒に捜せば、イライラは間違いなく減っていきますし、プレーファストにつながります。プレーが遅くなりやすいのはラウンドに不慣れなゴルファーですから、バンカーをならしてあげたり、クラブを持っていってあげたりと、自分から積極的に手伝う姿勢が大切です」
では、前の組が詰まっている場合は、どうすればいいのか?
「自分ができることをしましょう。素振りで体をほぐしたり、ホール図をチェックしてコースマネジメントを考えたり、ターフ跡やピッチマークを直すのもいいです。自分が行動していれば、前の組も気にならなくなりますから。ゴルフって実はやるべきことが多いんです。でもスロープレーは厳禁、周りに迷惑をかけちゃいけない、そういったルールに縛られているとショットに必要な準備を省略してしまうのです。プロだってグリーン上でラインを読むとき、ボール後方、カップ後方など、さまざまな角度からラインを探っていきます。プレーヤーそれぞれに時間は与えられているのです。それを理解することも大事ですね」
※週刊ゴルフダイジェスト2022年11月29日号「ゴルフの『イライラ』対処法」より