東京オリンピックの金メダリスト、ザンダー・シャウフェレは言います。「僕は28歳ですが、ツアーでプレーしているとすごく年寄りになった気がするんです。若手がどんどん優勝するので刺激を受けます。それがここで戦うモチベーションになる。だから若手にありがとうと言いたいですね」。シャウフェレが刺激を受けた一人は、間違いなくウィル・ザラトリスでしょう。松山英樹が優勝したマスターズで2位に入り、今年は5月の全米プロでジャスティン・トーマスとプレーオフを戦い、敗れたものの2位。全米オープンでも2位タイに入り、PGAツアー本格参戦2年目にして中心メンバーの一人になりました。
そして、参戦54試合目にして、ザラトリス念願の初優勝の瞬間が訪れます。しかも、プレーオフシリーズ初戦のフェデックスセントジュード選手権の勝利だったため、一躍ポイントランク1位に躍り出ました。ところが続くBMW選手権でケガを負い、椎間板ヘルニアと診断され最終然のツアー選手権を欠場。年間王者のチャンスは水泡に帰し、ライダーカップ出場の夢も叶いませんでした。ザラトリスは言います。「もう2度とこんな思いをしたくないので、医師の言うことをしっかり守ります」。終わりは少し悲劇的でしたが、ザラトリスが今シーズンの台風の目だったことは間違いありません。
2022年、8月以降に2勝。新星トム・キム
ザラトリスと入れ替わるようにスターダムにのし上がったのが弱冠20歳のトム・キムでした。8月のウィンダム選手権でツアー初優勝したときも注目度は高くありませんでしたが、プレジデンツカップでの気迫あふれるプレー、新シーズン3戦目で2勝目を挙げ、21歳になる前に複数回優勝を飾ったタイガー以来の選手となり、注目度は急上昇しました。マキロイやビッグネームとキムやザラトリスなどの新星がPGAツアーのストーリーラインを彩ったのが今シーズンの特徴でした。22年の初めは世界ランク131位だったキムが、今や世界ランク14位まで上り詰めています。「20歳の僕がPGAツアーでプレーしています。疲れなんて知るわけがありませんよ。5歳児がディズニーランドで遊んでいるような感覚です」とキム。22ー23シーズンも新たなスター誕生の予感がします。
週刊ゴルフダイジェスト12月13日号より(PHOTO/Blue Sky Photos、Hiroyuki Okazawa、ARRANGE/Mika Kawano)
※2023年2月11日に一部写真を修整しました。