史上最年少での年間女王、年間獲得賞金史上最多額など記録づくめで22年シーズンを終えた山下美夢有。安定したショット力とショートゲームを支えたスウィングをみんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファーの中村修が振り返る。

22年シーズン、開幕ダッシュで10戦中5勝をあげた西郷真央選手に対して、山下選手は4月に3週連続予選落ちを喫していました。ところがコーチを務める父・勝臣さんが1か月ぶりに試合会場に帯同しスウィングをチェックすると、その週に今季初優勝。その後はご存じの通りトップ10回数21回(1位)、ツアー新記録となる60を叩き出すなど、コースレコード更新やタイを毎月のように記録していきました。

トレーニングに裏付けされた下半身の強さや、父・勝臣さんの指導も大きな要因ですが、ここではスウィングの特徴を三つにしぼって解説します。

一つ目はスウィング中、スウィングプレーンに対してフェース面が常にスクェアをキープしている点です。画像Aの左ではフェースをボールに向けたままテークバックしています。フェースの向きを決めたら、それを変えずに体を回してスウィングしているので方向性に優れ、調子の波があっても、テンポやトップの間といった調整で復調できるところが強さの秘密。このフェース面の使い方はドライバーからウェッジまですべての番手で共通しています。

画像: 画像A フェース向きを決めたら、ボールにフェースを向けたままテークバックし体の回転でスウィングするので、方向性に優れている(写真/岡沢裕行)

画像A フェース向きを決めたら、ボールにフェースを向けたままテークバックし体の回転でスウィングするので、方向性に優れている(写真/岡沢裕行)

二つ目は手元と体の距離が変わらない点です。画像Bは50~60ヤードのアプローチショットですが、アドレスで作られた手元と胸の距離を変えずにテークバックし、切り返し以降もその距離が変わっていません。切り返しで左ひじが曲がったり、体が傾いたりしてしまうと入射角が一定にならず、スピン量が安定しないので。その結果、距離感がばらつくことにつながります。でも、山下選手の場合、一貫してこの手元と胸の距離が変わらない。小さく打つアプローチでも手元と胸の距離を保っているので、入射角とスピン量が安定し、距離感が狂いにくいという特徴があります。

画像: 画像B アプローチのような小さいスウィングでも手元と胸の距離がキープされていることで入射角とスピン量が安定し距離感が狂いにくい(写真/中村修)

画像B アプローチのような小さいスウィングでも手元と胸の距離がキープされていることで入射角とスピン量が安定し距離感が狂いにくい(写真/中村修)

三つ目は背骨の外側に太い軸を持たせている点です。画像Cのように背骨の外側に太い軸を描いてみると前傾角をキープしたスウィングの軸が見て取れます。背中にこのような太い軸をイメージするだけでもスウィングの意識は変わってきます。山下選手のようにテークバックで右腰を止めずに後ろに引くように使うと、背中がしっかりとターゲットを向くような深いテークバックが取れますし、トップでは右のかかとに荷重されるので、バランスよく下半身から切り返すこともできるはずです。前傾角も、とても自然にキープされていますね。

画像: 画像C 背中の外側に太い軸をイメージ。テークバックで右サイドを止め過ぎずに右腰を後ろに引くようにすると、きちんと右かかとに荷重され、バランスよく下半身から切り返せる(写真/大澤進二)

画像C 背中の外側に太い軸をイメージ。テークバックで右サイドを止め過ぎずに右腰を後ろに引くようにすると、きちんと右かかとに荷重され、バランスよく下半身から切り返せる(写真/大澤進二)

平均ストロークが日本人初の69点台、パーオン率も稲見萌寧選手を抜いて1位と抜群の安定感を見せつけた22シーズンの山下選手。来季は2001年生まれの若き女王に西郷真央、稲見萌寧、吉田優利、川﨑春花、岩井姉妹などがこぞって「打倒、山下美夢有」と挑んでくることでしょう。

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