22年のナショナルチームは男子7人に女子6名がメンバー。その中から中島啓太、蟬川泰果、橋本美月、馬場咲希が座談会に出席。男子の2人は今やプロとして活躍。中島はマコーマックメダル2年連続の受賞を経てプロへ。蟬川はアマチュアとしてプロツアーで2勝を挙げ、プロ転向。
女子は、22年全米女子アマで服部道子以来37年ぶりに日本選手優勝という快挙を成し遂げた馬場と21年アジアパシフィック女子アマで優勝、22年クィーンシリキットカップで個人・団体優勝を飾った橋本の4人。
座談会の前に「グリーン上でのエイムポイント」を紹介
ガレス グリーンの傾斜を読む際、目だけで判断すると傾斜が重なり、騙されることが多いのです。だから、足裏の感覚を養って、足からスロープがどれぐらい傾いているかを知るのがエイムポイント。エイムポイントエクスプレスのボードには数字が書いてあり、1%から5%までのスロープが作れます。これを使って、実際に足で感じるトレーニングをしています。
基本はゼロを感じること。どれが平らなのか、体の感覚を養うのです。そこから角度を高めていき1%ずつ感じられるようにするトレーニングです。4%であれば、指は「4」として狙いを決めます。アダム・スコット選手が実践していて有名ですが、グリーンが速いときは、手を顔のほうに近づけ、エイム(狙い)が外側に行くようにする。このように調整してスロープの角度に応じて打ち出す方向を決めるのです。
進行の山中博史JGA専務理事からエイムポイントについて聞かれた選手たち……。
蟬川 めちゃくちゃやります。日本オープンでも実践しました。ジョーンズさんのエイムポイントで(パットが)入るようになりました。
橋本 私もけっこうやります。
馬場 私はまだ習ってないので、できません……。
ガレス 学んだ上で試合で使っていく。そういう順番が大事ですね。
室伏 (ハンマー投げで投げるサークルは)平らですけど、これはアダプテーション(適応)ですね。体を外的要因にどう適応させるかはスポーツで大事なこと。適応できる選手が強くなるのだと思います。
続いて室伏長官に、アスリートの先輩として、オリンピアンとして、メダリストとして、選手から質問。
馬場 オリンピックの空気感は他の試合とは違いますか?
室伏 そうですね。何が違うかと言えば国を背負うということが違いますね。
橋本 スポーツ選手として長い期間を活躍されましたが、長く戦い続けるために、こんなことをやってきてよかったことなどを教えていただきたいです。
室伏 目先の結果だけではなくてロングタームで考えていきます。将来の自分につながる選択していくこと。また、年月で体が変わりますから、体に応じたテクニックを学んでいく姿勢を続けることだと思います。(室伏氏はハンマー投げの選手として00年シドニー五輪9位、04年アテネ五輪金メダル、08年北京五輪5位、12年ロンドン五輪銅メダル)
蟬川 調子の悪い時にどう考えていたのか気になっています。ゴルフで言うと、うまくスコアに直結しない、ショットも普段は得意なのにダメなときがプロになってから多いんですがどういった形で試合に臨んでいたのでしょうか。
室伏 ハンマー投げもゴルフも同じ動きをするスポーツです。そのためスランプやイップスになることも多いと思うんです。好調時は、まずずっと続かない。突然、今までやっていたことができなくなるということは多々あります。なので、こういう(スロープのような)アダプテーションですね。外的要因が変わっても適応できる能力をつけることを忘れずにやること。調子が良いと、そればかりをやりがちですが、そうするとスランプになりやすい。ゴルフは同じ動きをするゆえに不調に陥りやすいスポーツですので、外的要因を変えることを意識してはどうでしょうか。
蟬川 すごく迷ったりしながら打つことがあるんです。ゴルフというのは45秒以内と決められた時間の中で決断していくのですが、そういった時に迷ったまま、いってしまうことがあって…。
室伏 何に迷うんですか?
蟬川 (ホールの)左右にプレッシャーがあるとするじゃないですか、OBゾーンが右にも左にもあって、どっちもセーフティじゃない。その時にちょっと気持ち悪いなと思って、悩んで打ってしまだったりとか、(パッティングで)これを決めないといけないのに、最初はストレートラインに思ってたのに、ちょっとフックに見えてしまうとか。
室伏 迷うことはパフォーマンスに影響が出ますので、やはり自信を持って決断していくことが大事だと思います。その1球ですべてが決まることもありますが、アベレージとして、全体として、いい決断をしていくこと。全体としてレベルアップしていることが大事なのかなと。すみません、ゴルフの素人ですけども…。それと、一流選手は切り替えが早い。次に巻き返せると思ってやっています。
蟬川 ありがとうございます。
室伏 ずっと同じ運動を繰り返すことによって体の不調に陥ったりとか、メンタル的に目標を見失うことがあります。長くやるほどそういうことは起こる。私は外的要因を変える「ハンマロビックス」といった新しい運動を考えて、同じ運動にならないトレーニングを考えてやっていました。
中島 室伏さんは長年にわたって、日本代表として日の丸を背負っていました。日の丸を背負って競技活動を行うのはどういう感じなのか聞かせてください。
室伏 プレーする時は皆さん1人ですけど、国を代表するということはみんなが後押ししてくれるわけです。背負うとプレッシャーになりやすいですが、皆さんが応援して期待してくれていることを力に変えてパフォーマンスに結びつけられるようにすると、今までできなかた体験が生まれます。
中島 ありがとうございます。
室伏 日の丸を背負ってプレーするのは楽しいと感じますか。それともプレッシャーになって普段できることができなかったことが、中島選手の経験上あるんですか。
中島 僕は2015年からナショナルチームのユニフォームを着させていただいてまして、着るだけで力が湧いてくるというか、ワクワク感が湧いてくるんですけど、最近はちょっとプレッシャーに感じたり、緊張する場面が多かったので、とても聞いてみたかったお話を聞くことができました。
室伏 プレーする時は集中しますが、あまり緊張しすぎないでいいんです。普段通りに。
山中 中島選手は、プロ入り後もJGAのマークを入れたシャツとかキャディバッグを身につけています。契約メーカーからちょっと怒られるかもしれませんが、おそらく日の丸を意識していたいというのがあるのだと思います。
室伏 素晴らしいですね、ファンが増えるんじゃないですか。