12月16日、六本木ヒルズ アカデミーヒルズで2022年度JGAナショナルチームが慰労会を開催。それに先立ち、室伏広治スポーツ庁長官とJGAナショナルチームメンバー、ガレス・ジョーンズヘッドコーチによる特別座談会が行われた。選手とコーチの信頼関係が伝わってくる内容だった。

続いて、室伏長官からガレス氏に質問が送られた。
室伏 お聞きしたいのは、日本に来て最初の印象と、どんな課題を感じ、今どうなのかということ。
ガレス 初めて来た時(2015年)に感じたのは、非常に勤勉な選手が多いということ。たくさんの球数を打ち続ける練習をたくさん見ました。同時に、選手には挑戦して頑張るメンタリティがあると思ったので、もっとスコアに直結する練習方法を提案をしていきました。日本はドライビングレンジで練習することが多い。そこでショートゲームへアクセスしやすい環境を作っていこうと思いました。私がレガシー(遺産)を残すとすれば、ショートゲームを練習する場所を増やしたり、そこへのアクセスが増えるレガシーを残したい。今挑戦しているのは、選手が勇気を持って練習方法を変えること。前例がなくとも効果が期待できる練習方法にチャレンジすることへ注力しています。

室伏 何%ぐらいチャレンジが進んでますか。
ガレス 選手を毎年選考してチームメンバーが変わりますから、明確な数値は言えませんが、いいところまで来ていると思ってます。先輩から後輩へ教えていくカルチャーもでき上がってきました。実際、アジア太平洋の地域ではかなり好結果が出てきました。

結果よりも、成長過程に「JOY」を感じてほしい

次は、ナショナルチームメンバーへガレスコーチの練習法や考え方について聞いていった。いちばん長く指導を受けた中島選手から。
中島 ショートゲームの練習をたくさん行うのはナショナルチームに入るまでありませんでした。先輩方がそういう練習方法をすでにされている状態のなかでチームに入ったので、それを真似て、同じ活動をして、みんなで強くなった印象です。

山中 日本の練習施設は本当のグリーンを使ってアプローチができる、そういうショートゲームの練習場は少ないんです。そういった施設を作る希望をジョーンズコーチは持っています。
室伏 若い頃から、ショートゲームに親しんでいくことができる環境ですね。これはゴルフ人口の増加にも繋がりそう。気軽にできるようなところになるのが理想ですね。

再び、室伏長官から各選手に質問が飛ぶ。
室伏 ゴルフしている時、どんな時がいちばん楽しいなって思います?
馬場 よく聞かれますが、わからなくて。ゴルフしている時はいつも楽しいので、いつが楽しいっていうか、いつも楽しい(笑)。

室伏 どんな課題を持って取り組んでいますか?
馬場 前回の試合時は、パッティングを強く打つことを課題にしました。試合で実際に試せるっていう機会はあんまりないなって思ったので、パッティングを強く打つことだけを考えてやっています。

室伏 橋本さん、いかがですか?
橋本 私は楽しむことを忘れがちなんですが、調子が悪い時、波があるのもスポーツだと思って、調子が悪いところから良くなっていく過程が楽しいなって思う瞬間でもあります。悪い時があればいい時もあるので、そういう時にゴルフの楽しさを強く感じる瞬間かなと。
室伏 素晴らしいですね。若いのにねえ。

ガレス (橋本選手は)「JOY」って言っていましたけど、楽しむことや喜びは非常に大事。それがあって長いキャリアを積み重ねていけるわけです。結果で生まれる喜びではなく、成長の過程を楽しむことが大事だと思っています。先日、宮崎で合宿をやってきましたが、アメリカからニール・スミスというスポーツ心理の先生を呼びました。彼が言ったことが「JOY」に関わることでした。スコアや結果がいい時、結果が良ければあなた自身が人間として優れているということではないし、結果が悪いから、あなたの人間としての価値が落ちるとか、結果に基いて「人間としての価値が変わるわけではないよ」ということを、かなり強調していました。だからこそ成長する過程で成長していることを感じ自分自身をしっかり評価してほしいと言ってました。

画像: 上段左から中島啓太、馬場咲希、室伏広治氏。下段左から蟬川泰果、橋本美月、ガレス・ジョーンズコーチ

上段左から中島啓太、馬場咲希、室伏広治氏。下段左から蟬川泰果、橋本美月、ガレス・ジョーンズコーチ

山中 ここにいる4人は将来の日の丸を背負っていく4人だと思います。室伏長官もそうでしてが、トッププレーヤーの責任、役割について、どのように考えていますか?
室伏 それはゴルフを超えて、スポーツ、社会にインパクトを与えること。これからの人たちに素晴らしい影響を与えていくことだと思います。自分のプレーだけではないところへ及んでいくと思います。コーチと話して、自分の良さを別の意味で出していけるか。みんなに愛されるスポーツ選手になることを取り組んでほしいです。

山中 蟬川選手が日本オープンに勝った時、「ギャラリーを楽しませたい。このまま安全にプレーするのではなく、最後までチャレンジで攻め続けるんだ」と言いました。その姿勢はどうでしょうか。
室伏 ファンに支えられていることを意識すること。早くからそういう意識を持つことは素晴らしいと思います。

蟬川 応援してくださっている地元の方への恩返しだったり、成長したところを見せたかったんです。飛距離はそれなりに飛ぶほうですが、そういった面で少しリスキーな攻めだったり、誰もが予想しない1打を打てることを心がけています。日本オープンやパナソニックオープンでは、ギャラリーの方たちが泣きながら祝福してくださったんで、本当にそう見せ続けることを意識しています。

山中 中島選手も、数々の経験してきたと思いますが、これからプロとしてどういった責任があると思いますか。
中島 ナショナルチームのみんなで話し合っている世界基準を意識しながら、僕はゴルファーである前にアスリートとして、アスリートのトップを目指してやっていきたいと思っています。

室伏 何も言うことはありません。ゴルフを通じて自分自身を成長させるのは素晴らしいことで、スポーツのモデルですね。

山中 ゴルフは生涯スポーツです。若い人の参加も貴重ですし、障害者の方もできます。三世代にわたって一緒にプレーすることもできます。スポーツ庁長官として、ゴルフに対する期待はありますか。
室伏 小学生の頃にアメリカに住んでいたことがありました。小学生でも友達と一緒に「ゴルフ行こう」って、パブリックで気軽にプレーして。小学生2人で行っちゃうような、そういう環境ってすごいなと思って。レッスンプロもいて教わったり、素晴らしい環境だなと思いました。とくに若い人がアクセスできる環境をどうしていくかは、力を入れていく必要があると思います。健康増進にも繋がります。ゴルフもオリンピックの正式競技に再びになって、オリンピック精神という意味でも、一歩前進したので、日本でもできるだけアクセスが進むようにしていくべきと思っています。

山中 プレーすると1万1000歩から1万7000歩ほど歩きます。同時にゴルフは見るスポーツでもあります。ギャラリーとしてトーナメントに行くと1万2000歩ぐらい。ゴルフと健康は我々の取り組むテーマです。
室伏 見るという視点も大事だと思いますので、我々も後押しできるよう意識します。ゴルフが多くの人に愛され、ゴルフを楽しんでもらうには、彼らのような若い人の影響が大きいので活躍を期待します。
ガレス 若いジェネレーションがゴルフコースに入って来られ環境を整備していくこと。生まれてからお墓まで、孫からおじいちゃん、おばあちゃんまでプレーできる環境をどんどん作っていく方向へ進ませたいですね。

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