飛ばしのポイント① 踏んで蹴る力をスウィングに変換

ただのジャンプではなく、跳んだ後、180度回転して着地するトレーニング。回転するためには高く跳ぶだけの脚力が必要なうえ、回転スピードもなければ180度回ることはできない
斎藤トレーナーは「基本的に飛ばすためのメニュー」に葛藤があった。
「脚周りを鍛えることで当然飛距離アップは望めますが、今ある”曲がらない”ことが犠牲になる可能性も考えられました。体が変わればスウィングにも影響が出ますし、ひょっとすると細かな感覚も失われるかもしれない。そのあたりは本人に確認しました。
脚のトレーニングは必ずスウィングと結びつけて考え、合間には素振りを行うなどして、鍛えた筋肉をスウィングと”結びつける”作業をしています。もちろん縦方向の強化も大切ですが、横、回転の動きも取り入れ、みっちり1時間くらいやっています」
青木は、飛んで蹴る力をスウィングに転換できるように、"強いバネとぶっとい軸"を手に入れるトレーニングに時間を割いた。

左右の片足で体の重みを支えつつ各10回ずつスクワット。踏んで蹴る力を強化するだけでなく、ここにひねりの動きを入れることで、よりスウィングとマッチさせていく

チューブで負荷をかけた状態で、反対方向へ横移動。脚の強化だけでなく、体幹の力を鍛え、バランス感覚を養う意味合いも持つ。スウィング軸を強める効果も高い
飛ばしのポイント② 左ひざを我慢して、溜めたパワーを逃がさない

左ひざを右ひざに寄せすぎることなくテークバックすることで、捻転差が最大化される。切り返し時のねじり戻りによって溜まった力が解放され、ヘッドが加速していく。「私はこのタイプでした」(青木)
トレーニングによって飛ばすための出力が上がったところで、それを受け止める"スウィング"が伴わなければ逆効果。今ある安定性を高めつつ飛距離を上げるために必要なこととは?
「捻転差を大きくし、全身で飛ばすのではなく"ねじり戻り"の力で飛ばすことです」
と大西コーチ。

全身で「クルリ」とテークバックし、手で大きなトップを作ることでヘッドの助走距離を稼いでいたのが昨シーズンまでの青木。「これでは速度も出にくいですし、再現性も高まりません」(大西コーチ)
これまでの青木は体全体を使って飛ばそうとしていたことで、再現性に問題が生じていたという。
「捻転差を増やすことで、トップをそこまで大きくしなくても同様かそれ以上のパワーが溜まります。そこからインパクトで一気に力を放出する打ち方には"体"も必要。トレーニングすることで武器である安定性に飛距離アップも加わるのでは、と考えました」
大西の意見には青木も大いに納得するところだ。
「脚を鍛えることで、踏む力が増すのはもちろん、横の軸ブレも減ります。これまで調子が悪いときは左ひざが動きすぎていて、横の移動が大きくなっていました。横移動が大きくなると地面を踏む力も出せなくなります。そうなると球が散るだけでなく、飛距離も出ません」(青木)
「左ひざが動きすぎると捻転差ができないため、スピードを稼ぐためにどうしても手でトップを大きくする必要が出てきます。ここを重点的に直しているところです」(大西)
飛ばしのポイント③ 切り返しは"静かに"

静かに切り返すポイントは、切り返しでクラブを体に近づけるように下ろすのではなく、クラブが体から遠ざかるように下りるイメージを持つこと
小さなトップで「切り返しが静かになる」と大西コーチ。
「手でトップを大きく作ると、助走距離は長くなりますが、切り返しでクラブが暴れ、ダウンスウィングで軌道が変わりやすくなるんです」(大西)
テークバックと切り返し以降の軌道が重なることで、当然再現性は増す。
行った道をトレースするようにクラブが下りてくるのが理想だが、「理想に近づきつつある」と青木。
飛ばない女の"静かな"逆襲、今から開幕が楽しみだ。
PHOTO/Takanori Miki THANKS/サザンリンクスGC
週刊ゴルフダイジェスト2023年2月21日号「青木瀬令奈29歳 ツアー1曲げない私が飛ばしに目覚めた」より