「虎さん」こと、韓国のチェ・ホソンはその独特なスウィングで有名だが、時松も、なぜあの形になったのか前から知りたかったそう。”釣り人”のようにも見えるあのスウィングの秘密をじっくり聞いてみた。
画像: 「右足が浮くようになるのは、体のターンに従って左へ踏み込むときに自然にそうなるから。でもその結果、飛距離が伸びて、アイアンショットもキレが出てきましたよ」(チェ・ホソン)

「右足が浮くようになるのは、体のターンに従って左へ踏み込むときに自然にそうなるから。でもその結果、飛距離が伸びて、アイアンショットもキレが出てきましたよ」(チェ・ホソン)

時松 一度ゆっくりと聞きたいと思っていたことがあるんですが、虎さん独特の”フィッシャーマンスウィング”は、 いつ頃から考え出したのですか?

虎 40歳を過ぎて、体が硬くなって思うように回転ができなくなってきました。無理して回転させようとすると、腰や背中が痛くなる。教科書のようなフォロースルーもできない。そこで体に負担がかからないようにフィニッシュのときに自然に動きに任せるようにすると楽になりました。

このスウィングでフィニッシュしたときは、打球も自然と真っすぐとなり、自分の体調やコンディションのバロメーターになった。テニスや卓球のラケットのインパクトと同じで、クラブフェースに当たるときに体を自然に回転させます。

時松 体の動きで球筋を作っているんですね。

虎 インパクトの瞬間に球筋はわかります。フックが出そうなときにはバランスを後ろに持っていったり、当たる瞬間に体の重心を変えることで、ヘッドの軌道、フェ―ス面の動きを変える。

右足が浮くようになるのは、体のターンに従って左へ踏み込むときに自然にそうなるから。でもその結果、飛距離が伸びて、アイアンショットもキレが出てきましたよ。

時松 なるほど。虎さんのスウィングは誰にでもできるわけではありませんから。でも飛距離が伸びたという話を聞いて、とても参考になりました。僕の課題はもう少し距離を伸ばすこと。飛距離が伸びるなら、僕もやりたいです(笑)。

虎 ゴルフでは体の柔軟性、瞬発力、タイミングの3つが大事。この3つがそろえばパワーが生まれます。私はインパクトの瞬間に体を180度回転させたりします。インパクトの瞬間、スクエアに当たると下半身の力がそのままボールに最大限伝わる。より風変わりなスウィングに見えるときは、ナイスショットの直後が多いのです。

時松 僕はテンフィンガーグリップで、よく注目されますが、ずっとこれでやってきたので。周りとは違ってもこれ以外できません。

虎 それがいいんですよ。私は若い頃、親指に大けがをしたというハンディがありますが、これをマイナスと思わずに、武器にするべきと考えるようになりました。ゴルファーにとって利き腕の親指は船にたとえると操縦舵と同じ。グリップも握るという考えでなく、指先に添えるというフィーリングです。

時松 虎さんのスウィングは人気があります。タイガー・ウッズは「考えるだけでも腰が痛くなる」と言ってました(笑)。

虎 アクションが多くて、コメデイアンみたいでしょう(笑)。でもギャラリーが喜んでくれるのが一番ですよ。プロは技術も大事ですが、ファンがいないと発展しませんから。

時松 ギャラリーサービスは大事ですよね。特にコロナ禍で観客がいない期間中、どうすればファンを喜ばすことができるのかと悩みました。

虎 私はゴルフを独学で学んだ。1995年(23歳時)、ソウル郊外の三星グループの名門安養CCでアルバイトをしながら球拾いやマットの掃除などでも多くのことを学びました。当時ゴルフ場の社長から「ゴルフ場の職員ならば、ゴルフが何かを学ばなければならない」という言葉を聞いたのがキッカケ。ゴルフの現場で学んだことは大きかったですね。

時松 虎さんのゴルフ哲学は参考になります。

虎 プロになってからは奥さんがいつも傍らにいて、「大丈夫(ケンチャナヨ)、大丈夫(ケンチャナヨ)、あなたならできる」と励ましの言葉をかけてくれることが力となりました。私のスウィングが生まれたのも妻や家族を食べさせるために考え抜いた結果です。今のスウィングが私を救ってくれましたね。

時松 何かのろけられているみたいですね。僕はまだ独身なので、妻や家族を食べさせるという実感は湧きませんが、愛する人々のためにゴルフをするというのは僕にとっても新しい景色が見えるかも……。話を聞いていると、結婚したくなりました。いや何よりも素敵な女性を探さなければ(笑)。

虎 韓国の素敵な女性を紹介しましょうか(笑)。

時松 ありがとうございます。もう一つ、僕は虎さんのショートゲームにはいつも感心させられているんですよ。特にパットはいつも入るイージしかありません。どこからでも入れてきそうという印象です。

虎 2メートル以内だったら、100パーセント自信がありますよ(笑)。

TEXT/Masaki Tachikawa PHOTO/Hiroyuki Okazawa,Shinji Osawa

※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月7・14日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より

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