単独トップでスタートした最終日だったが、ルーキーのE・コールがピタリと背後につけ2人の一騎打ちとなった。
カークが1打リードで迎えた18番パー5。ともにフェアウェイの絶好の位置からセカンドを放ったが、カークの打球は右にそれ、グリーン右端に跳ねて池に消えた。
「グリーンセンターを狙ったつもりが池。後から思えばあそこは無難に左に打つべきだった」
と反省。ボギーフィニッシュでコールに並ばれ、決着はプレーオフへ。しかしそこはツアー4勝のベテラン。プレーオフ1ホール目でタップインバーディを決め、カークが栄冠に輝いた。
「感謝の気持ちでいっぱいです」と声を詰まらせたのにはワケがある。
アルコール依存症とうつ病であることを公表したのが3年前。ジョージア大出身のエリートは20代で4勝を挙げ、順風満帆な人生を歩んでいるかに見えた。しかし4年ほど前から精神を病み、現実逃避するためアルコールの力を借りた。
うつ病にも悩まされ、ツアーを休止しリハビリに努め、約1年後に復帰。苦難を乗り越えつかんだ久々の勝利に「ここ3、4年僕を支えてくれたすべての人に感謝したい」と頭を下げた。
予感があったのか、前週にT・ウッズがホストを務めたジェネシス招待の出場権がありながら欠場し、同大会に懸けていた。賞金総額27億円のジェネシスを蹴って11億円のホンダで勝負。
そのもくろみは的中し、苦楽をともにした愛妻ターニーさんの前でトロフィを掲げた。「3人の子供に会って(優勝を)報告するのが待ち切れない」と父親の顔になったカーク。
プレーオフを戦った、ローラ・ボーの息子、E・コールについては「素晴らしい選手だ。ルーキーというし見かけもすごく若いから24歳くらいかと思ったら34歳。苦労した分これから花開くのでは?」と相手を称えた。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年3月21日号「バック9」より