練習は週3日空けないようにしている
ゴルフ力がアップしたのはここ数年。3年前メンバーとなった久邇CCの研修会に参加するようになり、男性たちとのゴルフで鍛えられたことも大きい。
「黒ティーからワンハーフ回ったり。そして若い選手たちと同じくらい飛ぶようにはなったけど、曲がるようにもなり、悩んでフェードボールを取り入れたんです。持ち球はドローボールなんですけど、極端に開いてスライスが出るように打つイメージです。試合でもめげずに打っていた。逆球で林に入ることもあるけど、ドローボールの入り方よりいい。やっぱり安定感が大事です。そして欲をかかないこと。コースでは、練習場のように打てるのは5割だと思うことが必要です」
すべてが嚙み合ったというのはこのあたりのことだろう。それでも「トレーニングはしていません」と小声で教えてくれた。
「練習がトレーニングだと思っています、練習では常に100%。打つときは打つ。流す感じはない。さすがに500球は打ちませんけど、打ち放題なら単価を考えます。1球9円くらいにはなるように(笑)。でも300球なら100球くらいはアプローチですね。50Y、70Yをずっと同じ場所に打つ。短いアプローチは、スッと構えてパッと打てるような練習をします。打ち方はライで変わりますから」
昨年は、練習を週3日空けないようにしていたという。
「立ち方を意識して。真っすぐスクエアの形をつくることで、いったんゼロに、"真っさら”にするんです。するとコースでミスが出ても、まず自分でリセットできるし、何より、いろいろなコースでプレーするときに脳と体が対応できる。”この形”を筋肉に覚えさせていますね」
「私、人が喜んでくれるから頑張っているのかも」
今年の目標は、日本女子オープンだ。
「ただ、スウィングを少し変えたのでまだ調子が出ていなくて。あんなに結果が出た昨年のままでよかったと思う方もいるでしょうが、よかったからこそもっと進化することができると、師匠の師匠が言うんです」
練習場ではできるようになったがコースではまだまだで、間に合うのか不安感はある。
「女子オープンも、自分のやろうとしていることができない限り、何を目標にというのは言えないんですけど、一昨年もフェードに変える過程で耐えて耐え抜いてシニア2位、ミッド2位。取り組みは結果的に成績に出てきますから」
近賀ならきっと、春からギアを上げながら、きっちり仕上げてくるのだろう。6月の女子アマ(秋田CC)が今年初の試合だ。
「私、人が喜んでくれるから頑張っているのかもしれません」
という近賀。
「優勝しても泣いていないんです。タイトルが取れてホッとした感じで。ただ、師匠を含め、周りの方が今も『嬉しい』と言ってくださるのを聞いて、よかったなあと実感しています。感謝という言葉は深いです。単なるありがとうだけでなく、恩返しの気持ちこそが原動力になる。ゴルフをやっていて、いろいろな人と出会えた。つながるのはそのときのことだけど、また一周して巡り合ったりするんですよ」
「ゴルフが伸び伸びできる指導者になりたい」
ボビー・ジョーンズの言葉に『人生での価値はどれほどの財産を得たかではない。何人のゴルフ仲間を得たかである』とある。
「師匠はボビー・ジョーンズが好きなんです。実業家でアマチュアのトップ選手で。お前も頑張れと」
今後の目標は?
「51歳からクラブ競技に出ているので55歳までは。女子グランドシニアに出るつもりは今のところありません。私が新参者だった時代の先輩たちはまだ今も頑張っておられます。女子アマの世界もレベルは上がっているんですよね」
指導者になりたい思いもある。
「実際にプレーして見せながらのレッスンは必要だなと。それに大人になったら指導者になりたいと思っていたんです。テニスをしていた時代は伸び伸びさせてもらえずつらい思いをした。そんな指導をしない指導者になりたいですね」
師匠がいつも言ってくれる競技アマとしての心持ち。
「うぬぼれるな、謙虚であれ」
「私も後輩に伝えていけたらなと思っています。今、自分で理解したから伝えられるようになった気がします」
伸び盛りの52歳。ここからまた進化していく―。(文中敬称略)
THANKS/久邇カントリークラブ PHOTO/Shinji Osawa
※週刊ゴルフダイジェスト2023年4月25日号「令和のスーパーアマ 近賀愽子~ビルドアップ”黒テー”
レディ」より