いつでも2オンを狙っていた飛ばし屋のプレースタイルが変わった
最終日、永峰咲希と通算9アンダーで並んで迎えた最終18番パー5。穴井は左ラフからの第2打で2オンを狙わず、ピンまで残り82ヤードの距離に、アイアンでフェアウェイに刻んだ。
3打目は58度のウェッジで打ち、ピン奥3メートルからバックスピンをかけてカップから30センチ左にピタリとつけることに成功。
なんなくパットを沈め、永峰とのデッドヒートに終止符を打った。勝利を決めた瞬間は右手を高々と上げて歓喜のポーズを決めた。
前回優勝したヤマハレディース優勝会見で目標に掲げた"年間複数回優勝"をわずか4週後に達成し
「今年のひとつの目標だったので、めちゃめちゃうれしいです」
と笑顔で振り返った。
新しいプレースタイルで奪った通算5勝目だった。
昨年までならツアー屈指の飛距離にものをいわせ、18番の第2打は2オンを狙っていたに違いない。ところがこの日は堅実にレイアップを選択。それでもしっかりと3打目をチャンスにつけてバーディを奪った。
今週8年ぶりにキャディとしてバッグを担いだ石井雄二コーチは
「以前は2オン狙いでいったかもしれないが、今日は(2オン狙いの)リスクを消しながら、違うバーディの取り方ができた。ゴルフの幅が広がったと思う」
と話した。
"常に振りちぎるクセがある穴井のミスをどうやったら減らせるか"
穴井は昨年暮れからアマチュア時代に指導を受けた石井コーチに再度師事している。
2人が目指しているものは、要約すれば、”常に振りちぎるクセがある穴井のミスをどうやったら減らせるか”、”年齢的な衰えをどうカバーするか”だった。
石井コーチは穴井の常に振り切るクセはそのままに、猫背気味だったアドレスの姿勢を矯正し、関節の可動域を広げることに着目。レントゲンによる骨格撮影までも取り入れて、ベストな姿勢を模索したという。
「彼女は姿勢が悪くなるとテークバックが手上げになって、球がよじれる。それを直したら、ドライバーよりもアイアンが真っすぐに飛ぶようになった。今日の18番の3打目も自信を持って打っていた」
と解説した。
悲願のひとつだった年間複数回優勝を果たし、次なるターゲットは長年の夢だったメジャー優勝で、次戦はワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ(茨城ゴルフ倶楽部)。
石井コーチは
「今の彼女は自分のいい時と悪い時の違いが自分自身で分かるようになった。メジャーへ向けていい準備が整ったと思います」
と太鼓判を押したが、穴井も
「だいぶ前から目標はメジャーと言ってきた。いい状態でメジャーに入っていけると思う」と自信をのぞかせた。新境地を開いた穴井のプレーに注目が集まる。