昨年の全米女子アマを制した馬場咲希さんを、中学1年から指導しているのがプロコーチの坂詰和久(さかづめかずひさ)、通称『わきゅう』だ。坂詰コーチと20年以上の付き合いがあるベテラン編集者Oが、謎キャラコーチの気になる話を聞き出す! 今回は「厳しいコンディションのなかでのプレー」がテーマだ。
画像: 坂詰和久コーチが中学1年から指導している馬場咲希さん(Photo/Tadashi Anezaki)

坂詰和久コーチが中学1年から指導している馬場咲希さん(Photo/Tadashi Anezaki)

自然の変化に対応できるよう準備をしておきたい

O編 そういえば、わきゅうはずいぶん前からジョン・ラームが好きだったよね。

坂詰 はい。まだラームが無名で、世界ランキングも300位以下だった頃、ラームのコーチが「彼は世界ランク1位になるよ」って言ってて。それから応援してたんです。

O編 ラームといえば、コンパクトなスウィングが特徴だけど。

坂詰 でも、胸はしっかり回ってるじゃないですか。ボクは、胸が回っていれば、手の位置なんか関係ないって思ってるんです。とはいえ、極端ですよね。そういう極端なところも好きなんですよ。

O編 そのラームが今年のマスターズを制したわけだけど、試合を振り返って、感じたこととかある?

坂詰 一番感じたのは、あれだけのレベルの選手たちでも、ああいう状況になれば、確実に影響を受けるんだな、ってことですね。

O編 あぁ。今年のマスターズは、サスペンデッド(中断)が何度もあったし、初日から2日目にかけては気温が20度近く下がったし、雨も風も強くて、コースコンディションも安定していなかったしね。

坂詰 それに影響されるのは当然なんですよね。それでも、あのクラスならもしかして……なんて思ったりしてたんですけど。

O編 でも、選手によっては、状況が悪くなったことを、チャンスと感じたかもしれないよね。スコアの伸ばし合いよりも、我慢大会のほうが得意って選手もいるだろうから。

坂詰 かもしれませんね。いずれにしても、ゴルフは自然を相手にするスポーツですから、それに対応できるように準備しておきたいですよね。

よそゆきのプレーはしてほしくない

O編 もし、自分が教えている選手が、そういう厳しい天候や、コースコンディションの悪いコースでプレーをするとしたら、わきゅうはどんなアドバイスをするの?

坂詰 そうですねぇ……。よそゆきのプレーをしないようにって、言うと思います。

O編 よそゆき?

坂詰 普段やっていないことはやらないってことです。たとえば、全英オープンなんかに行くと、風が強いから低い球を打てとか言われるでしょ。

あと、地面が硬くて跳ねやすいから、バウンスの小さなSWやソールの薄いアイアンに替えろとか。でも、そんな普段やっていないことをやったり、使い慣れていない道具を使ったりしても、上手くいくはずないんですよ。

O編 慣れないことをすると、不安も生まれやすいしね。

坂詰 全英= 低い球ってイメージがあるかもしれませんが、いつもとそれほど変わらない球で、結果を出している選手もたくさんいるんですよ。

確かに、タイガーなんかは、スティンガー(地対空ミサイルのように目標を狙う超低弾道の球)を打ちますけど、タイガーは普段からそれを打っていますから。

O編 状況が悪くなると、何かいつもと違うことをしたくなるものだよね。

坂詰 でも、普段やってない人が、無理して低い球を打ってもいいことなんてないんです。だって、やりすぎれば逆に球は吹き上がるし、ずっと打っていると筋肉が硬くなるから曲がりやすくなりますし。

さらに、そういう力みは体に残りやすいから、次の日のショットにも影響が出ちゃうわけです。それなら、番手を上げて、ゆっくり打ったほうがずっといいですよ。

球筋を作る選手は普段からやっている

O編 う〜ん。にわか仕込みの技術は、メッキが剥がれやすいってことか。

坂詰 天候やコンディションが悪いときに球筋を作ってくる選手というのは、普段からそういう練習をしていて、普段からその技術を試合で使っているんです。そうじゃない人は、無理に球筋を作ろうとしても上手くいかないんですよ。

O編 そう考えると、アマチュアゴルファーは、常によそゆきのプレーをしがちだよね。それほど練習もしていないのに球を曲げて攻めようとしたり、ロブショットで寄せようとしたり、前の日にYouTubeで見た技術を試そうとしたり……。それがスコアを崩す原因になっているかもしれないね。

坂詰 まぁ、それはアマチュアならではの楽しみだからいいんじゃないでしょうか。ただ、強いプロほど、よそゆきのプレーはしない。普段から練習をしていて、試合でも使っていて、自信のある技術しか使わないってことは、知っておいてもいいかもしれませんね。

O編 逆に言えば、普段からそういう準備をしていて、試合では準備していることしかしないから強くなれるとも言えるよね。

坂詰 間違いないですね。上手くなりたいのであれば、コースで使いたい技術は、普段から練習をして、実戦で使えるように準備をしておく。そこは本当に大切だと思います。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年5月9・16日号「ひょっこり わきゅう。第15回」より

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