「二人で最終日最終組で回りたい」、「二人でプレーオフしたい」という岩井姉妹の夢が早くも実現し、前年女王の山下美夢有選手も加わりました。プレーオフの18番パー5の2打目に姉妹が手にしたのはドライバー。地面にあるボールを直接打つ”直ドラ”でグリーン近くに運んだ攻めの1打は、現地のギャラリーだけでなく、中継を通して多くの観客を沸かせる展開になりました。
強気でピンを攻める千怜のプレースタイル
アマチュア時代は堅実なプレースタイルだった妹・千怜選手はプロ入り後「それでは戦えない」と姉・明愛と同じような積極的なスタイルに進化させ、昨年の初優勝、そして2週連続優勝とブレイクしました。「NEC軽井沢72トーナメント」で初タッグを組み、初優勝をサポートした佐藤大輔プロキャディに話を聞くと「逃げたくないのでピンまでの距離だけを教えてください」と言われたといいます。
ピンを狙う攻めのマネジメントはグリーンを外すと難しいアプローチが残りますが、それを怖がっていてはバーディチャンスは遠のきます。ドライバーの飛距離も昨季の246.61ヤードから255.09ヤードに。トレーニングの効果だけでなく、思い切って振り切れるスウィングへとブラッシュアップしてきたことが飛距離にも今季の成績にも直結しています。それでは思い切りのいいドライバースウィングを見てみましょう。
左手の甲が正面から見えるストロンググリップで握り、左腕が地面と平行な位置でシャフトは90度、背中はターゲットを向いています。左手の親指方向に手首を折るコックの動作を入れていて、ヘッドの運動量を稼ぎながら手元が体から遠くに上がっています。(画像A)
手首の使い方は縦方向のコックを使うタイプですが、ストロンググリップで握っているのでフェース面は開かずにテークバックしていきます。手首を手のひら側に折る掌屈や甲側に折る背屈といったヒンジの動作は入っていません。(画像A右)
アドレスの時点で多少のコックは入っているので、ヒンジ動作だけを意識するタイプもいますし、ヒンジ動作はあまり意識せずに、縦方向のコックを意識するタイプもいます。実際にはひじから先を回転させる回内・回外という動作も入り複雑に動きます。もちろんコックもヒンジも、それぞれのメリットはありますが、どちらか一つの方向の手首の使い方を意識するほうがスウィングはシンプルに考えられます。
腰の位置、頭の位置を変えずに前傾した背骨の角度に沿って胸を右に回した深いトップから、胸を右に向けたまま切り返すのではなく、下半身のリードに上半身も少し付いて来るように切り返していきます。(画像B)
体の中心部の回転力を原動力に、腕は体の回転についてくる「でんでん太鼓」のような使い方です。フェースが開かないストロンググリップで握り、そのまま「でんでん太鼓」の中心部の回転を止めずに振り抜くようなイメージを持つことで、フェースの開閉を少なくし方向性を保ちながら体の回転力を多く使って飛ばしています。(画像C)
父・雄士さんと話した際にはかなりトレーニングで鍛えていると聞きました。ドライバーをしっかり振り切っても崩れないバランスの良さは、2日目の17番パー4で、かなりのつま先下がりからパーをセーブした、目玉になったガードバンカーからのショットでも見て取れました。
岩井姉妹の特徴は、吸収力の高さにあると思っています。二人で切磋琢磨しながらツアーで戦うために必要な心技体を高め合っています。7月の全米女子オープンにも出場することが確定している千怜選手に明愛選手も続きたいところ。まだまだ岩井ツインズ旋風は続きそうですね。