ゴルフ界の分裂を招いたLIVゴルフ問題。PGAツアーとLIVが歩み寄るのは難しいと思われていたが急転直下、合意に達した。LIVのCEOグレッグ・ノーマンさえプレスリリースが発表される直前まで知らされていなかったことにも驚く。「世界規模でゴルフというゲームを統一する画期的な合意」というがPGAツアーの選手からは不満の声が噴出している。
画像: 多くの話題を振りまいた「LIVゴルフ問題」。突然の合意に移籍した選手、移籍しなかった選手はいま何を思う?(写真/Getty Images)

多くの話題を振りまいた「LIVゴルフ問題」。突然の合意に移籍した選手、移籍しなかった選手はいま何を思う?(写真/Getty Images)

火曜の朝(現地時間6日)のプレスリリースでPGAツアーとLIVゴルフ、そしてDPワールドツアー(欧州ツアー)がゴルフ界における約2年間に渡る内戦に終止符を打ち両ツアーとLIVの商業事業および権利を統合、共同所有の新しい営利団体を設立する契約に署名したと発表した。

ノーマンが知らされていなかった一方で反LIVの急先鋒だったジェイ・モナハンPGAツアーコミッショナーは「今日は私たちが愛するこのゲームにとって歴史的な日となった」と選手たちにメモを送り会見もおこない、本人が3つの組織を統合した新団体の最高経営責任者に就任することを明らかにした。

具体的に合併に至るどんなプロセスや青写真があるかモナハン氏は明言していないが、合意によって確実になったのがPGAツアーとLIV双方が抱えている訴訟問題が終了すること。そしてPGAツアーとDPワールドツアーからメンバー資格を剥奪されたLIVゴルファーに対して今年以降メンバーシップの再申請が認められることだ。

PGAツアーのスポークスマン的な役割を担ってきたローリー・マキロイは「ツアーからLIVに移籍した選手たちはツアーに取り返しのつかない損害を与え訴訟(独占禁止法違反)を起こした。彼らの復帰を諸手を挙げて歓迎することはできない。行動には責任が伴うはず」とRBCカナディアンオープン前の記者会見で複雑な心境を語った。

タイガー・ウッズの生涯獲得賞金に匹敵する契約金でLIVに移籍しながら何もなかったように再びツアーに戻るのは納得できない。その気持ちはわかる。LIVのオファーを断ってPGAツアーに忠誠を誓った選手は何だったのか? LIV勢はもらい得? という声が上がっても不思議ではない。

合意の発表にLIV勢からは喜びの声が。例えばフィル・ミケルソンは「今日は素晴らしい日だ」とツイート。一方でPGAツアーのウェスリー・ブライアンは「裏切られた気分だ。PGAツアーに不信感が生まれた。もう誰も信じられない」と投稿している。

LIVに関してモナハン氏らはサウジアラビアの公的投資基金が関与していることを問題視。911でのテロへの関与や人権問題を隠蔽するためのスポーツウォッシングだと痛烈に批判していた。しかし結局彼らと手を組むのは「世界のゴルフ界のため」。

匿名を条件にメディアに答えたPGAツアーの選手のひとりは「サウジやLIVをこき下ろしながら、突然心変わりして彼らとビジネスを始めるなんてあり得ない。これは我々が知らされている以上の何かがあるはず」と辛辣な意見を述べている。

SNS上ではこんなツイートも。松山英樹に間違えられ「マスターズ優勝おめでとう」と人々からいわれ「ヒデキ、ありがとう!」の投稿で知られるアン・ビョンホンは今回も「LIVと契約していればヒデキはスピリットエアライン(格安航空会社)を買収することができたのに」と英樹ネタをSNSに投稿した。

今後の展開はまったく読めない。世界のゴルフを1つに、という大義名分の裏に隠された“大人たち“の真意とは? ドロドロした思惑が見え隠れすると感じるのは私だけではなさそうだ。

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