理想のトップが作れないのはなぜ?
坂詰 今回紹介するのは、90/90というテストです。これは右ひじを90度に曲げ、右上腕を体に対して90度にした(右上腕を水平にした)状態で、肩周りの可動性や柔軟性をチェックするテストですね。
O編 詳しく教えてよ。
坂詰 まず、真っすぐ立ったら、右ひじを90度に曲げ、右ひじを右肩の高さまで上げて、体の右側で右上腕を水平にします。
O編 こんな感じかな?
坂詰 いいですね。そこから右ひじの位置を動かさずに、右前腕を後ろ(背中側)に倒してみてください。
O編 ん、苦しいね。これでいい?
坂詰 あ、右ひじが後ろに動いてますね。このテストは、胸を張ったり、胸を反らせたりしちゃダメなんです。あくまで、さっきの構えから、右ひじの位置を動かさず、前腕だけを後ろに倒すんですよ。
O編 んー、そんなに倒れないけど?
坂詰 Oさんは垂直より少し後ろに倒れるくらいですね。まぁ、このテストで目に見えるほど前腕が後ろに倒れる人はそれほど多くないので、気にしなくていいですよ。
O編 これで何がわかるの?
坂詰 たとえば、トップでは右ひじを地面に(真下に)向けろ、なんて言うでしょ? でも、前腕が後ろに倒れない人はそれができないんです。
O編 あぁ、そうか。さっきのテストで前腕が後ろに倒れないってことは、前腕は前傾した体と平行になるから、右ひじは外を向くわけだね。
坂詰 そういうことです。前腕が倒れない人は、トップで右ひじが若干外を向くのは仕方がないし、もっと硬い人なら、右わきが開いたフライングエルボーになっても仕方がないんです。
ほんの少しでいいから前腕が倒れるようにしたい
O編 肩周りの可動性、柔軟性は、トップの形に影響するのか。
坂詰 あと、「トップでは、シャフトをターゲットラインと平行にしなさい」なんて言われるでしょ? でも、トップで右ひじが外を向くと、シャフトがクロス(シャフトが目標の右を指す)しやすくなっちゃうんですよ。
O編 う~ん。90/90のテストで右前腕が後ろに倒れない人は、よく言われる理想のトップみたいなものが作りにくいんだね。ってことは、トップで右ひじが外を向く(右わきが開く)人や、シャフトがクロスする人は、肩周りの柔軟性を高めて、前腕が後ろに倒れるようにする必要があるってこと?
坂詰 右ひじが地面を指して、シャフトがターゲットラインと平行になるトップに近づきたいということであれば、そういうことになります。でも、そういうトレーニングはしたくないということであれば、右ひじが外を向いて、シャフトがクロスするトップでやっていくということになるわけです。
O編 右前腕が後ろに倒れないままやっていくのもアリなの?
坂詰 アリはアリです。ただ、そこは個々のプレーヤーの考え方次第なんですが、前腕が後ろに倒れない人は、どうしてもクラブが外から下りやすいんです。
O編 スライスになりやすいってことだね。
坂詰 だから、インサイドからボールをとらえたい、ドローを打ちたいということであれば、前腕が垂直よりはほんの少しでいいから後ろに倒れるようになってほしいんですよ。
O編 それって、どうしたらいいの?
坂詰 90/90のテストの要領で、前腕を後ろに倒す動きを繰り返すんです。テストの姿勢で、右前腕を前後にブラブラと繰り返し振るような動きですね。
O編 それをやると、可動性、柔軟性は上がって、前腕が後ろに倒れやすくなるわけだね。
坂詰 ええ。さらに、前腕が後ろに倒れるようになると、バックスウィングから切り返しにかけて、右腕が外旋してねじれるようになります。すると、ダウンからフォローにかけて、腕がねじり戻るので、腕が走ってスピードも出やすくなるんです。
O編 スライスを直すためにも、スピードを出すためにも、前腕は後ろに倒れたほうがいいのか。
坂詰 ええ。これはトレーニング次第で必ず改善される部分なので、ほんの少しでいいから前腕が倒れるように、取り組んでもらえたらなぁと思います。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月20日号「ひょっこり わきゅう。第20回」より