ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、先日の全米プロで優勝し、”メジャーハンター”の強さが戻ってきたブルックス・ケプカについて語ってくれた。
画像: 「右ひざが完治してなかった頃はバックスウィングで右ひざにしっかり乗ることができなかったそう。右ひざへの恐怖感が消え、以前のスウィングに戻せたことは大きいですね」by佐藤信人(Photo/Blue Sky Photos)

「右ひざが完治してなかった頃はバックスウィングで右ひざにしっかり乗ることができなかったそう。右ひざへの恐怖感が消え、以前のスウィングに戻せたことは大きいですね」by佐藤信人(Photo/Blue Sky Photos)

今年の全米プロ、"強いケプカ"が戻ってきた!

前回は全米プロで見せたマイケル・ブロックの、ゴルフ愛に満ちたプロフェッショナリズムの話をしました。そして対照的ではありますが、今回は優勝したブルックス・ケプカのプロフェッショナリズムについて話そうと思います。

それにしても強かった。17年のエリンヒルズ、翌18年のシネコックヒルズでの29年ぶりとなった全米オープンの連覇。同年にはベルリーブで全米プロも制し、翌19年にはベスページでこちらも連覇。あの強いケプカがよみがえってきたよう。強さは特に最終日の戦い方、勝ち方にも表れていました。

最初からアグレッシブにバーディを奪い主導権を握ると、押し一辺倒ではなく引きの上手さも……。たとえば皆がドライバーを握るところをアイアンで手堅く守ったりすることで、多少の浮き沈みはありながらも逃げ切るパターン。勝負どころのパットを粘り強く入れるのも、"強いケプカ"です。

ケプカのメジャーの戦い方をひと言で表現するなら、「ダブルボギーを打たないマネジメント」。実際、この大会で一度もダボを叩いていません。また過去4度優勝したメジャーでも、18年の全米オープン、全米プロではダボを叩いていますが、いずれも初日でのこと。

今回の全米プロ、ケプカは印象に残る1打として、「いい質問だね」と答えた後、初日の11番パー3を挙げました。インから出たケプカにとっては2ホール目。ティーショットを左に引っかけ、リカバリーのアプローチもグリーンに乗らず、そこからチップインでのパーセーブでした。寄らず入らずでダボの可能性のある場面。「あれが大きかった」と振り返った言葉には、ラッキーというニュアンスだけでなく、「ダボにしなかった」という執念すら感じるのです。

大会前のインタビューで、マスターズで逆転負けを喫した日曜日の夜、一睡もできなかったことを明かしています。そして数日間、その敗因を考えた末、「生涯、絶対にあることをしないと心に決めた」と。内容は明かしませんでしたが、今回の初日の11番にヒントがある気がします。そして「マスターズの負けがなかったら今日の勝ちはなかったかもね」と、インタビューを締めくくりました。

中継を見る限り強面(こわもて)で、インタビューにも素っ気なく、メディア嫌いな印象のケプカ。しかし、松山(英樹)くんのキャディを務めた進藤大典さんのケプカ評は、「とてもいいヤツ」。統合発表前は、とかくPGAツアーとLIVゴルフの対立が注目されましたが、団体を超えてロッカールームでPGAの選手と仲がいいのが、特にケプカとD・ジョンソンだそう。強面や強気のコメントは、試合でケプカがかぶるプロの仮面かもしれません。

ネットフリックスの番組『フルスイング』でのインタビューで、LIVゴルフに移籍した際の心の内を明かしたケプカ。ケガのこと、家族のこと、将来のこと。根が心優しい男なのでしょう。あと2、3カ月で誕生予定の第一子となる男の子(「ブレイク」と名付けるそう)の話をするケプカはソフトな父親の顔。父となったケプカがどう変化するのかも楽しみですね。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月20日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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