初日から首位を譲らず完全優勝で4勝目を飾った山下美夢有
大会初日は「朝の練習場では全然ダメで、修正できずにコースに入ってしまったので不安のほうが大きかった」という言葉とは裏腹に5連続バーディを含む8バーディ1ボギーの7アンダーで終えました。しかし「ミート率が悪く、入射角もよくなくて飛距離も出ていない。左右のブレもあった」とコーチを務める父・勝臣さんにこれから電話すると話し、ラウンド後の練習へと向かいました。
ミート率とは、レーダー式の弾道計測器トラックマンではスマッシュファクターと言われる数値で、ヘッドスピードに対するボール初速の割合を示します。1.5が最高効率の数値とされ、その数値に近いとフェースの芯に当たっていることを表します。ミート率が悪いということは、インパクトで芯を外してしまっているということ。
その原因を父・勝臣さんからはダウンスウィングで「体の開きが早い」ことを指摘され修正すると、2日目も7アンダー、最終日は3アンダーにまとめトータル17アンダーで追いすがる岩井明愛・千怜を振り切り、父の日Vを決め4勝目を飾りました。
ピンポイントでバーディエリアを狙うアイアンショット
フェアウェイをキープし、安定感のあるドライバーショットは山下選手の武器でもありますが、ここでは距離と方向性を打ち分けるキレキレのアイアンショットを取り上げます。
アドレスでグリップエンドを見ると少し短く握っています。飛距離を少し抑えながら、方向性も確保する、ピンポイントでバーディエリアを狙うときの構えです。クラブを短く握りますが、足の裏をしっかりと地面につけ、背中をターゲットに向けバックスウィングしていきます。
左右の重心移動によって切り返すと、左足はボール方向、右足を後ろへ引くような"前後に動かす"動きを地面に与えることで、反力を得て骨盤を回転させます。その後、左足を伸ばすような縦の力を使って回転力を加速させ、体幹、腕、クラブへとエネルギーが伝達され、クラブヘッドが効率良く加速していきます。
この体を使う順番が狂わないことが、山下選手の安定したショットの源になっています。もちろんタイミングがずれることもありますが、そのタイミングを修正する術を勝臣さんは持っているのです。「小さい頃から見ているから、どこがズレているかわかる」と勝臣さんは言いますが、指摘する的確なポイントと修正する山下選手のセンスがマッチしているからこその賜物です。修正力が高いことは、年間を通して上位で戦うための必須条件と言えるでしょう。
画像Cではフィニッシュを低く抑えていますが、フォローで左へ低く振り抜くことでフェースの開閉を少なくし、弾道の高さをコントロールしています。ヘッドだけが走って飛び過ぎないように、右肩がターゲットを指すくらい、しっかりと体をターンさせていることもポイントです。
前半戦は、山下選手と岩井姉妹の戦いが続きましたが、新しいドライバーを手にした吉田優利、初優勝を目指す佐久間朱莉、小祝さくら、鈴木愛、そして稲見萌寧選手らも調子を上げて来ています。目が離せない展開が中盤も続きそうです。