松山英樹のコーチ・目澤秀憲に、レッスン技術に造詣が深いライターDが、最新スウィング理論について話を聞いていく連載「みんなのスウィング3.0」。今回のテーマは「最新スウィングはいつもタイガーとともにある」だ。
画像: 「タイガースラム」を達成した2000~2001年は、間違いなくタイガーの全盛期。当時は、現在よりも左のつま先が閉じていて、左足で蹴った力が斜め上方向に跳ね返り、左腰の鋭い切れ上がりにつながっていた

「タイガースラム」を達成した2000~2001年は、間違いなくタイガーの全盛期。当時は、現在よりも左のつま先が閉じていて、左足で蹴った力が斜め上方向に跳ね返り、左腰の鋭い切れ上がりにつながっていた

タイガーは「ゴルフアスリート」の概念を根付かせた

D  この連載のテーマは、「普通のアマチュアにもできる最新スウィング」ということで、それを「スウィング3.0」と名付けたわけですけど……。

目澤 とくにここ10年くらいで、スウィングの科学的分析が進んで、トッププロがなぜあんなにすごい球を打てるのかということが、ちゃんと具体的にわかるようになってきましたからね。アマチュアに対するレッスンというのも、それまではプロの感覚だったり、「多分こうだろう」という"仮説"に基づいたものだったのが、今は科学的な裏付けのあるティーチングが確立されつつあります。

D  プロだって、同じスウィングをしている人は誰ひとりいなくて、それなのになぜみんながうまくいくのか、それが徐々にわかってきたわけですけど、そうなって改めて思うのが、タイガー・ウッズってずっと時代の最先端スウィングを体現していたんだなってことですね。

目澤 そうなんですよ。タイガーって、デビューしたときからずっとすごかったんですけど、当時の映像とかを改めて科学的に検証してみると、それまでのプロとはまったくレベルが違うことをやっているのがよくわかるんです。

D  そもそも、プロゴルフの世界に「アスリート」の概念を定着させたのは、タイガーですよね。それまでも、グレッグ・ノーマンとか、アスリート的なアプローチでゴルフに取り組んでいた人はいましたが、完全に少数派でした。

目澤 タイガーがプロデビューした1996年当時、キャリーで300ヤード打てるのは、タイガーぐらいでした。今と違って、ドライバーのヘッドも小さいし、シャフトはスチールで重かったのに、それであの飛距離が出せたというのは、単に「体を鍛えていたから」では説明ができないんです。今でいう「地面反力」といった力学的な効率性というのをちゃんと理解してスウィングに取り入れているところがすごい。それが一番表れているのが、インパクトで左足を伸ばして、ギュンとジャンプするような動作ですね。

若い頃のタイガーは、少し足首に硬さがあるんですけど、それでもそれを補うくらい股関節は柔軟で、足首・ひざ・股関節の「可動」と「安定」のバランスを保ちつつ、誰よりも強い力で左足を蹴ることができています。

D だからこそ、あの飛距離が出せた。

目澤 それに、タイガーって球を曲げたり、球の高さをコントロールするのが抜群に上手いじゃないですか。しかも、それをものすごくシンプルなやり方でやっているんです。球の高さなんて、子どものころからフィニッシュの位置だけで変えている(低く抑えるほど弾道が低くなる)って、本人は言っていましたから。でも、そこにはアタックアングル(入射角)と、ローポイント(スウィングの最下点)といった物理に対する深い理解があって、それをちゃんと自分の感覚に落とし込んでいるってことなんですよ。物理法則の理解+感性ですよね。じゃないと「スティンガー」みたいな球をさらっと打てませんから。

D そのあたりについては、次回からさらに詳しく伺っていこうと思います

※週刊ゴルフダイジェスト2023年9月5日号「みんなのスウィング3.0 Vol.1」より

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