昨年優勝のコブラの勢いが今年も止まらない!
出場するドライバーのレギュレーションは2022年7月発売以降のモデルでロフトは10度台、純正シャフトのフレックスS。まずは予選で42モデルから決勝トーナメントに進出する16モデルまで絞り込む。鈴木悠介、吉野茜の男女プロが800発以上のボールを打ち、1位から16位までのモデルが決定。ベスト16から先は、横田英治プロ、勝又優美プロ、トップアマの宝地戸展幸さんの試打による、勝ち抜きトーナメント方式の“ドライバーバトル”だ。
では、決勝トーナメント2回戦の4試合(ベスト8)の模様から見ていこう。
ベスト8は第1試合から火花を散らすバトル。予選トップのスリクソン(ZX7 MkⅡ)と、ディフェンディングチャンプのコブラ(エアロジェットLS)によるプライドのぶつかり合い。ヘッドを操作しやすくてスクエアに当たる「ZX7」は、3人がキモチ良く打って飛距離を伸ばす。対して、低スピンが強みの「LS」は、振れば振るほど打球が前へ突き進んだ。結果としてコブラが勝ったが、宝地戸さんは「『ZX7』が負けたのはもったいない!」と惜しんだ。
●第1試合 コブラ エアロジェットLS VS スリクソン ZX7MkⅡ
トップバッターの勝又プロは『ZX7MkⅡ』で、やや上りのフィールドながらランを出す。しかし、男子2人が『LS』を打つと、レーザービームのような棒球に。「ヘッドが走るし、インパクトで力が漏れなくボールに伝わってる手応えです」と横田プロが言う『LS』が、ベスト4へ一番乗り。
(結果)
エアロジェットLS 204.3Y(勝又)257.3Y(宝地戸)300.7Y(横田) 254.1Y(平均)→WIN
ZX7MkⅡ 205.3Y(勝又)257.2Y(宝地戸)299.1Y(横田) 253.9Y(平均)
●第2試合 スリクソン ZX5 MkⅡLS VS プロギア RS F
勝又プロは『ZX5 MkⅡ LS』について「好みの逃げ顔で、強振しても球が左に行きません」と話し、3人とも中弾道でランが多めに。同じように、球がつかまり過ぎない『RS F』も善戦するが、一歩及ばず。
(結果)
ZX5MkⅡLS 212.3Y(勝又)249.9Y(宝地戸)299.9Y(横田) 254.0Y(平均)→WIN
RS F 214.3Y(勝又)245.8Y(宝地戸)292.6Y(横田) 250.9Y(平均)
●第3試合 テーラーメイド ステルス2プラス VS コブラ エアロジェット
『ステルス2プラス』で豪打を連発する横田プロ。その快進撃にストップをかけたのが『エアロジェット』。勝又プロと宝地戸さんが、高さを抑えたライナードローで記録を伸ばし、セミファイナルへ。
(結果)
ステルス2プラス 213.4Y(勝又)253.1Y(宝地戸)295.3Y(横田) 253.9Y(平均)
エアロジェット 216.3Y(勝又)259.5Y(宝地戸)288.5Y(横田) 254.8Y(平均)→WIN
●第4試合 プロギアLSプロト♣ VS キャロウェイ パラダイム◆◆◆
♣vs◆のトランプ対決。「♣はHS40m/sくらいの人が、つかまえて低スピンで飛ばせます」と横田プロが言う。そこに立ちはだかったのが、多くのプロが使う『◆◆◆』。横田プロが300㍎近くをぶっ飛ばして勝負あり。
(結果)
LSプロト♣ 208.9Y(勝又)251.3Y(宝地戸)289.3Y(横田) 249.8Y(平均)
パラダイム◆◆◆ 215.4Y(勝又)252.9Y(宝地戸)289.3Y(横田) 255.9Y(平均)→WIN
ベスト4には、『エアロジェットLS』『ZX5MkⅡ LS 』『エアロジェット』『パラダイム◆◆◆』の4モデルが進出した。
ベスト4モデルのうち3モデルは浅重心だった
今年のベスト4は重心が浅めのモデルが躍進。各モデルの重心深度を見ていくと『エアロジェット』は41.0ミリと標準的だが『ZX5 MkⅡ LS』は浅い36.4ミリ、『エアロジェットLS』は非常に浅い33.2ミリ、そして『パラダイム◆◆◆』はやや浅めの39.0ミリ。ヘッドスピードの速い横田プロが飛ぶのは想像できるが、ヘッドスピード39m/sの勝又プロもしっかり飛んだ。やはり飛ばしに有利なのだろうか?
「深重心はミスヒットに強くて高弾道、浅重心はスイートエリアが狭くて中弾道という印象を持っている人が多いと思いますが、パラダイムもコブラもZX5も昔ほどシビアな仕様になっていません。よっぽど大きな打点ミスをしない限り初速が落ちず飛んでくれるんです。それでいて、ロフトが立って当たるので、さらに初速が高まる。キャリー勝負ならわかりませんが、D-1はトータル飛距離での勝負ですからヘッド速度40m/s以下でもランで稼いで、飛ばせたのだと思います」とクラブ設計家の松尾好員氏は語る。
また興味深いのは『ZX5 MkⅡLS』も『パラダイム◆◆◆』も低重心ではないということだ。松尾氏いわく「重心が高いことによってロフトが立ち、初速が出たのだと思います。勝又プロの場合は適度にスピンが入ってキャリーを稼いだのでしょう」
では、その4モデルの対決を見ていこう。準決勝の舞台は東名CC桃園C9番。グリーン奥の斜面にある特設ティーからFWへ“逆打ち”をする。約20㍎を打ち下ろすロケーションが、飛距離にどう影響するか?
●第1試合 コブラ エアロジェットLS VS スリクソン ZX5MkⅡ LS
同じ浅重心ヘッドの『LS』同士がしのぎを削った第1試合。スリクソンは安定したキャリー、コブラはライナー系と飛びざまに違いがあった。その結果、3人がコンスタントに飛ばしたスリクソンが決勝へ進出した!
(結果)
エアロジェットLS 241.9Y(勝又)294.5Y(宝地戸)312.3Y(横田) 282.9Y(平均)
ZX5MkⅡLS 247.5Y(勝又)294.3Y(宝地戸)312.8Y(横田) 284.9Y(平均)→WIN
●第2試合 コブラ エアロジェット VS キャロウェイ パラダイム◆◆◆
下馬評が高く本命視されていた外ブラ同士が真っ向勝負だ。連覇を狙うコブラが球威のあるボールを連発するが、連覇の経験があるキャロウェイの『◆◆◆』がブレない重い球でオーバードライブ。コレは強いぞ!
(結果)
エアロジェット 245.9Y(勝又)288.9Y(宝地戸)312.5Y(横田) 282.4Y(平均)
パラダイム◆◆◆ 243.4Y(勝又)290.9Y(宝地戸)317.5Y(横田) 283.9Y(平均)→WIN
決勝戦に抜き出したのは『ZX5』と『◆◆◆』だ
●決勝 スリクソンZX5MkⅡLS VS キャロウェイ パラダイム◆◆◆
(結果)
ZX5MkⅡLS 247.9Y(勝又)283.9Y(宝地戸)310.4Y(横田) 280.7Y(平均)
パラダイム◆◆◆ 248.4Y(勝又)289.4Y(宝地戸)311.1Y(横田) 283.0Y(平均)→WIN
結果を見てわかるように『パラダイム◆◆◆』の完全優勝と言える。実力者がぶつかり合うファイナルは毎年、3人それぞれに飛ぶモデルが分かれて、シーソーゲームの末にチャンピオンが決まった。
でも今年は、3人とも『◆◆◆』の飛距離が上回り、中でも横田プロは310㍎超えのエグい飛びを2発かました。その『パラダイム◆◆◆』について横田プロはこう話す。
「スピン量が2400(回転)台と、ボクにとって理想的ですね。それでも、過去の『◆◆◆』はハードヒッター向けでしたが『パラダイム』の『◆◆◆』はつかまりやすくなったし、ほどほどのヘッドスピードの人も打てるようになっています」
さらに「パラダイム◆◆◆」の強さの秘密を横田プロはこう語る。
「小ぶりで重心が前寄りだから、自分でつかまえにいって初速が出せる。でも、小ぶりなわりにスピンが程よく入り、ヘッドスピードが速くない人も球を上げられる。◆◆◆は重心が浅めなのに、ミスヒットをカバーしてくれる点も◎。打点が少しズレても初速が落ちにくくて、結果として平均飛距離が伸びました。またD-1のレギュレーションとして、ロフトを10度台に統一したことも大きいですね。HS39m/sの勝又プロも球をしっかり上げてキャリーが出ましたから」
ヘッドを操作しやすいということは、意図的にターンできて球をつかまえられるし、スクエアインパクトしやすいため効率的に飛ばせると松尾氏も語る。
「スクエアにインパクトしやすい。結果、それがもっとも飛ぶんです」(横田)
キャロウェイが2年ぶりのD-1チャンプに返り咲いて、今年の大会は幕を閉じた。
取材・文/新井田聡 写真/有原裕晶、野村知也 協力/東名CC、GC成田ハイツリー、フライトスコープジャパン
※月刊ゴルフダイジェスト2023年10月号「ぶっ飛びドライバー決定! 2023D-1グランプリ」より一部抜粋