「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はプロたちが”古め”のFWやUTを好んで使う理由について教えてもらった。
画像: 「プロの場合、5W以下は止めるクラブと捉えているのでフェース自体が厚くて食いつき感のあるクラブが好まれます」と宮城氏は語る

「プロの場合、5W以下は止めるクラブと捉えているのでフェース自体が厚くて食いつき感のあるクラブが好まれます」と宮城氏は語る

プロはグリーンに乗せられるクラブでないと勝負にならない

みんゴル取材班(以下、み):女子プロの堀琴音選手がX(旧ツイッター)に「XドライブGR」2012年モデルの4U、5Uを探していると書き込んで話題になりました。

10年以上前のモデルを必要としている理由は、最近の弾いて飛びすぎるUTに対し、「XドライブGR」の喰いつく感じがいいからだそうです。ちなみに男子の今平周吾選手もフェースに喰いつく感じがほしいという理由から2011年モデルの「タイトリスト910H」を入れています。

シニアの井戸木鴻樹選手も、いまどきのFWは飛びすぎるからロイヤルコレクションの「スーパーCV BBD」を手放せないと以前言っていました。前置きが長くなりましたが、プロがFWやUTに喰いつき感を求めるのはなぜでしょうか。

宮城:「タイトリスト910H」はめちゃくちゃスピンが入るクラブです。まったく飛ばないというと語弊がありますがロフト通りにしか飛ばないし、フェードを打っても球がめくれてグリーンで止まります。

「スーパーCV BBD」もメーカーは低重心とうたっていますがキャビティソールは重心が高くなりやすい構造なので、フェースの下面に当てればめくれる球が打てるし、上面に当てれば飛距離を出せます。シニアのテクニシャンにはうってつけのクラブです。「XドライブGR」も特別なことをしないで作られているので、いまのクラブと比べたら飛ばないのは当然です。

み:アマチュアはFWもUTも、へたするとアイアンだって飛んだほうが嬉しいけれど、プロにとって弾いて飛んでしまうクラブは使いづらいということですね。

宮城:FWやUTをアイアンからの流れで考えているのか、それともウッドだから飛べばいいと考えているかの違いです。プロの試合では5Wから下の番手でグリーンに乗せないと勝負になりません。1Wと3Wは飛ばすクラブだけど、5W以下は止めるクラブと捉えているのでフェース自体が厚くて食いつき感のあるクラブが好まれます。

み:最近はFWもUTも飛びを売りにしたモデルがほとんどですが止まりやすいクラブはありますか。

宮城:手前味噌ですが、ぼくがFWやUTを設計するときも、飛距離を出したい3Wだけはフェースを薄くして弾きをよくし、形状をシャローにして重心を低くしてスピンを減らしています。でも、5Wから下はフェースを厚くして喰いつきをよくし、ディープ形状で重心を高くしてスピンが入るようにしています。

10年くらい前にさかのぼればそういうクラブはたくさんあると思います。そこまで古くないモデルでいえばピンのG425やG410。契約フリーのプロに人気があるのは、よけいなことをしないで高重心で普通に作られているからだと思います。

画像: 堀琴音は約10年前の「X-DRIVE GR」のUTを使い続け、まだストックを探しているという(月刊ゴルフダイジェスト23年10月号より)

堀琴音は約10年前の「X-DRIVE GR」のUTを使い続け、まだストックを探しているという(月刊ゴルフダイジェスト23年10月号より)

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