ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、シーズン序盤にケガで出遅れた松山英樹の今季を振り返ってくれた。
画像: 全英オープンでの難しいライからでも、絶妙なアプローチを見せてくれた松山英樹(Photo/Blue Sky Photos)

全英オープンでの難しいライからでも、絶妙なアプローチを見せてくれた松山英樹(Photo/Blue Sky Photos)

松山英樹のスタッツは、トップ30の選手とほとんど遜色ない

ビクトル・ホブランの年間王者で幕を閉じたPGAツアーの22-23シーズン。今回は松山(英樹)くんの1年を振り返りたいと思います。

今季は優勝できず、ツアー選手権への連続出場も9年で途絶えました。もちろん残念なことではありますけれど、松山くんのすごみを、別の視点から感じた1年でもありました。

実はフェデックスランキングはあえて無視して彼のスタッツを眺めると、すべてにおいてほとんどトップ30の選手と遜色がありません。プレーオフシリーズ進出が昨シーズンのランク125位から70 位に変わり、71位で進出を逃したジャスティン・トーマスは、「そんなに悪いゴルフをしているわけではない。ちょっと歯車が噛み合わなかっただけ」と語っていますが、松山くんについても同じでしょう。

トップ30の選手との差はわずかであり、どこかで1打2打よければトップ30入りできたかもしれないくらいの厳しいPGAの選手層の厚さだと思います。

そうしたなかで10年連続、PGAのトップ選手であり続けている。まして今季は10年目にして初めて、ケガにより序盤に出遅れたシーズンでした。プレーオフシリーズ第2戦のBMW選手権も腰痛による棄権で、最終戦への進出はなりませんでしたが、やはりその偉業は称賛すべきものでしょう。

松山くんのすごみを語るのに、今季見せてくれた2つのアプローチショットを挙げたいと思います。

ひとつ目は全英オープン、3日目の16番3打目。ボクはラウンドレポーターをしていたのですが、松山くんが到達するより前に急行してライを確かめました。ボールはポットバンカーに入らないギリギリの縁に。満足にスタンスも取れないことからボギーやむなし。レポートでもそう伝えました。

ところがバンカーに足を入れると、ひざの高さのボールをワンクッションさせてピン横に。OKパーで切り抜けます。実はこの全英でほぼ初めて、松山くんの練習ラウンドに付いたのですが、あえてミスショットを想定した場所から盛んに練習していました。あの絶妙なアプローチも、年々増える技術はもちろん、きめ細やかな準備から生まれたスーパーショットでした。

もうひとつがプレーオフ初戦のセントジュード選手権の最終日最終ホール。ティーショットを右ラフに打ち込み、セカンドは右奥へ。13番から5アンダーで順位を上げ、このホールをパーで切り抜ければ50位以内に入り、第2戦のBMW選手権に進出できるという場面です。それをロブショットでピンそばに寄せ「お先に」と難なくパー。追い込まれれば追い込まれるほど、すごみを見せる彼のゴルフの真骨頂でした。

実はこの1打で50位以内に入ったことが、来季に向けて大きかった。シグネチャイベント(昇格試合)の8試合すべてに出られる権利を得ました。これはスケジューリングのうえでも、2年ぶりの優勝、最終戦のツアー選手権進出のためにも大きなショットでした。

現地に行った全英オープンでの心残りはドライビングレンジでの練習を見学できなかったこと。ケガの心配がなくなり、本気の練習量に戻った松山くんのストイックな練習をいつか見学してみたいものです。とにかく今はまず、ケガの完治を再優先してほしいですね。

※週刊ゴルフダイジェスト2023年9月26日号「うの目 たかの目 さとうの目」より

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