「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。前回の軟鉄編に続き、今回はそれ以外のアイアンの素材について教えてもらった。
画像: ピンi230のヘッド素材はステンレス。さまざまの素材はそれぞれどんな長所短所がある?

ピンi230のヘッド素材はステンレス。さまざまの素材はそれぞれどんな長所短所がある?

アイアンのヘッド素材は多種多様

みんゴル取材班(以下、み):前回は軟鉄アイアンについてマニアックな情報を教えていただきました。今回はアイアンに使われている鉄以外の金属素材について、長所短所など教えてください。ゼクシオは昔からずっとチタンフェースですが、ゼクシオエックスのフェースは工業製品の金型に使われる特殊鋼で作られているそうです。ほかにもマレージング鋼やクロムモリブデン鋼、最近ではバネ鋼も流行っていてアイアンのヘッド素材は多種多様です。

宮城:チタン以外は鉄に別の金属を混ぜて強度を上げた合金です。ここでいう強度とは靱性、つまり粘り強さのことで割れにくいのでフェースを薄く作れることが最大のメリットです。

み:つまりフェースがたわみやすくて、ボールの弾きがよくなるわけですね。

宮城:それ以外にフェースの重量を削ることができるので、余剰重量を使って重心を低くしたり深くしたり、また、慣性モーメントを大きくしたりもできます。ただ、ほとんどのアイアンは弾きをよくして飛ばすことが最大の目的になっています。ただ、最近のアイアンはロフトも立っているのでフェースの弾きが強すぎると、球がめくれないし止まりません。そのためプロでもロングアイアンが使えない現象が起きています。

み:打感はやっぱり硬いですか? この前フィッティングを受けたときにすすめられたアイアンのヘッドはSUP10というバネ鋼らしいです。

宮城:一概にはいえませんがSUP10の打感はバネ鋼の割にはやわらかいですよ。他の合金よりも音が低いのでそう感じます。ぼくが設計したアイアンもバネ鋼を使いましたが、フェースをわざと厚めにして打感をよくしています。

み:ボディにSUP10とか強度の高い合金を使うのはどうでしょう。

宮城:素材自体が高価なので通常はフェースだけに使います。それにボディに使うとネックを曲げられないし、頑張って曲げても元に戻ってしまいます。

み:やっぱりバネなんですね。昔からあるステンレスはどうでしょう。ピンの「i230」なんかはステンレスヘッドです。

宮城:ステンレスが硬いというわけではありません。以前、軟鉄とステンレスのヘッドを作って比較したとき、3割強のゴルファーはステンレスのほうがやわらかいと評価しました。ステンレスは鉄よりもカチッとした高い音が出るので、それをやわらかいと感じる人もいます。ソフトステンレスのボディならライ角やロフトの調整も可能です。

み:そういえば、大昔の話ですが谷口徹プロがキャロウェイと契約してX-12アイアンを使っていたときにステンレスのほうが軟鉄よりもやわらかいといっていました。

宮城:軟鉄アイアンの話のときにもいいましたが、打感は打点部分の肉厚でも変わるし、フェースミーリングでも変わります。感覚も人それぞれなので、アイアンを選ぶときは何ヤード飛びました、ではなく、フィーリングや飛び方を確かめるべきです。

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