多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏は「クラブ選びは重心選び」と表現する。最新のギアを計測・分析するなかで、注目データをピックアップし、読み解く。今回はヤマハの「RMX/VD R」アイアン。クラブ選びの参考にどうぞ!
画像: 【試打クラブスペック(7I)】●ロフト角/33度 ●ライ角/61度 ●価格(税込)/15万8400円(#5~PW・6本セット) ※すべてメーカー公表値

【試打クラブスペック(7I)】●ロフト角/33度 ●ライ角/61度 ●価格(税込)/15万8400円(#5~PW・6本セット) ※すべてメーカー公表値

ヤマハ契約プロ使用の上級者モデル

今平周吾や神谷そらが使用するヤマハ『RMX VD/R アイアン』を紹介する。アイアンは7番のヘッドとクラブ(シャフトは『ダイナミックゴールド EX ツアーイシュー・S200』仕様)を計測し、数値はすべて実測値になる。

クラブ長さが36.75インチとやや短いが、クラブ重量は441.8gと非常に重いので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが274万g・㎠と大きくなっている。この数値であれば、本来はドライバーのヘッドスピードが48m/sくらいのゴルファーにとって、タイミング良く振れる設計だろう。

ツアーモデルらしくオーソドックスなヘッド形状で、かつ小ぶり。FP値(フェースプログレッション)は4.6ミリとストレートネックで、ターゲットラインに対してスクエアに構えやすくなっている。

実際に試打したところ、アドレスでは他モデルに比べてフェースのヒール側の高さがトウ側に比べて高いので、フェース全体に四角いスクエア感が出ている。同時に61.0度という標準的なライ角がフラットに感じるデザインだ。ストレートなリーディングエッジと丸いトップラインで、つかまり感のある“日本モデルのアイアン”だ。試打クラブのシャフトは重めで硬く、しっかり感があって、ヘッドスピードが速い、強いスウィングに耐えてくれる。

心地よい打感が持ち味のひとつ

軟鉄鍛造でフェース面の肉厚は厚く、インパクト音は低い。打感が良く、このアイアンならボールの品種の違いも感じられるほど、繊細なフィーリングも出ている。小ぶりなヘッドは夏のラフからの抜けも良く、また、重心距離が34.0ミリと非常に短く、結果、ネック軸回りの慣性モーメントも4575g・㎠ と小さいのでダウンスウィングでのヘッドの操作性が良く、インテンショナルにドローやフェードと打ち分けられる。

画像: バウンス角は0.9度と小さく、スイープにスウィングするゴルファーに向いている。またSS位置はフェース中央よりもヒール寄り。フェード系プレーヤーに合う

バウンス角は0.9度と小さく、スイープにスウィングするゴルファーに向いている。またSS位置はフェース中央よりもヒール寄り。フェード系プレーヤーに合う

アベレージゴルファー向けモデルのようなストロングロフト設計ではないので、球は上がりやすく、かつバックスピン量も多いので弾道と飛距離が安定する。ストロングロフトアイアンと違って飛び過ぎがなく、ヘッドスピードの速いゴルファーにとってはむしろスコアメイクに役立ちそうだ。

契約プロの要求なのか、ソール面のバウンス角は0.9度と小さく、強いダウンブローでターフを取るスウィングよりも、インパクトゾーンをスイープにスウィングするゴルファーに合いそうだ。

前モデルからは改善されたとはいえ、依然としてフェース面のスイートスポット(SS)位置はフェース中央よりもヒール寄り。ダウンスウィングで球をヒール側に引き付けて打てるフェード系プレーヤーに向いているだろう。

これが「RMX VD/R」アイアンの計測データだ

FP値が4.6ミリのストレートネック。ヒール側のフェースが高いので、フェース面が四角く見えることもあり、ターゲットラインに対してスクエアに構えやすい。また、ライ角がフラットに見えるので、つかまり過ぎないイメージもある。

また上級者モデルの仕様だが、契約プロの要望からか、バウンス角が0.9度と小さく、ダウンブローで打つよりも払い打ちのほうが向いている。

重心距離は34.0ミリと非常に短い。ヒール寄り重心で球を引き付けて打てるフェード系プレーヤーに合う。ネック軸回り慣性モーメントは4575 g・㎠と小さく、インテンショナルな球を打ちやすい。

画像: ネック軸回り慣性モーメントが小さいので、ヘッドの操作性が良く、球筋をコントロールしやすい

ネック軸回り慣性モーメントが小さいので、ヘッドの操作性が良く、球筋をコントロールしやすい

※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月17日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より

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