ロブソン氏は、1975年にカーヌスティが舞台の全英オープンで公式スターターになり、2015年のセントアンドリュース開催までの40年間、1番ティーに立ち続けた。
全英オープンは出場選手が多い。例えば、早朝6時40分から夕方の4時20分まで、1人で休憩も取らずにスターターの仕事をこなした。ランチも水も控え、トイレタイムも必要最小限しか取らなかった。
ロブソンを称えて、R&AのCEO マーティン・スランバート氏は次のように語った。「40年以上にわたりジ・オープンの公式スターターとして、彼の声は世界中のプレーヤーや何百万人のファンにとって、チャンピオンシップの代名詞となりました。彼は選手、ファン、ギャラリーに人気があり、尊敬されていたので、彼らもこの訃報を聞いて私たちと悲しみを共有してくれると思います。R&A全員を代表して、心からお悔み申し上げます」と最大の賛辞を送った。
ロブソンの声は、ボーイソプラノのように高く、ただひと言「オン・ザ・ティー」と告げた後に選手の名前を呼ぶだけ。余計なことは一切喋らなかった。
R&Aで19年間、レフェリーを務めた川田太三氏は、「欧米では選手と顔見知りというだけで私語を交わすスターターが多いが、試合に集中したい選手にとっては迷惑に感じることもあるはず。ロブソンはこれをおもんばかっていたのでしょう。パーマー、ニクラス、タイガーなど、それが気に入っていたと私には見えました」
「レフェリーもスターターの仕事も、5、6年で終えるのが普通です。それが2人とも長く続いたで、いつしか顔見知りになりました。ある時、私が選手に付いて最終日の1番ティーを去るとき、メリークリスマス! と言うと、彼も『メリークリスマス!』。もう、今年は会えないからというジョークで別れていました」。自分の仕事に誇りを持った男の永遠の退場となった。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年11月7日号より(PHOTO/Getty Images)