上から球をつぶすあの感覚がミスを呼ぶ
GD 50歳を過ぎてから、ドライバーの飛距離は変わらないのに、アイアンが下手になったという話をよく聞きます。
芹澤 シニアゴルファーのアイアン精度が落ちるのは、体の柔軟性が失われてきたことと関係しています。関節の可動域、とくに胸椎と肩甲骨の可動域が小さくなって、手打ち気味になっているからなんです。
GD 手打ちになると、なぜ当たらなくなるんでしょうか?
芹澤 手だけでテークバックすると、トップが浅くなって、上からヘッドをぶつけるようなスウィングになってしまうんです。
GD アイアンが得意なゴルファーは、よく上から球をつぶしていくと言いますが、その感覚が過剰になっている?
芹澤 そうかもしれません。でも、"上から軌道"が過剰になると、インパクトが点になって、ダフリもトップも出るし、方向性も悪くなります。
GD 以前のナイスショットの感覚がミスを誘発するんですね。
右のふところができればヘッド軌道は変わる
GD アイアンが当たらなくなったのは、体の柔軟性が落ちて手打ちになって、ヘッド軌道が上から鋭角的になり過ぎていたからだったんですね。
芹澤 手上げになると、肩と両腕でできる胸の前の三角形が崩れてしまいますよね。
GD そうですね。
芹澤 僕はふところがつぶれる、と表現しているんですが、あの三角形のスペースは、鋭角的になり過ぎたヘッド軌道をゆるやかな軌道に戻すために必要な右のふところなんですよ。
GD どうすれば、ふところをつぶさずにスウィングできるんでしょうか?
芹澤 バックスウィングで、胸の前の三角形を崩さないように、胸を回していくことが重要です。たとえば、紙風船を両腕の間に挟んだとしたら、その紙風船をつぶさないように上げていくような感覚ですね。
右腰を45度切り上げれば胸は90度右を向く
GD 胸を右に向けることはわかりましたが、硬くなった体で、ねじり上げるようなバックスウィングはとても無理ですよね。
芹澤 もちろんです。体が硬いシニアゴルファーは、右腰を切り上げながらテークバックすればいいんですよ。
GD 右腰を切り上げる?
芹澤 そうです。体がねん転しにくいんですから、右腰を45度切り上げるように回すんです。これで肩は90度回せますよ。
GD それならできそう。
芹澤 右腰を切り上げると、ゴルフをある程度やってきたゴルファーなら、胸も肩も腕も自然と連動して動きます。
胸が回るとスウィングがどう変わる?
◆チェンジ①トップの間が取れる
右腰を切り上げて、トップで胸が右を向くと、切り返しから左腰を切っていけるため、トップから切り返しにかけて間が取れる。
◆チェンジ②インサイドから打てる
トップで胸を右に向けると、手が右耳より後ろにあるため、体をねじり戻すだけで、クラブがインから下ろしやすくなる。
◆チェンジ③軌道がシャローになる
ヘッドがインから下りてくると、自然にシャローな軌道になる。インパクトが点からゾーンに変わり、ミスショットしにくくなる。
アイアン再生のカギはインサイドヒット!
GD シニアゴルファーがアイアンの精度を取り戻すには、どんな練習が効果的ですか?
芹澤 上から球をつぶすスウィングが過剰になったゴルファーは、クラブが上から、外から下りてきているわけです。そのため、上からの軌道を横からに変えようとするよりも、インサイドからボールをとらえる感覚をマスターするのがいいでしょうね。
GD インサイドからヒットすると、ヘッド軌道も自然にゆるやかになるんですね。
芹澤 そうです。マットの上にロープを置いて、そのロープに沿ってイン・トゥ・インに振るスウィングを覚えてください。
肩や胸の柔軟性がアップするラウンド中のストレッチ
「シニアになると、胸椎と肩甲骨の柔軟性が落ちてきます。すると、上体のうねりが小さくなって、ダウンスウィングの右のふところがなくなるため、上から軌道になってしまうんです。
カートの取っ手などを使って、無理のない範囲で体側を伸ばします。メジャーリーグの前田健太投手のように肩を回すストレッチもおすすめです」(芹澤)
PHOTO/Yasuo Masuda
THANKS/成田ヒルズCC
※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月31日号「シニアアイアンマン再生計画」より