多くのゴルファーに愛され、ゴルフの楽しみを提供した話題のクラブに贈られる「ゴルフダイジェストアワード」の「クラブ・オブ・ザ・イヤー」。ドライバー部門、アイアン部門、特別賞の3部門に分かれているが、今回は部門のアイアン大賞受賞クラブが生まれた背景に迫る!

大賞はダンロップ「スリクソン ZX5 MkⅡ」

国内男女ツアーで今季14勝と圧倒的な強さを見せたダンロップ「スリクソン ZX5 Mk Ⅱ」。大手量販店の売り上げトッ プ10を“やさしい”アイアンがほぼ占めるなか、アスリートモデルとしては異例のランクイン。男女ともにプロからの支持を得ている。

クラブ・オブ・ザ・イヤー アイアン部門大賞はダンロップ「スリクソン ZX5 MkⅡ」。

プロモデルの系譜を受け継ぐ「スリクソン」

ダンロップのアイアンといえば、名器と呼ばれた1988年発売のダンロップ「DP-201」を皮切りに、「マックスフライ」、「ニューブリード」とツアーで実際にプロが使って活躍したプロモデルの人気が高かった。そこに2002年、登場したのが「スリクソン」ブランドのクラブ。ブランド名の由来は「SRI」が住友ゴム工業(Sumitomo Rubber Industries)の英字の頭文字。そこに「限りない」「将来への夢」をイメージさせる「X」と、「前進(going onwards)」を表す「ON」を組み合わせたものである。そしてスリクソン最初のアイアンは「I-201」。「2」は2002年を表し、「01」は開発番号といわれているが、くしくも名器「DP-201」と同じ。発売に先駆け、前年にはローラ・デービース、トーマス・ビヨーンと契約し、海外でプロが10勝。満を持しての日本デビューだった。

2012年に初代「Z」シリーズが誕生したときはポケットキャビティの「Z525」、ハーフキャビティの「Z725」そしてフラットバックの「Z925」の3モデルを展開。プロや上級者がアイアンに求める形状や弾道、フィーリングを細部まで開発にフィードバックした結果だった。以来、2年に1度のフルモデルチェンジを行い、2018年の4代目では「Z585」と「Z785」の2モデルに。フラットバックの「9」シリーズは、翌年「Zフォージド」として切り離され、松山英樹が使用して2021年のマスターズを制すことになる。

画像: 松山英樹は「Zフォージド」を使用して2021年のマスターズを制した。

松山英樹は「Zフォージド」を使用して2021年のマスターズを制した。

飛距離が+5ヤード 左右のブレも軽減

そして2020年、「Z」シリーズは「ZX」シリーズへと生まれ変わった。初代「Z525」からボディは軟鉄、フェースには軟鉄よりも硬度が高く、薄くできるために反発力を得やすいクロムバナジウム鋼を使用しているところは同じだが、2018年の「Z585」で採用されたフェースの溝「スピードグルーブ」が進化したのだ。「ZX5」はフェース周辺に配置した「スピードグルーブ」に加え、打点分布に合わせてフェースの肉厚を最適に設計した新技術「メインフレーム」を採用。フェースを大きくたわませることで、鋭い飛び出しでボール初速がアップ。これはクロムバナジウム鋼だからこそ成し得たことだ。今でこそ、フェースにクロムバナジウム鋼を採用しているアイアンは他社にもあるが、10年以上前から一貫して使用してきたスリクソンには先見の明があったと言えるだろう。

では「ZX5 MKⅡ」では何が変わったのか?

画像: フェース下部の溝の幅を65%拡大し、「メインフレームMkⅡ」へ進化。

フェース下部の溝の幅を65%拡大し、「メインフレームMkⅡ」へ進化。

「フェース下部の溝を上下方向に65%大きくしました。それによってフェース下部のたわみが大きくなり、下打ちに対して強くなっています。また、フェースの肉厚分布も変えたことで、『ZX5』よりも反発エリアが広がりました。マシンテストで5ヤードプラス。そしてプロが求める方向性もアップ。前後の距離だけでなく左右のブレも少なくなりました」(ダンロップスポーツマーケティング・林一孝部長)

最終的にクラブを判断するのは人間

今やAIがクラブ開発にも欠かせなくなっているが、この進化はどのようにして生まれたのか?

「ダンロップではクラブ開発の早い時期から1万分の5秒というインパクトの瞬間を、1億分の1秒ごとに細分化して解析するシミュレーション技術『デジタルインパクト』など、スーパーコンピューターを使って解析してきました。しかし機械やAIが計算上で出した答えをそのまま製品にすることはありません。『スリクソン』はプロに使ってもらうためのクラブ。契約プロに何度もテストをしてもらい、その都度、プロの意見をフィードバックして反映させていきます。クラブ開発においてプロのテストに置く比重はかなり大きいです。プロの意見が集約されているのが『スリクソン』のクラブなんです」(林部長)

画像: スリクソン独特の「ツアーV.T.ソール」。インパクト時の抜けをよくし、あらゆるライで振り抜ける。

スリクソン独特の「ツアーV.T.ソール」。インパクト時の抜けをよくし、あらゆるライで振り抜ける。

「ZX5 MkⅡ」は女子プロに使用者が多いが、男子でも稲森佑貴が使用して優勝している。男子プロのなかで飛距離が出るとは言えない稲森がアイアンに求めるものは「飛距離と寛容性」だった。「ZX5 MkⅡ」はまさに距離が出てミスに強いアイアンだと言えるだろう。また上の番手は寛容性のある「ZX5 MkⅡ」、下の番手は、より打感がよく操作性の高い「ZX7 MkⅡ」というコンボにしているプロも多いという。

「プロに使ってもらうことが大前提なので、構えた時の形状やデザインにもこだわります。昨秋の発売前には、シーズン中にもかかわらず『MkⅡ』にスイッチした選手がいたように、モデルチェンジで見た目がガラリと変わることはほとんどありません。なので、『ZX5』と区別がつくように、そして2代目という意味も込めて違いを出すために『MkⅡ』と名付けました。すでに次期モデル発売に向け開発が進んでいますが、さらなる性能アップ実現をめざしております」(林部長)

※週刊ゴルフダイジェスト2023年12月19日号より

PHOTO/Takanori Miki、Tomoya Nomura、Akira Kato

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