多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏は「クラブ選びは重心選び」と表現する。最新のギアを計測・分析するなかで、注目データをピックアップし、読み解く。今回はテーラーメイドの「P790」アイアン。クラブ選びの参考にどうぞ!
画像: 【試打クラブスペック(7I)】ロフト角●30.5度、ライ角●62.5度、価格(税込)●16万5000円(#6~PW・5本セット)※すべてメーカー公表値

【試打クラブスペック(7I)】ロフト角●30.5度、ライ角●62.5度、価格(税込)●16万5000円(#6~PW・5本セット)※すべてメーカー公表値

中空構造なのに精悍なフォルム

テーラーメイドのアスリートモデルアイアン『P700』シリーズでもっともフェース長が長く、唯一の中空構造ヘッドの『P790』を紹介する。前作の2023年に発売された今作は、2021年モデルと違い、番手ごとに内部構造を変えることで、ロングアイアンには飛ばしやすさ、ショートアイアンには止まりやすさを追求したという。

計測は7番のヘッドとクラブ(シャフトは『MCI 80 for TaylorMade・フレックスS』仕様)で実施し、数値はすべて実測値となる。クラブ長さが36.88インチとやや短く、またクラブ重量は404.2gとやや軽いので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが266万g・cm2に抑えられている。この数値であれば本来はドライバーのヘッドスピードが42m/sくらいのゴルファーにとって、タイミング良く振れる設計だろう。

中空構造ながらもヘッド背面はマッスルバックのような格好良さを持ち、プロモデルヘッドではやや長めのフェースで、少しやさしさがある。

フェースはやや長いが構えやすい顔

実際に試打したところ、まずアドレスでは、米国モデルらしく、丸いリーディングエッジとストレートなトップラインで、球をつかまえ過ぎないイメージ。またフェース面に逃げ感はあるが、ライ角度は62.0度とアップライトなので、ちょうどいいフィーリングで構えやすい。

試打したシャフトは80gとカーボンシャフトとしては重めで適度なシナリ感もあるので、このシャフトであればヘッドスピードが40m/sくらいのゴルファーでもスウィングしやすいだろう。

画像: バウンス角は7.0度と大きく、重心距離は40.4ミリとやや長い

バウンス角は7.0度と大きく、重心距離は40.4ミリとやや長い

フェース面は軟鉄よりも硬い素材で打感も硬いが、インパクト音はヘッド内部の充填材で少し抑えられ、フェース面の弾きはいい。また、ツアーモデルよりはフェースが長いので安心感はある。とはいえ、夏のラフからのヘッドの抜けもまずまず問題なく、ヘッドのネック軸回りの慣性モーメントも5871g・cm2と標準的なので、ダウンスウィングでのヘッドの操作性もあり、インテンショナルに弾道を操作しやすい。

アイアンとしては珍しく、フェース面のスイートスポット(SS)位置は、フェース中央よりも少しトウ寄りなので、トウ寄りに当たりやすいドロー系プレーヤーに向いている。また、ソールのバウンス角が7.0度としっかりあるので、ダウンブローにスウィングするとソールは抜けやすくなっている。

左右方向のヘッド慣性モーメントは2400 g・cm2と小さく、ミスヒットに強い寛容性の高いヘッドではないが、ややストロングロフト(リアルロフト角が30.5度)と弾き感のあるフェースで飛距離を求めるゴルファーに合っているだろう。

これが「P790」の計測データだ

米国モデルらしくライ角は62.0度とアップライトな設計だが、フェース面の逃げ顔でそれほどつかまるように見えず、適度につかまった球が打てるイメージが強い。

7.0度としっかりあるバウンス角でダウンブロースウィングしたときにソールの抜けがいい。また、リアルロフト角は30.5度とやや小さく、飛距離が稼げる。

重心距離は40.4ミリとやや長く、フェース中央よりも少しトウ寄りにスイートスポット位置があるアイアンでは珍しいタイプ。持ち球がドロー系のゴルファーに合う。

画像: クラブ重量は404.2gとやや軽いが、カーボン仕様としては重い

クラブ重量は404.2gとやや軽いが、カーボン仕様としては重い

※週刊ゴルフダイジェスト2023年12月26日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より

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