日本シニアオープンを制した藤田寛之が選んだのは、3つあるヘッドの中間モデル「VD/M」だった。最新の「RMX VDシリーズ」にはツアーアスリートモデルの「VD/R」、ネオアスリートモデルの「VD/M」、そしてオールアスリートモデルの「VD/X」がある。ツアープロならロースピン系の「VD/R」を選択しそうなものだが、藤田は、「適度に球がつかまってくれる『M』をチョイスした」と言う。ネオアスリートと位置付けられた「VD/M」とはどんなドライバーなのか、クラブ設計家、松尾好員氏とともに検証してみることにした。

「飛びの3要素」の最適化に着目

これは盲点だったかもしれない。ヤマハが「RMX VDシリーズ」で採用した新開発の「ブルズアイ フェース」によって、これまで見逃していた“飛びの3要素の完全一致”という考え方に、新たな飛びの伸びしろが生まれる可能性が見えてきた。

画像: 左から「RMX VD/R」「RMX VD/M」「RMX VD/X」

左から「RMX VD/R」「RMX VD/M」「RMX VD/X」

飛びの3要素は、「ボール初速」「打ち出し角」「スピン量」。ボール初速はルール規制範囲であれば速い方がよく、打ち出し角とスピン量は、ボール初速に対しての最適化が求められる。ボール初速が速く、打ち出し角が高ければスピン量は少なくても構わないが、ボール初速が遅い場合は、ある程度のスピン量がないと打球はドロップしてしまいキャリー不足となってしまう。そのため、飛びの3要素の最適化こそが、最大飛距離を生むことにつながる。

今回紹介する「RMX VDシリーズ」は、飛びの3要素のうち「ボール初速」と「打ち出し角」「スピン量」の不一致に着目した。ボール初速が最も出るのがフェースセンターだとしたら、打ち出し角を高くすることができ、スピン量を抑えられるのは、それよりも「やや上」(有効打点エリア)になる。

画像: フェース下部が厚いのはブルズアイフェースの特徴。

フェース下部が厚いのはブルズアイフェースの特徴。

   

最もボール初速が出せる打点位置と、打ち出し角とスピン量を抑えることのできる打点位置はそれぞれ異なっていたが、もしこれを重ね合わせることができたら、飛びの3要素の最適化が実現できるのではないかと考えたわけだ。

ヤマハはフェースの下部の肉厚を厚くすることで、最も弾く位置を上にズラせることを発見した。

さらに、VDシリーズには多彩な重心変化を可能にする機能が搭載された。近年、使用する素材や構造、製造技術の進化によって余剰重量が多く生み出されるようになり、「設計の自由度」は格段にアップした。重心をある程度思いのまま動かすことができるようになったが、最新のモデルでは、個々のプレーヤーに合った重心位置を設定できるものも少なくない。

画像1: ヤマハ「RMX VD/M」 ドライバー。とことん「最適化」にこだわったネオアスリートモデル【ヘッドデータは嘘つかない】

   

ツアーアスリートモデルの「VD/R」はフェースに添って重心位置を変えられる機能を搭載した。

これによりボールのつかまり具合を調整することができ、フェード方向、ドロー方向の調整を可能にした。

   

ネオアスリートの「VD/M」は、ソールのフェース側から後方に向けて重心を移動させることができる。

フェース側(ロー)にした時の重心深度は39ミリ。後方(ハイ)にした場合は43ミリとなり、弾道の高さとつかまり具合が調整できる。

画像2: ヤマハ「RMX VD/M」 ドライバー。とことん「最適化」にこだわったネオアスリートモデル【ヘッドデータは嘘つかない】
画像3: ヤマハ「RMX VD/M」 ドライバー。とことん「最適化」にこだわったネオアスリートモデル【ヘッドデータは嘘つかない】

オールアスリートモデルの「VD/X」は、弾道の高さとつかまり具合を4つのウェイトポジションから選択できる。

慣性モーメントが最も大きくなるのが「フェード」、重心深度が最も深くなるのが「センター」、ボールのつかまり度を上げる重心角が最大になるのが「ドロー」ポジションになる。

今回の「RMX VDシリーズ」の3モデルすべてが「アスリート」を意識したもので、アスリート志向のゴルファーが求める、些細な部分にも対応できるドライバーとなっている。

「VD/M」には、数値には見えないやさしさがあった

ここからは、クラブ設計家の松尾好員氏に、藤田寛之プロが日本シニアオープンで使用し、優勝に貢献した「VD/M」について詳細解説をしてもらいます。

画像: クラブ&ヘッドデータ

クラブ&ヘッドデータ

   

クラブ長さが実測で45.0インチと「標準的」(最近では短めの設定)。

クラブ重量も実測で301.9グラムと「標準的」ですが、スウィングウエイトが実測でD2.7と「大きい」ので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが290万gc㎡と「大きく」なっている。

ドライバーのヘッドスピードが45m/sくらいの方がタイミング良く振りやすくなっています。

ヘッドは、全体にオーソドックスな形状ながらも、時計の文字盤でいうところ1~2時方向の張り出し感があり、ヘッドのトウ先の高さが低いのでフラット感があります。アドレスでは球をつかまえ過ぎないイメージが出ています。

実際に試打したところ、アドレスではきれいなスクエアフェースのため"スクエア感"があり、比較的平らなフェース面も特徴です。

画像: (左)ヘッドのトウ先の高さが低くなっている。(右)時計の文字盤でいう1~2時方向に張り出しがあるのも特徴。

(左)ヘッドのトウ先の高さが低くなっている。(右)時計の文字盤でいう1~2時方向に張り出しがあるのも特徴。

そして、ヘッドの後方が低いシャローバック形状なので、インパクト付近でアッパーにスウィングしやすいイメージがあり、また、FP値(フェースプログレッション)は「大きく」、リアルロフトもしっかり付いているので、球が上がりやすいイメージも出ています。

画像: 【試打クラブスペック】●ロフト角/10.5度 ●ライ角/58.0度 ●価格(税込)/9万2400円 ※すべてメーカー公表値

【試打クラブスペック】●ロフト角/10.5度 ●ライ角/58.0度 ●価格(税込)/9万2400円 ※すべてメーカー公表値

試打クラブは10.5度で標準TENSEIのTR50Sシャフト仕様でしたが、シャフトは軟らかめの設定でした。この感じからすると、ヘッドスピードが40〜42m/sくらいの方でも扱えそうです。

ヘッドの重心位置もオーソドックスで、重心距離は長すぎず、重心深度も深すぎないので、明らかに「VD/X」のような大慣性モーメントを狙ったヘッドではないことがわかります。

また、ソール面にはフェースからバック方向にスライド式のウェイトがあり、その位置によりバックスピン量の増減や弾道の高低を調整することが出来るのが特徴です。スライドウェイトの真ん中「ニュートラル」の位置では、適度なスピンも入って弾道が安定しやすく、比較的高いストレート系弾道が打ちやすい感じでした。「VD/R」、「VD/M」、「VD/X」の3つのモデルの中では、インパクト音は「かなり高め」の軽い感じになっています。

「VD/M」はオーソドックスなスクエアフェースで構えやすく、かつヘッドのネック軸回りの慣性モーメントも小さく、操作性の良いヘッドです。球をつかまえられ、上がりやすいので、「やや小さめ」の左右方向のヘッド慣性モーメントの数値イメージよりも、全体としてやさしく打てる印象です。

PHOTO/Takanori Miki

※週刊ゴルフダイジェスト2024年1月2日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より

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