「スリクソンZX5 MkⅡ」とどこが違う?
「スリクソンZX5 MkⅡ」アイアンは、2023年のクラブ・オブ・ザ・イヤー アイアン部門の大賞を受賞しており、女子ツアーはもとより男子シニアツアーでも人気のアイアンとして高く評価されている。軟鉄のボディに、フェースはクロムバナジウム鋼を採用し、4番から7番アイアンのボディにはタングステンが埋め込まれていて、やさしいツアーキャビティの代表的モデルと言える。
一方「ゼクシオX」アイアンは今作が3代目となり、本家「ゼクシオ」にはない操作性を加味したアイアンとなっている。ボディはSUS413(ステンレス鋼)、フェースはHT1770(ステンレス鋼)が使われ、「ZX5 MkⅡ」同様に4番から7番アイアンにはタングステンが埋め込まれている。
ロフト角を比べて見ると「ZX5 MkⅡ」の7番が31度、PWが44度なのに対して、「ゼクシオX」アイアンの7番は28.5度、PWは43度となっており、「ゼクシオX」アイアンのほうがストロング設計となっている。7番アイアンのロフト差2.5度、PWのロフト差1度で言えば、「ゼクシオX」アイアンのほうが飛びそうなものだが、反発の高いフェース設計とボール初速との関係性を考えるとますます分からなくなってくる。
また、フェースの裏側にある3つの溝(スピードグルーブ)といい、スリクソンアイアンの標準設計となっている「ツアーV.T.ソール」(「ZX5 MkⅡ」にももちろん採用)といい、構えたときのシャープな形状など、「ZX5 MkⅡ」と「ゼクシオX」は搭載されているテクノロジーにも類似点が多い。
そうなると、スリクソンが好きか、ゼクシオが好きか、になってくる。イメージ的に「スリクソン」はツアーアイアンに属し、「ゼクシオX」はやさしさ重視のゼクシオからの派生アイアン。ゴルフクラブは意外と「気持ちの問題」も影響してくるので、もはや打ち比べて選ぶしか方法はないかもしれない。
ちなみに、男子シニアプロは「ZX5 MkⅡ」をそのまま使用すると飛びすぎるということで、ロフトを2度寝かせるのが流行っている。ロフトを立たせて飛距離を稼ぐことはよくある話だが、ロフトを寝かせて飛ばないようにチューニングするのはあまり聞いたことがない。
本家「ゼクシオ」アイアンとはまるで違う性能
ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートをしてもらいます。
クラブの長さが7番で37.0インチ(以下、すべて実測値)と「標準的」ですが、クラブ重量は装着されているスチールシャフトも相まって417.7グラムと「やや重く」、それに伴いスウィングウェイトもD2.4と「やや大きく」なっています。
クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントが272万g・㎠と「大きく」なっています(基準値:263万~266万g・㎠)。計測データのみで推察するとドライバーのヘッドスピードが45~46m/sくらいのゴルファーにとって、タイミング良く振りやすくなっています。
ヘッドを見てみると通常のゼクシオほど大きくなく、「スリクソンZX5 MkⅡ」と似ています。「ストレート系のリーディングエッジ」と「丸いトップライン」の組み合わせから球を包み込むイメージが湧き、さらにグースネックとアップライトなライ角と相まって、球をつかまえてくれそうです。
実際に試打したところ、まずフェースのトウ側の高さがヒール側に比べて高くなっており、アドレスではよりアップライトの印象を強く受けました。
さらに厚めのトップラインで力強さも感じます。試打クラブは7番で「ダイナミックゴールド95」のS200が装着されており、シャフトはスチールながらも軟らかさがあり、ヘッドスピードが40m/sくらいのゴルファーでも扱えるクラブといえます。
フェース面が軟鉄よりも硬い素材なので打感は硬く、フェース面でボールの食いつきはあまり感じませんでした。極大ヘッドの通常「ゼクシオ」よりも左右方向のヘッド慣性モーメントは小さく標準的なヘッドで、「夏のラフからのヘッドの抜け」「球のつかまり」「操作性」は通常「ゼクシオ」に比べれば「ゼクシオX」 のほうがいいです。
「スリクソンZX5 MkⅡ」と比べると、ストロングロフトでスピン量も少なくなるため、「ゼクシオX」のほうが鋭い弾道で飛ばせるアイアンという印象があります。スピンを入れて上から止める打球を打ちたいゴルファーは、カーボンシャフトと一緒に試打されるといいと思います。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月13日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より
PHOTO/Tomoya Nomura