柔軟性を活かしたワイドスタンスのアドレスとバックスウィング
みんなのゴルフダイジェストをご覧の皆様、こんにちは。SPORTSBOX AI・3Dスタッフコーチの北野達郎です。今回はDPワールドツアーの「カタールマスターズ」で優勝しました星野陸也選手をスポーツボックスAIで分析しました。
星野選手のスウィングは、ワイドスタンスを生かした左右の体重移動と捻転差が特徴です。今回はその体重移動に関連する項目「SWAY(左右の移動)」のデータを中心にチェックしてみましょう。
まずアドレスで特徴的なのがスタンスの広さ。肩幅以上に広いスタンスを取ることで、ホリゾンタル(左右の体重移動の動き)が入りやすくなり、また胸と骨盤の捻転差が大きくなります。身体が柔軟な星野選手ならではのアドレスです。
次にバックスウィング(P3)を見ていきます。P3(腕が地面と平行のポジション)の特徴は2つあり、ひとつ目は「頭が右に回転する」点で、P3の時点でキャップのつばがかなり右を向いています。この動きによって体の回転が非常に深くなり、星野選手ならではの大きなトップに繋がります。もうひとつは「右足に体重をしっかり乗せている」点です。バックスウィングで胸は最大で−7.6cm右、骨盤は最大で−7.2cm右と、いずれも右足寄りに移動していることが分かります。ただし右へ移動し過ぎる「スウェイ」になっていません。それは、「トップでは既に左足に体重が乗り始めている」ことがポイントになります。
右から左への体重移動と、胸と骨盤の捻転差が大きいトップ
トップでのデータを見てみましょう。胸はトップで−5cm、骨盤がトップで−5.8cm右と、それぞれP3に比べてマイナスの数値が減り始めている=左に戻り始めていることが分かります。これはスポーツボックスAIで統計を取ったすべてのツアープロの特徴で、星野選手のように左右の体重移動が大きい選手も例外ではありません。また頭が右に回転するバックスウィングに伴って、胸の回転量は−108°と右に大きく回っています。ただ骨盤は−45度右と回転量は抑えられており、柔軟な上半身とワイドスタンスによる胸と骨盤の捻転差が大きいのも特徴です。
右から左への体重移動に関してですが、右にスウェイして打点が安定しないアマチュアの方は、テークバック〜トップにかけて右足に体重が乗り続けてしまい、左に移動し始めるタイミングが遅れます。こうなると右への体のスウェイに繋がってしまいますので、星野選手のように早めの左への移動を心がけると右スウェイ防止に効果的です。
まず左に移動して、胸はその場で回転するダウンスウィング
続いて切り返し〜インパクト(P6)のデータです。切り返しでは胸は+2.5cm左、骨盤は+1.8cm左と、ともに左に移動しますが、インパクトで骨盤は+12.2cm左と目標方向に動いているのに対して、胸は−1.4cm右と右足側に残っているのが分かります。これも星野選手をはじめ多くのツアープロに共通する特徴で、この動きから分かることは「切り返しで一旦左に移動してから身体の回転に伴って右に戻る」という事実です。
切り返しからインパクトにかけての身体の動きは、①移動、②回転、③伸展の順番で動くと効率が良いとされていますが、星野選手のようにトップから切り返しにかけて一旦左に移動してから、頭と胸が右に残るとクラブを効率良く加速させる事が出来ます。アマチュアの方によくあるエラーは主に2つあります。ひとつ目は身体が右足側に残りすぎてしまうケース。このケースはクラブの最下点が手前になり過ぎてしまい、ドライバーでのダフリやトップのミスに繋がりますので、早めの左足への体重移動を心がけましょう。
もうひとつのエラーは、インパクトにかけて頭と胸も左に動き過ぎてしまうケースです。この場合はドライバーの最下点がボールの先にズレてしまい、テンプラのミスの他にもスピン量が増え過ぎて飛距離をロスする現象も起こります。このケースの方は左に体重を乗せてから、その場で体を回転する意識を持ってみてください。インパクトからフィニッシュにかけて骨盤より頭と胸が前に出なければOKです。ドライバーの最下点がボールの僅かに手前になり、適正なアッパーブローでインパクト出来るようになるとダフリも減り、スピン量も減らせますので飛距離アップにも効果的です。
今回は、星野陸也選手のドライバースウィングを分析させて頂きました。昨年の久常涼選手に続いて星野選手のDPワールドツアーでの優勝は、日本男子ツアープロのレベルの高さを改めて印象付けてくれました! 次は誰が続くのか!? 今年は女子だけでなく、男子にも注目ですね!
PHOTO/Getty Images