日本人男子初にして唯一のメジャータイトルホルダー。しかも映えあるマスターズチャンビオンはLIV設立当初からもっとも切望されてきた選手でもある。
関係者によれば松山に提示された移籍契約金は400億円超と噂されるジョン・ラームを上回るとか。
PGAツアーの同僚アン・ビョンフンがSNSで「ヒデキがLIVに行っていればLCC(格安航空会社)のオーナーくらいには簡単になれるのに」と投稿したのもあながちオーバーな表現ではないようだ。
しかしPGAツアーにとっても松山は貴重な存在。ツアーのアジア戦略及びマーケティングにおいてチェ・キョンジュ(K.J.チョイ)を抜きアジア勢最多勝利を挙げている彼は中核に位置している。左手をLIVが握り右手をPGAツアーが握り、両者が綱引きのように引っ張りあっている状態なのだ。
LIVは今週シーズン3戦目のジェダ招待をサウジアラビアで開催する。そこには10年以上前、表舞台から姿を消したかつてのスター、アンソニー・キムが参戦する。
現在38歳のキムは25歳になる前にPGAツアーで3勝を挙げポストタイガーの呼び声が高かった。しかし度重なるケガにより12年のシーズン途中で姿を消して以来消息を絶った。
公私ともに華やかな人物で試合中はトレードマークの白いベルトにシルバーのAK(アンソニー・キムの頭文字)バックルを輝かせ、マスターズでは1ラウンド最多の11バーディをマーク。プレジデンツカップでロバート・アレンビー(豪)を撃破した夜にはアレンビーと朝4時まで飲み明かしたという逸話も。
突然の引退とも取れる行動は謎に包まれている。そのためさまざまな“説”が存在するが、じつはケガ以外にドライバーのイップスが原因ではという報道が最近された。
大方の見方はカムバックを阻んでいたのが多額の保険金の存在。辞めて手にする保険金を上回る額をLIVが提示したことで今回復帰にこぎつけたと見られている。
ノーマンCEOはいう。「私はビジネスに感情を持ち込まない」。だから現時点では交渉に応じていない松山にも「ロサンゼルス(ジェネシス招待)でヒデキが勝ったときも真っ先に“おめでとう。私はあなたを誇りに思う”と伝えた」。
LIVとジェイ・モナハンコミッショナー率いるPGAツアーの枠組み合意は暗礁に乗り上げている。今後も松山をめぐる両者の綱引きは続きそうだ。