現地在留邦人の協力も勝因のひとつ
コマーシャルバンク・カタールマスターズで、欧州ツアー初優勝を飾った星野陸也。
実はちょうど20年前、ボクは同じドーハGCが会場の同大会で2位に入ったことがあり、懐かしさも加わった喜びで陸也の優勝を眺めていました。
陸也も最終日を最終組で迎えます。当然、緊張する場面ですが、宗教上の理由からカタールの週末は金、土曜日。最終日の日曜日は平日で、朝のスタート時はほとんどギャラリーがいなくて優勝争いの朝イチでもあまり緊張しなかった記憶があります。また優勝争いをする同組がフランス人であったこともボクと同じ。
優勝インタビューも当時のことを思い出しました。欧州ツアーでは日本人の通訳はいません。そこで急きょ、応援にきていたギャラリーの日本の方にお願いしたのでしょう。
SNSのダイレクトメールで陸也に聞くと、やはりその通り。在留邦人のみなさんが一生懸命応援してくださった風景もまた思い出しました。
ボクは優勝できませんでしたが、2年目にして日本人として4人目の偉業を達成した陸也のすごさを人一倍強く感じています。
16年に日大を2年で中退しプロ転向。初戦のKBCオーガスタは予選落ちでしたが、2戦目のダイヤモンドカップで2日目に2位となり、早くも最終組を体験。しかもドライビングディスタンスは1位。
最初はとにかくドライバーが上手い若手という印象でしたが、その後、確実に成長しています。ルーキーイヤーは後半スタミナ切れしたことでオフはフィジカルトレーニングに取り組み、2年目は賞金ランク31位。翌18年にフジサンケイで初優勝を果たし、22年までに6勝をマークします。
22年にはリカバリー率、サンドセーブ率が1位となり、デビュー当時から課題だったショートゲームを克服。そして賞金ランク2位の資格で出場権を得た欧州ツアーでは81位でシード権を獲得、カタールマスターズでの初優勝につながります。その順調な成長は当然だと思いますが、まだまだ伸びしろを感じさせるのが陸也のすごいところだと思います。
陸也の試合中のせわしないような動きが個人的に大好きです。打ったボールを目で追うしぐさとか、パー5の2オン狙いでは、グリーン上にまだ選手がいるのに早く打ちたい思いを隠さない表情とか。あの勝負にどっぷり入っている感じは、陸也の魅力のひとつです。
またクラブの微調整はすべて自分で行い、練習場で鉛を貼る姿もよく見られます。パターも10個近くある同じヘッドでネック形状の違いでどれがいいか悩む。その普通とちょっと違う陸也の感性は面白いですよね。最近アイアンカバーもするようになり、その理由が、ヘッド同士がぶつかって調整した鉛がはがれたりしてしまうのが嫌だからというのも陸也らしい。
同じくアーロン・ライが、幼少時からのクラブを大切に扱う習慣からカバーをするのと少し違うところも面白いです。確実にステップアップするタイミングをつかんできた陸也。
2大会連続のオリンピック、さらには夢でもあるPGAツアーも、確実に視野に入ってきました。
PHOTO/Tadashi Anezaki
※週刊ゴルフダイジェスト2024年3月26日号「さとうの目」より