D 前回は体のどこかの可動域に問題があると、それを補おうとして代替動作が起き、それが痛みやケガの原因になるという話でした。テークバックでの代替動作である、「フェイクターン」ですが、チャーリー・ホフマンの事例以外に、誰かの具体的な例を紹介してもらえますか。
目澤 デビッド・プージがそうですね。プージはアリゾナ州立大学ゴルフ部出身で、大学を中退してLIVゴルフに参加してプロになったのですが、つい先日、アジアンツアーの「マレーシアオープン」でも優勝した将来有望な若手です。スウィングも一見、大きな問題はなさそうでしたが、腰痛があるということで原因を探るためにもスウィング3Dチェックを受けたところ、トップでかなり強くサイドベンド(左へ側屈)していることがわかったんです。
D つまり、テークバックの回転を邪魔する何かがあって、それを左サイドベンドで補っていたということですね。
目澤 可動域チェックの結果、上体(胸)の回転と、腕を上げることに問題があったみたいです。
D 椅子に座った状態で両腕をクロスしてクラブを肩に押し当て、体を左右に回すと上体の回転可動域がわかりますね。それと、壁に背中をつけた状態で、親指を上にして両腕を前に伸ばし、そのまま上に上げると、腕が上がりやすいかどうかがわかる。どちらも、TPIのスクリーニングテスト(体の状態をチェックする初期テスト)の項目になっています。
目澤 その通りです。それでプージの場合は、その2つの動きが悪いことで、トップでのサイドベンドが45 度(飛球線後方から見たときに肩のラインが、左肩を下にして水平より45度傾いている状態)くらいになっていました。これは、ツアー平均より10度くらい多い数値になります。
D なるほど。確かに多いですが、それがどうして腰痛を発症するほどの腰への負担になるのでしょうか。
目澤 トップで左にサイドベンドしたぶんだけインパクトでは右にサイドベンドしなくちゃいけないですよね。プージは45度左に傾いた上体を、インパクトまでに右に45度傾け直さなきゃいけないということです。平均的なプロの場合は左35度から右35度なので、まず、動かす幅が少なくて済むことに加え、プージより「ゆっくり」動くことができるんです。
D 1スウィングにかかる時間があまり変わらないとすると、プージの場合は人より大きな動きを、人より速く行っていたということですね。1スウィングだけならたいしたことはないかもしれませんが、何百回、何千回とスウィングすると、相当な負荷になるはずです。
目澤 そうなんです。それと、プージはトップでのサイドベンドが強くて、その時点で左足に体重がかかってしまっていたので、切り返し以降の左への体重移動が制限されていました。肩の動きを修正してサイドベンドの度合いを少なくした結果、体重移動の割合も大きくなったらしいんです。つまり、負荷が軽減しただけでなく、効率も上がったんですよ。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年4月2日号「みんなのスウィング3.0 Vol15」より