今週、太平洋C御殿場Cで開催される欧州と日本ツアーの共催試合「ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」。4日間、ゴルフネットワークで解説を務め、週刊ゴルフダイジェストの人気連載『さとうの目』でもおなじみ佐藤信人プロが、今大会の注目選手5人、そして大会全体の見どころを前後編に分けて紹介! 本記事では前編の模様をお届けする。

マチュー・パボン(31)/フランス

今回出場しているなかでワールドランキング最上位者(21位)です。実は昨年の本大会で優勝したルーカス・ハーバートもランク最上位者でした。そういう選手は、この試合に対してやる気満々かどうかは別として(笑)、やはり実力は高い。昨年の本大会にも出場していて結果は35位タイ。

僕はパボンのことは欧州ツアーで数年間にわたってシードを取っている選手の一人という感じで知ってはいましたが、昨年の今頃は注目してはおらず、出場していたことも忘れていました。多くの人も同じでしょうけど、今では別人かと思うくらいに注目度も上がっています。

昨年10月のスペインオープンに勝ってから一気にトッププロに上り詰めたハポン。賞金ランク上位10人がPGAツアーに行けるといういわゆる”久常ルート“で道を開きましたが、ここに入る最後の試合まで圏外だったのに、最終日の上がり4連続バーディで上位に入って逆転で滑りこんでPGAに行けるようになったのも劇的だし、今季始まってすぐファーマーズで初優勝。こういう勢いってそんなに長持ちするものではないと思うんですけどパボンはかなり長いスパンで活躍している。

先日、初めて出たマスターズも12位タイで来年の出場権を取った。先週のヘリテージは49位タイ。今回で3連戦になりますけど、好調ですよね。

ただ、不安材料はパッティング。マスターズからパターを替えているんです。今季はPGAツアーでもパットのスタッツがすごくよかった。昨年のスペイン、そしてファーマーズに勝ったときは、センターシャフトのパターを使ってクロスハンドで打っていたんですね、でも、マスターズからピンタイプに替えて、先週のヘリテージは普通の順手の握り方にして打っていた。

最近の苦悩と試行錯誤が見られます。先週もパットの数字はよくなかったですから、初めての御殿場のグリーンはどうなのか。それでもワールドランク最上位者なのでやはり注目はしています。

今年はパリオリンピックの年。そういう意味でもフランス出身のパボンは注目されます。パボンはすでに代表選手入りは間違いないですけど、フランスも代表選手争いが結構熾烈。今回もフランス選手が何人か来日していますから、こちらの争いも密かに注目しています。

画像: 祖父と父は有名プロサッカー選手(下記リンク参照)。お爺さんはスペイン人で、お父さんもスペインでプレーしていたので、昨年スペインで初優勝したのはパボンにとっても特別で、思わず涙してしまったそうです(撮影/大澤進二)

祖父と父は有名プロサッカー選手(下記リンク参照)。お爺さんはスペイン人で、お父さんもスペインでプレーしていたので、昨年スペインで初優勝したのはパボンにとっても特別で、思わず涙してしまったそうです(撮影/大澤進二)

クリスティアン・ベゾイデンハウト(29)/南アフリカ

彼はISPSの契約選手で、先週のヘリテージの最終日は6アンダーで28位タイ。最後いいフィニッシュをして日本に乗り込んできます。昨年の本大会では予選落ち。ワールドランクは58位で今回上から2番目。PGAツアーで3年目のシーズンを戦っている間違いなく実力者です。

今季はアマチュアのニック・ダンラップが優勝したアメリカンエクスプレスで2位になったり、予選落ちも少ないし割と好調です。プライベートでは昨年11月に第一子となる男児が誕生。公私とともに非常に充実している状態です。

彼は典型的な“小技が上手い人”。そんなに飛ぶわけでもないし、スタッツ的にはドライバーが上手ではないことがわかります。しかし特に上手いのがグリーン周りとパッティング。これらが安定しているからこうして戦えるんですね。

画像: 殺鼠剤で吃音症になったり、ドーピング問題があったり、波乱の人生を送ってきましたが、ようやく落ち着いてゴルフも上向いてきています(撮影/大澤進二)

殺鼠剤で吃音症になったり、ドーピング問題があったり、波乱の人生を送ってきましたが、ようやく落ち着いてゴルフも上向いてきています(撮影/大澤進二)

さて、今年はオリンピックイヤーでもあり、プレジデンツカップも開催されます。彼がどのくらいこれらに思いがあるのかはわかりませんけど、前回の東京オリンピックにも出ているし、多くの選手がLIVゴルフに行った南アフリカのなかでは現在最上位の候補。ただ、これも安泰ではなく、元来レベルの高い国ですからうかうかはしていられません。また、プレジデンツカップのインターナショナルチームのサブキャプテンにアーニー・エルスとトレバー・イメルマンの母国の偉大な先輩2人が就任。こう考えると、オリンピック出場もプレジデンツカップ出場も視野に入っているのではないでしょうか。すると、こういう1試合1試合が大事になってきます。

また、ホストプロとして昨年は予選落ちしているので、今年はとにかく頑張るのではないでしょうか。ISPSは障害者ゴルフにもアツい企業ですから、彼のキャラクターで優勝スピーチがあれば、世の中の多くの吃音症の方にも勇気を与えるとも思います。

イェスパー・スべンソン(28)/スウェーデン

イェスパー・スべンソンのことは、僕もあまり知らなかったんです。でも先月、シンガポールクラシックでタイのアフィバーンラトとのプレーオフを制して初優勝しました。昨シーズン欧州2部ツアーで1勝し、ランキング5位で昇格、今シーズンはルーキーイヤーです。

アメリカ、ノースキャロライナのキャンベル大学を卒業。多くのスウェーデン選手と同様、最初はノルディックリーグという北欧ベースのツアーから始まり、欧州2部ツアーに昇格、今シーズンはDPワールドツアーで戦っています。

シンガポールの前にも2位を2回、いい兆候を初優勝につなげました。今シーズン開幕時のワールドランキングは339位だったんですけど、今は110位。オリンピックも狙えなくはない位置で、スウェーデンでは5番手。今、ラドビッグ・アバーグがダントツで1番ですけど、2番手のアレックス・ノレンはランク69位。スべンソンがもう1勝すると一気に可能性が出てきます。彼は17-18年、欧州アマチュアチーム選手権という、国同士で戦うチーム戦のスウェーデン代表でアバーグとチームメイトでした。彼の今の活躍も大いに刺激になっているでしょう。

画像: ドライビングディスタンスが6位の平均328ヤードを飛ばすJ・スベンソン

ドライビングディスタンスが6位の平均328ヤードを飛ばすJ・スベンソン

また、ワールドランクは110位なので5月開催の全米プロ出場も狙えますが、今年からDPワールドツアーのフォーマットが大きく変わって、PGAのプレーオフシリーズのようなものを作ったり、地域ごとに”スウィング“に分けたり。そして本大会も含まれる「アジアンスウィング」の全体通しての1位は、ボーナス20万ドルや全米プロに出られる権利をもらえます。中島啓太選手が今1位ですけど、彼はワールドランク77位なのですでに全米プロには出られる。ただ2位のスベンソンにとっては、本大会がアジアンスウィングの1つだということはモチベーションが上がる要素で、「1位になることで全米プロに出られることはすごく気にしてる」と本人もコメントしています。

今調子もゴルフも右肩上がりでやる気に満ち溢れているはず。レース・トゥ・ドバイのランク(欧州賞金ランク)も3位ですから。彼はスタッツを見ると、現在欧州ツアーのドライビングディスタンスで6位。328ヤードアベレージですからかなり飛距離は出る選手です。ここにも注目したいですね。

マチュー・パボンは中島啓太、マッテオ・マナセロとの組み合わせ。
初日は7時00分に10番ホールから、2日目は12時00分に1番ホールからスタート。

クリスティアン・ベゾイデンハウトとイェスパー・スべンソンは同組で、残りの1名は石川遼。
初日は12時00分に1番ホールから、2日目は7時00分に10番ホールからスタート。

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