今年3月に筑波大学社会人大学院を無事の修了し、”女子大生”という肩書がなくなった週刊ゴルフダイジェスト編集部Y。R&AとDPワールドツアーが共催する障害者ゴルフの世界大会「THE G4D OPEN」の現場からの2日目の様子をレポート!

競技カテゴリーは障害の種類というより障害のレベルによって分けられる

「THE G4D OPEN」2日目です。今日も朝はひんやり。10度以下です。昼間は16度くらいにはなったけれど、小雨模様の1日でした。セカンド地点が見えないくらいの霧のなか選手たちはスタート。日本チームの面々も、2日目ともなればリラックスして気持ちも新たに試合に臨みます。

画像: 濃霧のなかスタート。そのうち霧は晴れるも、今度は小雨混じりの天気になり、次は晴れ間が出てきて……と、さすが1日のなかに四季があると言われるイギリスのお天気!

濃霧のなかスタート。そのうち霧は晴れるも、今度は小雨混じりの天気になり、次は晴れ間が出てきて……と、さすが1日のなかに四季があると言われるイギリスのお天気!

さて、本大会は、R&AとDPワールドツアーの共催で、EDGA(ヨーロッパ障害者ゴルフ協会)がサポートしています。看板などは品のある紺色のトーンで統一され、ライダーカップの欧州チームのカラーを思い起こさせます。看板には昨年の優勝選手たちの情報や障害のカテゴリー分けなど、コンパクトに情報を入れています。すべてにQRコードが付いており、大会サイト内の該当ページに飛ぶあたりは合理的。

画像: 参加19カ国の国旗が揺れる。昨年度の総合ベスト3とカテゴリー別の優勝者の看板も。日本選手もいずれここに載る日がきますように

参加19カ国の国旗が揺れる。昨年度の総合ベスト3とカテゴリー別の優勝者の看板も。日本選手もいずれここに載る日がきますように

そして“しゃれた”演出も。「COULD THIS BE YOU?」。鏡の付いた看板の前で自分を映して写真を撮れば、誰でもチャンピオン気分が味わえるのです。しかし、そんなことを実際しているのは私くらい。皆、来年の看板に自分の写真が載ることを信じて、目指しているのですから。

サスティナビリティ活動は全英オープンなどと同じ。選手たちが飲む水も、ペットボトルは置かず簡易蛇口から出るようになっています。

画像: 鏡の付いた看板の前で自分を映して写真を撮れば、誰でもチャンピオン気分が味わえる。ちょっぴり”しゃれた“演出も(写真左)。楽しい給水設備もそろえて「サスティナビリティ」活動を実践している。全英オープン、全英女子オープンでも見られる光景だ(写真右)

鏡の付いた看板の前で自分を映して写真を撮れば、誰でもチャンピオン気分が味わえる。ちょっぴり”しゃれた“演出も(写真左)。楽しい給水設備もそろえて「サスティナビリティ」活動を実践している。全英オープン、全英女子オープンでも見られる光景だ(写真右)

競技カテゴリーは、障害の種類というよりは障害レベルで9つ「SITTING1」「SITTING2」「STANDING1」「STANDING2」「SUTTING3」「VISUAL1」「VISUAL2」「INTELLECTUAL1」「INTELECTUAL2」に分けられています。アイコンを作り、わかりやすく”見せる“ようにしていますが、事前に参加全選手にこのアイコンの使用の同意を得るサインを求めます。このような表現に対する許諾は必要なのでしょう。

使用ティーは男性と、女性や車椅子ゴルファーなどが使用する2つに分けて実施。1組3人で全員1番ホールからのスタート。11分間隔ですから、かなり余裕を持った運営です。日の出が5時、日の入りは21時くらいだからできることでもありますね。

画像: 本大会のティーの場所は2カ所。男子と、女性や車椅子ゴルファーなどで分けられている。緑が女子や車椅子ゴルファー、黄色が男子

本大会のティーの場所は2カ所。男子と、女性や車椅子ゴルファーなどで分けられている。緑が女子や車椅子ゴルファー、黄色が男子

画像: 障害のある部位を色分けしたり、わかりやすく見せる。「1」と「2」で障害レベルが違うこともよりわかる。各選手がどのカテゴリーに入るかが一覧となっている。秋山、小山田、吉田は「STANDING2」、小林は「STANDING3」だ

障害のある部位を色分けしたり、わかりやすく見せる。「1」と「2」で障害レベルが違うこともよりわかる。各選手がどのカテゴリーに入るかが一覧となっている。秋山、小山田、吉田は「STANDING2」、小林は「STANDING3」だ

EDGA会長、トニー・ベネット氏は、「障害者プレーヤーもEDGAのメンバーも増えてきました。女性やアジア地域の障害者の方も、もっとゴルフを始めてほしいですね。我々がスター選手を生み出すことで、より障害者ゴルフも広がるとも考えています」と語り、R&Aのゴルフ振興担当、ケビン・バーカー氏は自らを“すべてのゴルファーの組織”と力強く話し、今後の大会の発展については、「参加人数や国などもっとフィールドを大きくしたい。スポンサーやメディアの力も借りたいです」と語ってくれました。

画像: EDGAのトニー・ベネット会長(左から5人目)とJDGA(日本障害者ゴルフ協会)の松田治子代表理事(右から3人目)を囲んで。皆、世界の障害者ゴルフ普及を目指している

EDGAのトニー・ベネット会長(左から5人目)とJDGA(日本障害者ゴルフ協会)の松田治子代表理事(右から3人目)を囲んで。皆、世界の障害者ゴルフ普及を目指している

障害者ゴルフの第一人者である「小山田雅人」と「吉田隼人」のプレーをレポート

画像: キャディを務める大岩根正隆さんと1番ティーイングエリア

キャディを務める大岩根正隆さんと1番ティーイングエリア

試合に話を戻しましょう。昨年、日本選手で、EDGAが主催する欧州でのツアーで“武者修行”し、イタリアとフィンランドの大会で優勝を飾った吉田隼人。今大会ももちろん優勝を目指して参戦しました。初日は78の14位タイ。昨日は右の林に入れた1番のティーショット。今日はしっかりフェアウェイにヒットしパー発進。6番パー5ではバーディを奪取するなどイイ感じ。

吉田は、24歳のときにバイク事故で右足を大腿から切断。30歳でゴルフを始めました。メキメキと腕を上げ、よみうりGCで働きながら22年に日本プロゴルフ協会のティーチングプロB級を取得。現在は障害者ゴルファーの皆さんに教える立場でもあり、自他ともに認める障害者ゴルフを引っ張る立場でもあります。本大会前日の「優勝したい」というコメントからはその思いがひしひしと感じられました。

しかし2日目のバックナインに入り、10番でトリプルボギーとしてからはスコアを崩し、この日80で19位。「ティーショットが曲がってしまった。ゴルフは自分との戦いですから周りのプレッシャーは関係ないです。でもメンタル面をコントロールできてはいないのかもしれない。何でもないところで自分のゴルフを崩してしまっている」と反省の弁を述べながらも「でも、いいショットもあったので、明日は強気で攻めていきたいです」。見えないプレッシャーを乗り越えたとき、真の王者になり得るはずです。

画像: 300ヤードのドライバーショットも出番が少なめ。狭くて地面が硬いコース攻略のための吉田のマネジメントだ(撮影/増田保雄)

300ヤードのドライバーショットも出番が少なめ。狭くて地面が硬いコース攻略のための吉田のマネジメントだ(撮影/増田保雄)

小山田雅人は2歳のとき、機械に挟まれて右手首から先を失いました。しかしその後、さまざまなスポーツを経験、小学校高学年でゴルフを遊びで始めます。結局「1人でできて健常者にも勝てるスポーツ」という理由でゴルフを選び、いろいろなコースで計7回のクラチャンになりその名を響かせるトップアマとなりました。14年に日本プロゴルフ協会のティーチングプロB級の資格を取得。現在は講演活動やレッスンをしています。実は小山田は、右手首の障害以外でも、脳腫瘍や心臓の手術、最近は車に追突されムチ打ちに……と満身創痍の状態。それでも日々自身のゴルフを磨き続けています。

この日も最初は、どうしてもボールが右に曲がります。しかし”修正力“こそベテランの強み。5番からアドレスでフェースが見えないくらい被せて打つようにすると曲がらなくなったそう。「クラブを替えたことと自分のイメージが違っていた。それを上手く試合中に修正できました」。結果は42・38の80で29位タイ。「ショットがよくなると欲張るのかパットが入らなくなる。でも自分としては、今日は3オーバーくらいのプレーをしている感じでしたし、明日は楽しみです。日本チームで上位に入る人がいないといけない。だから、頑張ります」。最後の言葉に第一人者の責任感がにじみ出ました。

画像: 試合中でもミスを修正できるという小山田の能力は、長年の経験と努力から生まれるものだ(撮影/増田保雄)

試合中でもミスを修正できるという小山田の能力は、長年の経験と努力から生まれるものだ(撮影/増田保雄)

なお、秋山卓哉はこの日83で40位タイ、小林茂はこの日86で35位タイで2日目を終えています。最終日、日本チームの巻き返しに期待したいと思います。

※2024年5月17日16時56分、一部加筆修正しました。

THE G4D OPENの速報は公式HPでチェック可能(英語)

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