スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化することができる、コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」。このアプリを活用しているゴルフコーチ・北野達郎に全米プロで悲願のメジャー初優勝を果たしたザンダー・シャウフェレのドライバースウィングを解説してもらった。
画像: 2024年全米プロの最終日18番グリーンにて(PHOTO/BlueSkyPhotos)

2024年全米プロの最終日18番グリーンにて(PHOTO/BlueSkyPhotos)

みんなのゴルフダイジェストをご覧の皆様、こんにちは。SPORTSBOX AI・3Dスタッフコーチの北野達郎です。今回はメジャー第2戦「全米プロ」で、初日からトップを守り切る完全優勝で、待望のメジャー初優勝を成し遂げたザンダー・シャウフェレのドライバーショットをスポーツボックスAIで分析しました。

シャウフェレのスウィングを分析すると、

1.大きく長いスウィングアーク
2.胸の縦回転が生む高いトップ
3.下半身始動の切り返しで、手は後からついてくるバンプの動き

この3点が特徴的でした。それでは早速スウィングを見てみましょう。

上半身をやや右足寄りにセットするビハインド・ザ・ボールのアドレス

まずアドレスですが、上半身をやや右足寄りにセットするビハインド・ザ・ボールの構えです。スポーツボックスのデータ項目「SWAY GAP」は、胸と骨盤の中心点の左右差を表しますが、シャウフェレは−6.3cm胸が骨盤より右にセットしています。このビハインド・ザ・ボールのポジションを作ることで、インパクトの入射角はアッパーになりやすくなります。

画像: アドレス/胸を骨盤より右にセットするビハインド・ザ・ボールのアドレス。頭がやや右足寄りに位置しているのがポイント

アドレス/胸を骨盤より右にセットするビハインド・ザ・ボールのアドレス。頭がやや右足寄りに位置しているのがポイント

アドレス〜テークバックで手首と左腕の角度が変わらないレートコック

続いてシャウフェレの最初の特徴であるアドレス〜P2(シャフトが地面と平行のポジション。以下テークバック)を比較してみましょう。ココで注目したいのは、「左肘の長さ」と「左手首の角度」です。スポーツボックスのデータ項目「LEAD ELBOW FLEXION」は、左肘の屈曲角度を表しますが、アドレスとテークバックともに170度で左肘の角度が変わりません。左手首の縦コックの角度を表す「LEAD WRISTANGLE」も同様で、アドレス148度に対してテークバックが152度と変化が少ないのがわかります。

画像: 左肘と左手首の角度の変化が少ない。その結果として両手とクラブは長い弧を描くレートコックのテークバックが特徴

左肘と左手首の角度の変化が少ない。その結果として両手とクラブは長い弧を描くレートコックのテークバックが特徴

この左肘と左手首の角度が保たれたテークバックのメリットは、「スウィングアークが大きくなる」ということです。データ項目「MID HANDS SWAY」は、両手がアドレスの位置から左右にどれだけ移動したかを表すデータですが、シャウフェレのテークバックは−73.6cm(右)で男子ツアープロレンジ(範囲。−56.9cm〜−72.9cm右)と比較すると、手元とクラブが長く遠くに上がるタイプであることがわかります。このスウィングアークが大きいテークバックは、飛距離と正確性を高めるうえで参考にしたいポイントの1つです。

胸の縦回転が生み出す高いトップ

続いてトップ(P4)を見てみましょう。2つ目の特徴は、「胸の縦回転と高いトップ」です。「CHEST SIDE BEND」は、胸の左右の側屈角度を表します。シャウフェレのトップは−43度左への側屈が入っており、男子ツアープロレンジ(−36.8度~−43.4度)と比較すると、胸が左に側屈する角度が大きいタイプとわかります。

画像: 胸の左側屈の角度が大きく、その結果トップの両手の位置が高い

胸の左側屈の角度が大きく、その結果トップの両手の位置が高い

シャウフェレのトップは、頭の高さや両肩を結んだラインよりも両手の位置が高く、トップの手の位置が高いことがわかります。この高いトップは、先述の左側屈角度が大きいことが関連していますので、両手を高く上げようとしてもダメで、前傾角度を保ってテークバックした結果、高いトップになると解釈して下さい。前傾をキープして側屈しながら回転するドリルは、胸のラインにクラブを当てて胸を回転させるシャドースウィングがお勧めです。トップでは左肩、インパクトでは右肩がそれぞれボールの方向を指すように胸を回転するイメージを持つと良いでしょう。

下半身から切り返して、手は後からついてくる

そして切り返しを見てみましょう。アドレスの位置から骨盤が左右にどれだけ移動したかを表す「PELVIS SWAY」と、同じくアドレスの位置から両手が左右にどれだけ移動したかを表す「MID HANDS SWAY」のデータを比較しましょう。トップから切り返しにかけて両手はトップ−29.2cm右→切り返し−30.7cm右と、ほとんど両手は動いていませんが、骨盤はトップ1.0cm左、切り返し4.0cm左と、骨盤は左に動き始めているのがわかります。

画像: 両手はほとんど動いていないが、骨盤は左に移動し始めている。下半身から切り返しを行っている証拠

両手はほとんど動いていないが、骨盤は左に移動し始めている。下半身から切り返しを行っている証拠

この下半身が先行して左に移動する動きを「バンプ」又は「スライド」と呼ばれ、この動きは昔からあるスウィング理論の1つですが、近年この動きは「良くない」と言われるケースもあります。それは前傾角度が早く起き上がっているケースです。シャウフェレのように胸の左側屈角度が大きいトップを作れれば、上半身の前傾角度を保ちながら下半身から切り返すことで、クラブが過度にインサイドから寝て下りることなく適正なシャフトプレーンに沿って下ろすことができます。前傾角度を保ったトップから骨盤を先行して切り返すシャウフェレの動きは、体重が右足に残るエラーや、手から先に切り返して打ち急いでしまうエラーにお悩みの方には参考にして頂きたいです。

今回は、ザンダー・シャウフェレのドライバースウィングを分析させて頂きました。松山 英樹選手と一緒に最終日最終組を回った2021年マスターズをはじめ、これまであと1歩手が届いていなかったメジャータイトルを遂に手にしたザンダー・シャウフェレの今後のプレーに注目しましょう!

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