「別れを告げるのは決して容易なことではありませんがそのときが来たようです。24年シーズンを終えたら私はツアーを離れます」という書き出しで5月28日に引退を表明したレキシー。
12歳で初出場した全米女子オープンが開幕する直前の発表には本人の強い意志が感じられる。
「達成したい目標がまだあるので今年の残りの挑戦が楽しみです。そして家族や友人、信頼できる仲間と過ごす人生の次の章を楽しみにしています。これからも常にこのスポーツに貢献し次世代のゴルファーに刺激を与えられる方法を考えていきます」
ゴルフ界にとって彼女は唯一無二の存在だった。10代から注目を集め大きなプレッシャーを背負いながら、レキシーはそれを重荷と考えずむしろ特権と考えていた。だからツアーで活躍した最初からいままで成績が良くても悪くてもサインを求めるすべての人のリクエストに応えてきた。
サインには愛称の「レキシー」ではなく本名の「アレクシス・トンプソン」と認めた。12年前のメジャーで初めてファンにサインして以来ずっと続けてきたジンクスのようなもの。
ファンサービスの根源は母親にこう教えられてきたから。「毎日少なくともひとりの人の1日をより良いものにしてあげなさい」。
母の金言を胸に彼女は少年少女たちのロールモデルになるべくあらゆる努力を惜しまなかった。試合会場で誰のファンですか? とギャラリーに尋ねると「レキシー」と答える人が多いのは成績以上に彼女の人柄に魅了されているから。
男子ツアーのシュライナーズ・チルドレンズ・オープンに史上7人目の女子選手として出場したレキシーは予選通過まであと一歩と迫った。しかし彼女の目的は予選突破よりも大きなものだった。
「シュライナーズ(小児病院)の子供達にどんな夢でも小さすぎることはない。自分が望む夢を追い求めることができるんだ、というメッセージを伝えたかったのです」
「人生にはゴルフでいいプレーをする以上のことがあります。私がやりたいのは他の人に刺激を与え続けることです」
ネリー・コルダの活躍に湧く米LPGAツアーだが今シーズンの残り6カ月はフィナーレに向かって駆け抜けるレクシーに注目したい。