「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね......。

日本人は「33.5インチ」を基準長さにした方がいい?

GD パターに関しては、長さも大事になってくると思うのですが? 多くの人は34インチが基準だと思っているはずです。

長谷部 ライ角と長さのミスマッチも結構多いですね。腕の長いアメリカ人とかは手の位置が低くなりがちなので、ライ角をちょっとフラット目に設定していることが多いと思います。

ただ、PINGのように適正なライ角をフィッティングするようなブランドがあるように、パッティングスタイルとアドレスに合わせて 長さとライ角はちゃんと管理すべきです。市販のパターを切ったり、ライ角を調整したするのは難しいことですが、とても大事なことです。

プロの中にも独特なアドレスをする人がいます。ボールの近く立つ人は、ヒールが上がってしまって、ライ角がフラットな状態になっている人もいます。あえてそうしているらしいのですが、しっかり芯でヒットすることを考えると、自分のアドレスに合ったライ角のものを選ぶべきです。

長さに関しては、33インチと34インチの差は数字以上に大きいので、33.5インチが合う人も大勢いるんじゃないか、そんな気がします。

GD パターの流行、特に女子プロの場合、流行りみたいなものを凄く感じます。ここまでの話のようには選んでいないように思うのですが。

長谷部 選んでいないでしょうね。誰々プロと同じパターが欲しいからオーダーしたいという話をよく聞きます。そんな選び方でいいの? って思うし、ツアーの現場にはパターフィッターがいてアドバイスをしているんですが、プロに対してはコーチではないので、スウィングとかパッティングスタイルまで言及することは難しいですね。

でも、専門家の目から見た時に、「合う、合わない」は絶対にわかっていて、でも渡さざるを得ないだろうなと思うことがあります。そういった時に誰が適切なアドバイスをできるんだろうと思ったこともありました。

GD 流行りのパターでも入らないと判断すれば使わないと思いますが、パターにはビギナーズラックみたいなものが不思議とあるじゃないですか。

長谷部 ありますね。「ハネムーン期間」というのが必ずあって、最初は恐る恐る打っているから、そのパターに合わせた打ち方ができている。それが使い込んでいくうちにだんだん自分の打ち方になってくると、実は合わなかったということはよくあります。使いはじめてすぐに結論が出ないんだと思いますが、ラウンド回数を重ねると合う、合わないがわかってきます。

合わないものは合わないので、本質的に選ぶポイントを変えなきゃいけないことになります。だからラウンド中に人のパター借りて打ったら良かったから、帰りに同じもの買ってみたけど、結果は良くなかったということがあります。

GD 三角形の付いたパターの次にくるのはどんなパターだと思いますか?

長谷部 勝手な私見ですが、大慣性モーメントのブレードタイトと、センターシャフトに注目しています。センターシャフトは打つイメージがつきやすい。このシャフトの延長線で打ちなさいと明確に言っているので、アマチュアでも構いやすいと思います。

ただインパクトの瞬間にフェースが回転しやすいというデメリットがあるとすると、それを防ぐのが大慣性モーメントであり、デカヘッドなので、センターシャフトの芯に当てやすさと、大慣性モーメントのヘッドのブレにくさを上手く融合したものが流行るような気がします。

センターシャフトはインパクトでフェースが回転しやすいというデメリットがある。それを防ぐのが大慣性モーメントヘッド。センターシャフトの芯に当てやすさと、大慣性モーメントを上手く融合したものに注目したい

GD ちょっと前になりますが、オデッセイの『ジェイルバード380』が入手不可能なぐらい流行りましたよね。

長谷部 リッキー・ファウラーが使って復活したパターですよね。あのパターは中尺の大型ヘッドでした。ミドルサイズの長さの大慣性モーメントパターは、ストロークが限定されてしまい、そのストローク以外は使えませんよとなるので、ああ言った組み合わせは非常にいいと思います。重いし、手首では絶対打てないので、ひじを曲げて打つしかない感じです。

GD シニアツアーの長尺率ってめちゃくちゃ高いじゃないですか。女子プロ、男子レギュラー、アマチュアで長尺を使う人はほとんどいません。

長谷部 やっぱり手が動かなくなってきていることと、そのストレスを軽減するためのイップス対策としか言いようがないんですけど、年齢とともに微妙なフィーリング、手先のフィーリングがなくなってくるのはどうしようもない。クラブが動かせる、ヘッドが動かせるという意味で長尺を採用しているとプロから聞きました。円弧が大きくなるので、まっすぐ引きやすい長尺の効果もあると。

GD アマチュアも含め男子シニア以外で流行らないのは長いから?

長谷部 長いのを打ちこなす技術っていうのがある程度必要なんじゃないですかね。長尺を渡されて、どうやって打つのかわからない人が大勢いると思うし、そもそも手を離して打つことに慣れてないと思います。左手でグリップエンドを押さえて、右手を離して、どうやって打つの?ってみんな思うでしょう。

GD エリート競技の世界ではアマチュアもいるから、それは絶対的な練習量、ラウンド数が必要ってことですか?

長谷部 悩みの深さですよね。手が動かなくなってしまった、その悩みの深さが、もうそれを最終的な手段として選ぶしかない。ドライバーからパターまで手を重ね、もしくはくっつけて打つという一連の動作の中で、ひとつだけ別の動きをするのって、それなりの訓練が必要だと思います。普通のパターだと入らない、打てないからって簡単に長尺がいいですよとは言えません。

GD それはアームロックにも言えること?

長谷部 チャレンジできるとしたらクロスハンド。あとクロウグリップも普段のスウィングに近いからチャレンジしてもいいかもしれません。

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