しっかりした中に振りやすさ取り込む
永井 昨年発表されたTOUR AD CQは先調子でしたが、今回のVFは?
高橋 グラファイトデザインは1年ごとに先系と元系を交互に出していて、今回のVFは中元調子となります。先がしっかりしていて、方向性がいいシャフトです。
永井 対象となるゴルファーは?
高橋 やはりアスリートですね。アスリートには先がしっかりしたシャフトを求める方が多く、その中でも特に左を嫌がる人や、叩いても暴れないシャフトを求めている人におすすめです。CQは手元がしっかりしていて先が軟らかいシャフトですが、それとは真逆の性格になります。
永井 形状もCQは手元側がかなり太かったけど、VFは全体的にスリムですね。
高橋 はい。形状的には同じ中元調子のTOUR AD UBと同じですが、VFはUBよりも少し手元側をしっかりさせて、中央から先にかけてもしっかりした部分を長くしています。なのでUBよりは粘り感がなくて少し動きを感じるかもしれません。
永井 これまでのモデルでイメージが近いのは?
高橋 米ツアーでも人気のあるTOUR AD GPです。
永井 ということはVFも全体的な剛性感が高めということ?
高橋 そうですね。でも難しいとかハードというわけではありません。そのあたりは素材の工夫等でうまく調整して、しっかりした中に振りやすさを取り込んでいます。
FWにもおすすめのしっかり系
永井 VFはどんなスウィングタイプに合っているのでしょう?
高橋 手元が少ししなるので、切り返しでタメをあまり作らないタイプ、具体的にはスウィンガーとか、テンポが比較的一定なタイプですね。先端の剛性が高いので、急激に切り返すタイプや体を止めて打ちにいくタイプだとセンター部のしなりを強く感じてしまうかもしれません。
永井 ヘッドスピードでいうと?
高橋 下は40グラムから、フレックスも豊富に展開していますが、基本的にはしっかりしたシャフトなので、ヘッドスピードは40m/sくらいからでしょう。
永井 FWでの使用は?
高橋 FWはしっかり系シャフトの方がミートしやすいし球が上がりやすいので、VFはおすすめです。ツアーでFWでの使用率が高いTOUR AD DIよりもしっかりしています。
永井 米ツアーではジャスティン・トーマスプロが早々に使用を開始したとか。
高橋 試してみたらショットデータがどれも向上して、即実戦投入。彼は5Xの先端を詰めていますが、VFは彼らクラスでも5Xで対応できるシャフトなんです。日本では藤田寛之プロもすでに使用開始。永野竜太郎プロ、池村寛世プロ、中島啓太プロもテストして好印象を持ってもらっています。
永井 打ってみるのが楽しみです。早速打席に移りましょう。
切り返しで体を先行させやすい
永井プロは普段UBの6Sを愛用。「動きが穏やかでタイミングが取りやすい」と評価するそのUBが装着されたマイドライバーを、まずは打ってもらう。弾道は低めだが、安定したショットだ。
続いて同じヘッドにVFの6Sを差し替えて打つ。弾道が明らかに高くなる。計測データを比べると打ち出し角が約2度アップ。さらにスピン量が400rpmほど減っている。当然飛距離も伸びている。
その理由を「UBより全体的にしっかりしているので、ロフトどおりにインパクトしているからでしょう」と高橋さん。永井プロは「手元側が軟らかいから切り返しで手元を止めることができる。その分、体を先に回していけてタイミングも取りやすいので、いい結果となるのでしょう。左サイドでクラブを引っ張り続けてスクェアなインパクトを作る、世界の最新式スウィングにぴったりなシャフトですね」とコメントする。
その発言に、高橋さんは「極端な例になりますが、女性用の軟らかいシャフトを打つと、誰もが急激に切り返して打ちにはいかない。手元を動かさないように切り返ししていきます。そのイメージに近いといえるでしょう」と補足する。
続いて5S、4Sも試打。「VFは軽くても頼りなさがないし、手元を動かさずに切り返していけるので、球が軽くならない。それに先端の剛性があるから軽くてもミートしやすいので、初心者にもおすすめできます」(永井)
もうひとつ、永井プロが試打して気がついたことがある。フック系の球が出ないことだ。トウ寄りでヒットしても左にはまず行かない。それも「先端の剛性が高いから」と高橋さん。「左がまったく怖くない。かえってスライス系のショットがよく飛んでくれます」(永井)
TOUR AD VFの登場に、「こんなシャフトを待っていた!」と喜ぶゴルファーは多いはず。赤と黒の精悍なカラーリングに、ショットの向上を期待しよう。