日本のコースに似ていたことが上位奪取の由縁
21年の全米女子オープン制覇に続く2度目のメジャー制覇を成し遂げた笹生優花。そして今までの不調が嘘のような素晴らしいゴルフをし、単独2位に入った渋野日向子の活躍はもちろんだが、もっと注目すべきなのは6位タイに古江彩佳、9位タイに竹田麗央と小祝さくらと、全米女子オープンの舞台で日本人選手がトップ10に5人も入ったということだ。これほどまでに多くの選手がトップ10に入ったのは記憶にない。ではなぜ日本人選手は活躍できたのか? この理由のひとつは「コースが日本と似ていたこと」にあると木村彩子のコーチとして現地に行っていた南秀樹プロコーチは言う。
「2015年の全米女子オープンもランカスターCCで行われ、実際に私も行っていたのですが、その際はグリーン周りのラフが粘り気の強いティフトン芝と、芝密度は高いが茎や葉が柔らかいベント芝が入り混じった状態でした。このような状態だとライによって打ち方を変える必要があり、日本ではほぼないため難易度がかなり高かったんです。しかし、今年はベント芝に統一されていて、昨年までニトリレディスの会場となっていた小樽カントリー倶楽部にそっくりだったんです。練習ラウンド中にも日本人選手同士で『小樽に似ているね』という声が聞こえてくるほどでした。だから“いきなり”海外で戦う選手も“ホーム”で試合をしている感覚は少しあったと思います」(南・以下同)
グリーン周りの芝に対して対応しやすかったのに加えてもう1点、日本人に有利に働いた点があったと南プロコーチは続ける。「3番ホールのようにティーショットは打ち下ろしなのに、セカンドショットが打ち上げになるなどの『アップダウンが強いホールが数多くある』こと。そして16番のようにアップダウンが少なく距離が短いホールでも、2打目地点には大きなフェアウェイバンカーが点在することでレイアップするかしないかの『判断力を試されるホールが多い』こと。そこに気まぐれのように襲いかかる風がかなり強く吹いていたことが日本人選手には“慣れた”環境だったと言えます。今回は2015年に比べて100ヤード近く距離が長くなったのですが、このコースコンディションにより飛距離勝負ではなく、マネジメント力が試される大会になっていたわけです。そうなれば日本人選手の十八番。フジサンケイレディスが行われる川奈ホテルゴルフコース富士コースや2020年に行われた日本女子オープンに会場である烏山城カントリークラブなど、アップダウンが強く、風が安定しないゴルフ場の経験値が高いので上位へ食い込める可能性が高かったのだと思います」
今回の全米オープンの結果により、笹生優花がオリンピックランク6位に入ったためパリ五輪出場への切符が誰に渡るのかも分からなくなってきた。最終決着となる6月24日が待ち遠しい!