手堅いだけで勝てるわけがない
ーー「自分を手堅いゴルファーとは思ったことはないんや。積極性こそ本領やと思ってます」
「稽古は複雑でも舞台ではシンプルでなければならない」とは故森繁久弥さんの言葉です。この言葉に共感したことがありました。試合ともなると、いいゴルフをせなとか、いいショットをしたいとかいろんな思いが頭に渦まきます。ところが、7000ヤードを超す長いコースで勝った時など、まず2打目を届かすということしか考えんのです。つまり、シンプルに攻めるいうこと。それが勝つという一点に集約されたんやないかと思うんです。
ボクは自分のゴルフを積極的だと規定してますのや。よく「フェアウェイの運び屋」とか「粘りの杉原」「マムシの杉原」とか人は呼んで、手堅いゴルフの代表みたいに思われているようやが、ボク自身は決してそうは思うてません。プロ入りして初優勝した日本オープンでのこと。最終日17番で第2打をグリーン横のバンカーに入れました。このホールはグリーンまわりにラフが深く、ラフよりバンカーがいいやろ思って、その上にあるピンを狙っていったんです。それが届かずにバンカーへ入り、そこからうまく寄せてパーを拾った。この時も粘りのゴルフといわれましたが、なあに、実はピンを積極的に狙っていったうえでの結果だったわけです。
この時は苦笑して反論はしませんでしたが、「手堅い」だけでは上位にはきても優勝はなかなか難しいのではないかという気がするのです。自分では積極性こそ本領や、と思ってます。
徹するということ
ーー「徹する強さは決して才能だけで解決できる問題ではありません。もっと深いもんや」
あれは昭和59年ごろやったと思います。アメリカの女子プロ選手権を勝った樋口久子選手がその前の年、国内で初の予選落ちが話題になりました。国内で256試合、海外も含めると338試合の連続予選通過というとてつもない記録を打ちたてました。まだボクは47勝しかしてなくて、50勝を目指していたときだもんやから、そりゃ凄いことだと思いました。
野球では衣笠祥雄選手が連続出場2215試合、そして現在阪神の金本知憲選手が全イニング1492試合という気が遠くなるような記録を目の当たりにすると、才能とは何ぞや、なぞと考えてしまいます。長く続けるとはなんぼ才能があっても、それだけでは絶対やれることやない、そう思います。野球には故障、ケガがつきものやし、スランプももちろんあるでしょう。ゴルフにしたって「運」という不確定要素があります。ましてや樋口選手は女性として体調にも微妙なサイクルがあるはずです。そういうことを克服して、毎週のように気力充実させ、体調を維持して、それを17年間続けたわけやから、もう頭がさがりぱなしと書いたことを思い出します。誰がいったか知りませんが、次のような話を聞いたことがあります。
「やるべき目標が決まったら、執念をもって、とことんまで押しつめる。やれるかどうかの問題点は、能力の限界ではなく執念が欠如していないか、どうかということだ」
才能だけで解決できることではないということを、端的に示していると思う言葉です。73歳のボクも年間6試合ほど出場を目指しています。ボクの執念です。
文/古川正則(ゴルフダイジェスト特別編集委員