キャロウェイの軟鉄鍛造の本格派「Xフォージド」シリーズから2021年以来となる新作が登場しました。今作は“日本人ゴルファーの繊細な感覚“に比重を置き、性能のみならず打感やルックスといった細部まで追求したと言います。その中でも一般発売前から女子プロのキャディバッグに加わっていた「Xフォージド スター」アイアンを紹介します。クラブ設計家である松尾好員氏のヘッドデータ分析によれば「たしかに日本人向けに設計されているポイントが詰まっている」と言います。松尾氏と紐解いていくと今作はどんなゴルファーと相性が良いのか見えてきました。

【試打クラブスペック】7I ●ロフト角/29度 ●ライ角/62度 ●価格(税込)/16万380円(5I~9I、PW・6本セット)※すべてメーカー公表値

日本人ゴルファーのツボを刺激する一本!

GD 今回は軟鉄一枚で作られているキャロウェイの本格派、「Xフォージド スター アイアン」を前作と比較しながら分析していただきます。ヘッドデータから感じた今作の魅力はありますか?

松尾 はい。前作から一貫している設計意図と今作から変化した部分がありました。

GD まず一貫している設計意図からよろしくお願いします。

松尾 わかりました。前作から「クラブ長さ」と「リアルロフト角」の設定が引き継がれています。クラブ長さが36.75インチと通常の7番アイアンよりも短く設定されており、リアルロフト角は29.0度と立てられた設定になっています。ストロングロフトで飛距離性能を高めつつ、長さを短くすることで振りやすさとミートをさせやすくする狙いがあると思います。

左が前作、右が今作。ストロングロフト設定と短いクラブ長さは継続されていた

GD たしかに飛び系を謳うアイアンはロフトが立ちすぎているあまり、ボールの角度をつけられずに上から落とすことが難しいといわれます。その難しい部分をクラブ長さを短くしてカバーしているんですね。続いて今作ならではのポイントをお願いします。

松尾 はい。前作よりもバウンス角が小さくなっています。前作の8.3度に対して今作は5.5度と約3度緩やかになっています。バウンス角が小さくなったことで前作よりも横から払うスウィングで打つゴルファーに向けて作られていると言えます。

GD なるほど。バウンス角というと外ブラは大きく、一方の日本メーカーは小さく設定されていることが多いですがこの違いはどんな理由があるのでしょうか?

松尾 それは環境の違いです。海外は練習や試打環境が芝の上から打つことができます。一方、日本は打ちっぱなしの人工芝マットが当たり前の環境です。加えてコースの芝の特徴が海外はフェアウェイでもボールが沈むほどの柔らかさがあり、しっかりと上から打ち込まないとボールをミートできないのでバウンス角を大きくし、入り込むように作られています。逆に日本の芝はボールが浮いている状態で打てることが多いので、払い打つスウィングで飛ばせる点を考慮してバウンス角が小さく設計されています。

GD 環境の違いを加味するとバウンス角が小さくなった今作の「Xフォージド スター」アイアンが、日本人ゴルファー向けに開発された理由と繋がりますね。このアイアンはどんなゴルファーにオススメですか?

松尾 ヘッドデータ以外だと今作のソールに施されたリーディングエッジ側と、バックフェース側の面取り加工のおかげでザックリ防止機能や深いラフからの抜け感の良さが備わっています。そして軟鉄一枚物の打感の心地良さも変わらずに継承されています。飛びを求めながら、トラブルに強いヘッドで安心して打ちたい方はコースで一度試していただきたいです。

独特なソールで刺さりなし!抜け感良し!

ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートをしてもらいます。試打および計測ヘッドは7番、シャフトは「N.S.PRO 950GH neo」でフレックスSです。掲載数値はすべて実測値となります。

ネック軸回りの慣性モーメントがやや小さくヘッドの操作性がいい本格派のアイアンだ

クラブ重量が418.0グラムと「やや重め」ですが、クラブ長さは36.75インチと「やや短く」、スウィングウェイトがC9.2と「小さい」ことから、クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントが266万g・㎠に抑えられています。計測数値のみで推察するとドライバーのヘッドスピードが42m/sくらいのゴルファーにとってタイミング良く振り切りやすくなっています。

ヘッド形状はプロモデルらしく全体的に「やや小ぶり」ですが、オーソドックスな形状で構えやすく、キリッとしたシャープな顔立ちです。アドレスではストレートなリーディングエッジと丸みのあるトップラインで、日本メーカーのような球を包み込むイメージが出ています。

左から#5、#7、#9。全体的に小ぶりでシャープな顔つきをしている

実際に試打したところ、やや小ぶりなヘッドではあるものの、フェース面のヒール側の高さが低いので、ライ角がアップライトに感じます。試打シャフトは軽量ながらも適度に「しっかりとしたハリ」があり、ダウンブローに打ち込むようなスウィングとも相性が良いです。

一般的な7番アイアンよりもクラブ長さが1/4インチ短い設計になっていることで振りやすく、ミートしやすい感覚があります。さらに前モデルと同様に、リアルロフト角29度のストロングロフト設定が特徴で、飛距離性能を求めた設計にしていることが分かります。

ソールのバウンス角が5.5度と大きく、ダウンブローに上から打ち込んでもソールの抜けが良く、夏のラフからのヘッドの抜けの良さも期待できます。

左が前作、右が今作。今作はソールの前後に面取り加工が施されており、ザックリの防止とラフからの抜けの良さを兼ね備えた一本に進化した

本格派のツアーモデルほどではないですが、やや小ぶりなヘッドでヘッドのネック軸回りの慣性モーメントがやや小さく、ヘッドの操作性が高いのでインテンショナルに弾道を操作しやすいです。

打感は軟鉄鍛造特有の気持ちのいい感覚が手に伝わってきました。他の軟鉄好きのゴルファーにも打ってもらいましたが、ヘッドスピードが遅めのゴルファーはストロング設定の影響からか、フェアウェイからは球が上がりにくかったようです。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月16日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より

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