松山英樹の21年マスターズ優勝をサポートした目澤秀憲に、レッスン技術に造詣が深いライターDが、最新スウィング理論について話を聞いていく連載「みんなのスウィング3.0」。今回は「過去のゴルフ理論はなぜ難しかったか」について考えた。
画像: ボディターンの代表選手ニック・ファルド。「ボディターン」というと、腕を使わないスウィングと思われがちだが、本来は体の回転に対していかに腕を同調させるかということが主眼。ファルドのスウィングを見ても、パーシモン時代、飛ばすために必要だった強いアームローテーションを抑えているだけで、腕の振り自体は大きいことがわかる

ボディターンの代表選手ニック・ファルド。「ボディターン」というと、腕を使わないスウィングと思われがちだが、本来は体の回転に対していかに腕を同調させるかということが主眼。ファルドのスウィングを見ても、パーシモン時代、飛ばすために必要だった強いアームローテーションを抑えているだけで、腕の振り自体は大きいことがわかる

D この連載では、現代のテクノロジーがもたらした様々な計測データ、それに物理学や運動生理学などの知識に裏打ちされた、「アマチュアにもできる最新スウィング(=スウィング3.0)」を探っていくというのがテーマですが、「3.0」を理解するには、それ以前の「2.0」がどういうものだったか、振り返ってみる必要はありますね。

目澤 そうだと思います。正直、これまでのゴルフ理論というのは、一部のプロの感覚や経験則に基づくケースが多くて、理論として一般化しづらいものがほとんどだったような気がします。たとえば、有名なベン・ホーガンのボールポジション法則(ボール位置は左足かかと線上付近に固定して、クラブによって右足の開き幅と位置を変えるというもの)がありますが、現代のプロであの法則通りにボールをセットしている人はひとりもいません。ボール位置に対するクラブ軌道、入射角の変化によって弾道がどう変化するか、いわゆる「Dプレーン」の”発見”によって、自分のスウィングに合ったボール位置、求める球筋に応じたボール位置があるということがわかってきた結果です。

D それを踏まえると、「スウィング3.0」には、誰にでも当てはまる論理的客観性が必要な一方で、実際はゴルファーひとりひとりに対して調整幅のある柔軟性が求められると。

目澤 そうですね。スウィング効率とかパワーを追求していくと、結局は似たようなスウィング型に収束していくのは間違いないんですが、それをどの程度実践できるかというのは、ゴルファーの体格や筋力、柔軟性、道具を扱うセンスなどによって変わってくるので、その人その人に応じた技術の調整というのが大事になってくると思います。

D 今のところ、ボールを飛ばすスウィングの完成形に近いのは、ブライソン・デシャンボーなのかもしれませんが、あのスウィングができる人が地球上にデシャンボーしかいない(笑)。

目澤 そういうことですね。

D かつてゴルフ界を席巻した、デビッド・レッドベターの「ボディターン」でさえ、今思えば、レッドベター本人が意図していない「やり方」が、アマチュアに広まってしまっていた感があります。

目澤 あの当時は、ちょうどパーシモンからメタルへの移行期でもあり、それに合わせたスウィング変化が求められた時代でした。結局、ボディターン理論の本質というのは、いかに腕と体をシンクロさせるかということだったと思うのですが、それがうまく伝わらずに、とにかく腕を使わずに体を回せばいいというふうに解釈した人も多かったんじゃないでしょうか。

D そうだと思います。アマチュアは本来、腕主体に振る人が多いですから、その腕を封じてしまうと単に飛ばないスウィングになるか、よくて振り遅れになる。

目澤 あれだけ有名になった理論でさえそうですから、正しく情報を伝えるというのは、本当に難しいと痛感しますね。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月16日号「みんなのスウィング3.0Vol22」より

目澤コーチのスウィング理論

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