昨年のマスターズGCレディースを最後に日本ツアーから引退したイ・ボミ。引退後、何度か話を聞く機会はあったのだが、日本では常に過密スケジュールゆえ、じっくり話ができる環境が整わなかった。しかし今回、ゆっくり腰を据えて話せるということで、ボミの地元、韓国水原(スウォン)を訪ねた。

いわずとしれた2015年、2016年のJLPGA賞金女王のイ・ボミ。引退後は主に韓国で活動しているため、日本国内にいる我々が彼女の“いま”を知るには、インスタやXといったSNSくらいしかない。そもそも、ニューヒロインが続々と出現する最近の国内女子ツアーにおいて、引退した選手の動向が気になることは実際、多くない。しかし、イ・ボミとなると、なんとなく気になってしまうのは、彼女が日本で残した数々の記録のせいか、あるいは“スマイルキャンディ”と言われたトレードマークの屈託のない笑顔の記憶のせいか。

水原はソウルから電車で約50分にある郊外都市。世界遺産にも登録されている「水原華城(スウォンファソン)」というお城が有名だが、都心へのアクセスもいいということで多くのアパート(日本でいうマンションのこと)が立ち並ぶ新興住宅地でもある。現地に住む知人に言わせると、「ソウルが東京だとしたら、水原は横浜みたいな感じ」らしい。そんな街でイ・ボミと再会、コーヒーを飲み、タッカルビを食べながら、じっくり話を聞いた。

画像: イ・ボミのお姉さんが経営するお店で食事。タッカルビ、超絶美味しかったです

イ・ボミのお姉さんが経営するお店で食事。タッカルビ、超絶美味しかったです

GD ご無沙汰しております。まずはこの部屋(イ・ボミゴルフギャラリー)に圧倒されてしまったので、このギャラリーについて聞いてもいいですか?

イ・ボミ(以下・ボミ) 今年の初めに作りました。私はいらないって言ったんですけど、お母さんが勝手に作ってしまって(笑)。でも、作ってみると綺麗だからよかったです。今までにたくさんトロフィーとか写真とかをいただいて、家だと置いておくだけになってしまって……。いただいたものを物置の奥にしまっておくのは気持ち的に嫌だったので、こういう場所があると皆さんにも見てもらえるのでいいかなと思いました。一般に開放しているわけではないのですが、お世話になった人に見てもらえたら嬉しいです。

GD 表紙を飾った雑誌もたくさんありますね?

ボミ ほぼすべてとってあります。ファンの方が送ってくれるのもあります。日本の方にとっては、私は外国人なのにこんなにたくさん写真を撮ってくれて本当に感謝しています。

GD 引退してから、日本や世界のゴルフへの関心はどうですか?

ボミ 現役中は自分のことで精一杯だったので、見ている余裕はなかったんですが、引退してからは少し余裕ができたので見ることもあります。ただ、私よりも旦那さんが大好きなので、旦那さんのほうが熱心にチェックしています。私は楽しむためというよりも、どっちかというと選手を覚えるため、勉強の意味でアメリカのLPGAツアーを中心に見ています。解説の仕事が入ったときに知らないと困ってしまうので。

GD 試合を見るのは好きなほうですか?

ボミ 見ることだけなら好きです。でも、それを人に伝えたりするのがすごく大変で。今まで10年間くらい韓国語を日本語に訳して日本の皆さんに伝えてきたので、日本語のクセが残ってしまっているというか……。“日本語っぽい韓国語”になってしまうのが最近の悩みです。

GD 日本語っぽい韓国語とは?

ボミ 例えば、日本語で「〇〇だと思います」とよく言っていたんですけど、韓国ではとにかくはっきり言わなければいけないので「〇〇です!」って、聞いているほうも言ってほしいんですね。それは私自身も韓国人なのでわかっているつもりなんですが、日本で「〇〇だと思う」と言うクセが知らない間についてしまって、そこはよく注意されます。もっと自信のある話し方をしてくださいって言われるんです(笑)。韓国語で話すときも今までは最後まで言わなくてもマネージャーさんがニュアンスを汲み取って訳してくれていたので、自分自身はそこまではっきり言わなくても大丈夫だったんです。日本に居すぎてそうなりました(笑)。

GD そういう違いがあるんですね。慣れるまで大変そうです。

ボミ だから、勉強の意味でも試合を見るようにしているんです。選手のことを知っていれば自信を持って言うこともできるだろうし。知らない選手のことになるとついつい「〇〇だと思います」って逃げたくなっちゃうから。

GD 解説の仕事とレッスンのような技術を伝える仕事だったらどっちがやりたいですか?

ボミ どっちもやりたくないです(笑)。

GD 東京オリンピックのときにSBS(韓国の民放)で解説をされていて、それがすごく好評だったという記事を見ました。

ボミ その時は「私の友達のパク・インビが出てきました」とか、身近に感じられるような解説ができたのでよかったと言ってもらえたんだと思います。そういう選手が一人いると詳しい解説ができるのでいいのですが……。

GD パリオリンピックも解説されるんですよね?

ボミ そうなんです! もうプレッシャーですよ(涙)。もちろん、出場する3選手(コ・ジンヨン、キム・ヒョージュ、エイミー・ヤン)のことは知っていますが、そんなに親しくはないので。オリンピック前に直接会ってしっかり話を聞きたいと思っています。あと、日本人選手のことを知っていると思われていて、好きな食べ物は何とか、趣味とか、技術以外の選手の情報を教えてほしいみたいなことを言われて……。知らないことのほうが多いのにと思いつつ、情報を入れるように勉強しています。コース攻略はもちろんですが、そういうプライベートな話が入ってくると、聞いているほうは面白いみたいですね。

GD 日本のファンとしては、韓国での解説だけではなく日本ツアーの解説を見たいと思ってしまいます。

ボミ いつかはそうなると思うんですが、テレビカメラの前で話すのが本当に苦手なんです。今、日本で解説の仕事を依頼されても、たぶん断ると思います(笑)。自信ないですもん!

GD 引退されてからの日々は充実されていますか?

ボミ そうですね。今はゆっくり過ごせています。もう少し仕事をしてもいいかなとも思うんですが、家の時間も大事なので暇だと感じるくらいがちょうどいいかもしれないですね。

GD ご自宅で料理とかは?

ボミ もちろんしますよ! 現役中は移動が多かったし、自分のことだけだったので料理とかはほとんどしませんでした。でも今はバッチリやっています。昨日も、お肉が残っていたのでヤンニョム(調味料)を入れてサムギョプサルを作り置きしてきました。旦那さんが食べる用です。

GD 日本のファンはボミプロが日本で活動されることを期待しています。今後、日本でたくさん活動するなんてことはあるのでしょうか?

ボミ うーん……。それは今のところあまり考えていないですかね。もちろん、定期的に日本へ行って仕事をしているので、今のペースを守ろうかなぁと。韓国でもカツカツに仕事を入れているわけではないし、今までずっと走り続けてきたので少し休憩というか、そういう時間にしています。そんな中でも、もちろん日本に行きますので、その時はみなさん、よろしくお願いします!

画像: 帰り際、我々取材班のためにタクシーを止めて行き先までしっかり伝えてくれた。この気遣いこそ、イ・ボミたる所以だ

帰り際、我々取材班のためにタクシーを止めて行き先までしっかり伝えてくれた。この気遣いこそ、イ・ボミたる所以だ

撮影/三木崇徳

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