ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回はパリ五輪で金メダルを獲得し、PGAツアーでは年間王者に輝いたスコッティ・シェフラーについて語ってもらった。
画像: 「シェフラーも国を背負って戦うという普段の試合とは別の意義を感じているんだなあ、ゴルフが五輪に定着すると感じた瞬間でもありました」と佐藤プロ(PHOTO/Getty Images)

「シェフラーも国を背負って戦うという普段の試合とは別の意義を感じているんだなあ、ゴルフが五輪に定着すると感じた瞬間でもありました」と佐藤プロ(PHOTO/Getty Images)

年間王者に輝いたスコッティ・シェフラー。年間7勝は07年のタイガー・ウッズ以来で、さらに今年はパリ五輪の金メダリストの栄誉も獲得。最高の1年となったでしょう。

2年続けてフェデックスカップランキング1位で最終戦を迎えながら最後のツアー選手権に勝てずに、一昨年はローリー・マキロイ、昨年はビクトール・ホブランに逆転で年間王者の座を奪われました。

3年連続ランク1位で最終戦を迎えたことだけでもすごいのですが、プレーオフ第1戦前の記者会見では、「プレーオフまでランク1位でもフェデックスカップが取れない。このシステムをどう思うか?」という質問も。過去2年トップで迎えながら勝てていないことをほじくられるような質問を毎試合聞かれる。この手の質問に答えるのはストレスがたまると感じましたが、そうしたプレッシャーに打ち勝っての3度目の正直でした。

シェフラーの今シーズンを振り返ってみましょう。5試合目の2月のジェネシス招待まで、決して好調ではなく、この試合10位でフィニッシュしましたが、ストロークゲインドパッティングは予選通過者51人中最下位。中継席にゲストで呼ばれたマキロイが、「パターをマレット型に替えたほうがよいのでは」と発言、実際シェフラーは次戦の3月のアーノルド・パーマー招待でマレットを投入、そこで優勝を果たします。

ちなみにパットのスタッツは4日間で5位、最終日だけみれば1位です。

マキロイの言葉を聞いたのか真偽のほどはわかりませんが、これが転機となったことは間違いなく、ここからシェフラーの快進撃が始まります。

ザ・プレーヤーズ選手権では2日目の2ホール目で首を痛め、3日目も首痛に苦しみます。1カ月後にはマスターズを控え、普通の選手であれば棄権も考える状況。しかもTPCソーグラスは池ポチャとベタピンが紙一重の難コース。そこをフルショットできない体で距離を打ち分け、最終日に5打差をひっくり返しての2年連続優勝です。連覇が難しいと言われた大会で50回目にして史上初。ボクはこの試合が今年のシェフラーの優勝のなかでもベストだったと思います。

マスターズでは自身2度目の優勝。さらに特筆すべきは5月の全米プロです。この試合の8日前に長男が生まれ、父として迎えた最初のホールで、残り167ヤードをカップインさせてのイーグル発進。

何より2日目の朝の逮捕劇。シェフラー本人からすると訳もわからず手錠をはめられ、いつ出られるのかもわからず留置所でストレッチをしたりして、おそらく思考がぐるぐるするなかで約2時間を過ごし、ようやくコースに戻ったときにはスタート1時間を切っている。その流れで何食わぬ顔でバーディ発進して結局その日は66で初日の12位タイから4位タイに順位を上げる。

“バケモノ”だと思いましたし、取り押さえた警察官のことを一言も悪く言わない。あの日で一気にシェフラーファンが増えたように思います。またキャディや家族の存在こそが、シェフラーの強さの秘密なのだと感じますが、次回に続きます。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年9月24日号「さとうの目」より

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