小祝さくらは、いつも何事にも動じない。初挑戦となった全英女子オープンでも、その姿はまったく変わらなかった。初めてのヨーロッパはトラブル続きだった。
台風の影響で出発が半日遅れた。日曜日から練習ラウンドしたくて飛行機を変更し、ヘルシンキ経由でエジンバラへ。するとロストバゲージが発覚。マッサージベッドとマットレス、何より肝心のクラブが入ったキャディバッグが見当たらないのだ。イギリスのヒースロー空港で荷物をロストしたプロたちの話をたくさん聞いていたので、そこを避けて行ったにもかかわらず、だ。
マネジャー、トレーナー、通訳さんは激しく動揺した。しかし、小祝さくらはまったく動じなかった。こういうときの肝の座り方は半端ない。「どうしよう」とオロオロすることもなく、誰に対してもひと言も文句を言わず、「こうなったら、(欧州の)ダンロップさんが作ってくれたクラブでやるしかないですよね」。小祝さくらの動じなさは、周りへの気遣いから来ているのだろう。
結局、日曜日はコースチェックをしながら18ホールを歩いた。月曜日は、かき集めたクラブで練習ラウンドした。その間、ダンロップが新しいセットを準備してくれたり、AIGのサポートスタッフが「オレに任せろ」と空港までクラブを取りに行ってくれたりして、クラブが手元に届いたのは火曜日のお昼。そこから2日間、みっちり練習した。
今年の会場は〝聖地〟セントアンドリュースオールドコース。しかし、動じない小祝さくらはここにもいた。有名な18番のスウィルカンブリッジを目の前にしてもまったく騒がない。周りに「せっかくだから写真撮影したほうがいいよ」と促されて「そうですか……」と写真に収まった。
ただ、日本では見たことのないコースには少し驚かされた。「1つのグリーンが100ヤードくらいあったり、そこにカップが2つあったり。フェアウェイが交差していたり……」。今まで経験したことのない風にもちょっぴり翻ほん弄ろうされた。グリーン上で珍しく仕切り直しもした。ボールが風で揺れていたからだ。
「でも、行けてよかったです。とても勉強になりました」。結果は、初日が71、2日目が78で1打足りずに惜しくも予選落ち。翌日の土曜日、帰国便が遅れ、トランジットのため猛ダッシュし、出発10分前に到着。さすがに疲れた。しかし、動じてはいなかった。
帰国後すぐの月曜日には竹田麗央と銀座でショッピングし、そのまま岐阜へ(ゴルフ5レディス=14位T)。雨のなか戦い、その足で沖縄(ソニー日本女子プロ選手権=15位T)へ。〝鉄人さくら〟の本領を発揮。この後日本ツアーに専念する小祝さくら。ここからまた全試合出場する予定だ。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年9月17日号より