女子ツアー黄金世代の実力派にして天然キャラクター・小祝さくら。そのゴルフ回路を覗く異色エッセイ。第48話、トラブル続きの初全英も〝動じない〟さくらは健在。

小祝さくらは、いつも何事にも動じない。初挑戦となった全英女子オープンでも、その姿はまったく変わらなかった。初めてのヨーロッパはトラブル続きだった。

台風の影響で出発が半日遅れた。日曜日から練習ラウンドしたくて飛行機を変更し、ヘルシンキ経由でエジンバラへ。するとロストバゲージが発覚。マッサージベッドとマットレス、何より肝心のクラブが入ったキャディバッグが見当たらないのだ。イギリスのヒースロー空港で荷物をロストしたプロたちの話をたくさん聞いていたので、そこを避けて行ったにもかかわらず、だ。

マネジャー、トレーナー、通訳さんは激しく動揺した。しかし、小祝さくらはまったく動じなかった。こういうときの肝の座り方は半端ない。「どうしよう」とオロオロすることもなく、誰に対してもひと言も文句を言わず、「こうなったら、(欧州の)ダンロップさんが作ってくれたクラブでやるしかないですよね」。小祝さくらの動じなさは、周りへの気遣いから来ているのだろう。

画像: 今回、日本選手でロストバゲージは小祝だけ。動じないさくらでも発覚の瞬間は「いきなりか……」独り言が出た。さくらも人間だ。キャディの小畑さんも「仕方がない。自分のクラブじゃないと試合に出られないことはないし、やるしかないよ」。名コンビだ

今回、日本選手でロストバゲージは小祝だけ。動じないさくらでも発覚の瞬間は「いきなりか……」独り言が出た。さくらも人間だ。キャディの小畑さんも「仕方がない。自分のクラブじゃないと試合に出られないことはないし、やるしかないよ」。名コンビだ

結局、日曜日はコースチェックをしながら18ホールを歩いた。月曜日は、かき集めたクラブで練習ラウンドした。その間、ダンロップが新しいセットを準備してくれたり、AIGのサポートスタッフが「オレに任せろ」と空港までクラブを取りに行ってくれたりして、クラブが手元に届いたのは火曜日のお昼。そこから2日間、みっちり練習した。

画像: 初ヨーロッパ。建物や街の雰囲気は「普通です」。レンタルハウス周りを散歩したり、マネジャーとYouTubeを見ながらラジオ体操したり。お鍋をのぞき込むさくら(右)。炊飯器持参も、変圧器から煙が出て壊れたのでご飯は鍋で炊いた。マネジャーと通訳さんが調理担当

初ヨーロッパ。建物や街の雰囲気は「普通です」。レンタルハウス周りを散歩したり、マネジャーとYouTubeを見ながらラジオ体操したり。お鍋をのぞき込むさくら(右)。炊飯器持参も、変圧器から煙が出て壊れたのでご飯は鍋で炊いた。マネジャーと通訳さんが調理担当

今年の会場は〝聖地〟セントアンドリュースオールドコース。しかし、動じない小祝さくらはここにもいた。有名な18番のスウィルカンブリッジを目の前にしてもまったく騒がない。周りに「せっかくだから写真撮影したほうがいいよ」と促されて「そうですか……」と写真に収まった。

画像: 竹田麗央と“体力お化け”コンビは、次戦で竹田は優勝、小祝は14位。次の沖縄では、地元料理と海を堪能し試合に臨み、竹田2連勝、小祝15位。レンタルハウスではエビシュウマイやシーフードカレー。仲良しの勝みなみとはフィッシュ&チップスやムール貝を堪能。美味しい食べ物は力の源

竹田麗央と“体力お化け”コンビは、次戦で竹田は優勝、小祝は14位。次の沖縄では、地元料理と海を堪能し試合に臨み、竹田2連勝、小祝15位。レンタルハウスではエビシュウマイやシーフードカレー。仲良しの勝みなみとはフィッシュ&チップスやムール貝を堪能。美味しい食べ物は力の源

ただ、日本では見たことのないコースには少し驚かされた。「1つのグリーンが100ヤードくらいあったり、そこにカップが2つあったり。フェアウェイが交差していたり……」。今まで経験したことのない風にもちょっぴり翻ほん弄ろうされた。グリーン上で珍しく仕切り直しもした。ボールが風で揺れていたからだ。

「でも、行けてよかったです。とても勉強になりました」。結果は、初日が71、2日目が78で1打足りずに惜しくも予選落ち。翌日の土曜日、帰国便が遅れ、トランジットのため猛ダッシュし、出発10分前に到着。さすがに疲れた。しかし、動じてはいなかった。

画像: 1日の気温差や風にはみんなびっくり。終始耳当てを付けてラウンドした。選手しか買えないお土産も試合の合間にゲット

1日の気温差や風にはみんなびっくり。終始耳当てを付けてラウンドした。選手しか買えないお土産も試合の合間にゲット

帰国後すぐの月曜日には竹田麗央と銀座でショッピングし、そのまま岐阜へ(ゴルフ5レディス=14位T)。雨のなか戦い、その足で沖縄(ソニー日本女子プロ選手権=15位T)へ。〝鉄人さくら〟の本領を発揮。この後日本ツアーに専念する小祝さくら。ここからまた全試合出場する予定だ。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年9月17日号より

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