一番のメリットはライ・ロフト角を調整できること
みんゴル取材班(以下、み):一時期は中空アイアンが流行りましたが、最近はブリヂストン、ミズノ、キャロウェイ、テーラーメイドなど新作アイアンに軟鉄鍛造が多いような気がします。メーカーはどこにニーズがあると考えているのでしょうか。
宮城:一般のアマチュアユーザーは、軟鉄鍛造アイアンは打感がいいとか、音が澄んでいるとかよくいいますが、実は飛び系アイアンに使われるバネ鋼を使おうが中国製ヘッドに多い8620ニッケルクロムモリブデン鋼であろうが、軟鉄鍛造と似たような打感のアイアンを作ることは可能です。
み:えっ、本当ですか? 軟鉄鍛造神話が崩壊しそうな話ですよ。
宮城:材質も多少は影響しますが、打感は打球面の裏側の肉厚でほとんど決まります。マッスルバックが肉厚なのはいうまでもありませんが、軟鉄鍛造だとキャビティでも肉厚を薄くできないので必然的に打感がよくなるというだけの話です。これに対してバネ鋼は初速を上げるために薄く作られることが多いので弾きの強い打感になります。
み:そういえば宮城さんの設計したプロトコンセプトのポケットキャビティはフェースがバネ鋼ですがあえて厚めに作られているとか。つまり、打感の違いは設計コンセプトによって生まれるということですね。そうであれば、われわれのようなふつうのアマチュアがわざわざ軟鉄鍛造アイアンを使う意味はありますか?
宮城:ひとつ大事なことを忘れていませんか。軟鉄鍛造アイアンの一番のメリットはライ・ロフト角を自分に合わせて調整できることです。プロや上級者が選ぶ理由もそこにあります。
み:アベレージゴルファーが手を出していいものでしょうか?
宮城:もちろんです。いいショットを打って、いいスコアで上がりたいという向上心があるなら、アベレージゴルファーこそ軟鉄鍛造アイアンを購入してきちんとライ角を合わせてもらうべきです。といっても、いきなりマッスルバックやハーフキャビティを使う必要はありません。最初はやさしいポケットキャビティを選べばいいでしょう。
み:最近はポケットキャビティが少なくなっているような気がするのですが、なにか理由があるのでしょうか?
宮城:ポケットキャビティは設計も製造も難しいからでしょうね。タングステンを入れるにしても、中空なら空洞の部分にポンと入れるだけですが、ポケットキャビティでは手間をかけてソールを加工しなくてはなりません。しかし、中空アイアンは飛距離は出ますが、本来やさしくはありません。本当に球が上がらない人やミート率が悪い人はポケットキャビティを探しましょう。