チッパーはどんなクラブ?
チッパーとは、ゴルフにおいてアプローチ専用のクラブを指す用語です。アプローチ専用のクラブというとアプローチウェッジが思い浮かぶかもしれませんが、アプローチウェッジがフルショットでも使うのに対し、チッパーはほとんどの場合30ヤード以内のアプローチでしか使わない(使えない)ような性能になっているのが特徴。
いわばフルショットという性能をあえて捨てることで、グリーン周りに特化させた、尖った性能のクラブなのです。
ではグリーン周りに性能を特化させた結果どうなっているのかというと、チッパーはアイアンやウェッジなどと比較したときに、圧倒的にダフリにくいという性能があります。アプローチにおいて最大のミスはダフリであり、ダフリと表裏一体のトップも危険なミス。その両者を防止することができるのがチッパーの最大のメリットです。
おすすめのアプローチ専用ギア「サブロクウェッジ」
チップショットとは
先ほどの項目で「チッパーとは、ゴルフにおいてアプローチ専用のクラブ」と記載しましたが、アプローチのなかでも「チップショット」が打ちやすいクラブなので、そのショット名から「チッパー」という名前になっています。
そして、そもそもチップショットとは、ボールを上げてグリーン面上に落とし、そこからカップに寄せていくアプローチショットのこと。ボールを高く上げるピッチショットとは区別されるショットです。そのポイントはより確率高くボールにヒットし、安全にグリーン面にボールを届かせることにあります。
たとえばボールからグリーンエッジまで5ヤード、グリーンエッジからピンまで15ヤードといった状況で非常に有効なのがチップショット。5ヤードキャリーさせ、そこから15ヤード転がすといったイメージです。
そのようなショットには通常ある程度ロフトの立ったウェッジやショートアイアンを用いるものですが、それを徹底的にやりやすくし、ダフリ・トップのミスが出ないように設計されているのがチッパーというわけです。
ほとんどパターくらいの難易度でチップショットを行うことができる。それがチッパーを使う最大の理由となります。
チッパーの特徴とロフト角
ピンに安全に寄せていくことができるチップショットがやりやすいクラブであるチッパーは、一般的にロフト角が寝過ぎていないのが特徴です。
なぜかといえばゴルフクラブのロフト角はボールを上に上げるために存在し、ロフト角が寝ていれば寝ているほどボールは上に行きやすくなる反面、距離感は合わせにくくなっていきます。
これはゴミをゴミ箱に放り投げることをイメージすると理解しやすいと思います。1.5メートル先のゴミ箱にゴミを投げ入れようとするときは、弾道が高すぎるよりもある程度目線に近いくらいの弾道のほうが狙いやすいはず。
同じように、アプローチでも特別な理由がなければボールを上げすぎないほうがアプローチ自体の難易度は下がります。チッパーはアプローチのミスを極力減らすことを目的として選ばれるクラブであるため、極端に寝たロフト角は必要がないのです。
そのため、チッパーのロフト角は大体35度くらいから45度くらいが主流。今のアイアンセットの基準でいえば、およそ8番からPWくらいのロフト角となります。
ロフト角50度を超えるチッパーの存在理由
ロフト角50度を超えるチッパーも存在しますが、本来のチップショットの役割というよりも、バンカー越えなどの特殊な状況や、バンカーからの脱出のためのクラブと考えたほうが良いと思います。
つまり、ロフト角50度を超えるチッパーは、チップというよりもむしろピッチショット(高く上げるボール)を打ちやすいクラブという印象で、ロフト50度未満のチッパーとは分けて考えたほうが良いと思います。
チッパーとアイアン(ウェッジ)はなにが違うのか?
チッパーはおよそ8番アイアンからピッチングウェッジくらいのロフト角が主流。となると、気になるのは「じゃあ普通のアイアンとなにが違うのか?」という点ではないでしょうか。
これは多くの場合一目瞭然で、チッパーは一目でそれとわかる特殊な形状をしていることが多くあります。極端なグースネック、極端なワイドソールなどがそれで、それらによってボールに当てやすくしていたり、ダフりにくくしたりしています。
形状以外の違いとして挙げられるのが、シャフトと地面が作る角度を表すライ角の数字。そして長さです。チッパーの場合ライ角が70度前後とパターと同じような数値に設定されている場合が非常に多く、長さも34インチ前後とパターと同等の長さになっているケースが多いです。
これはどういうことかというと、パターと同じようにボールに近く立つことができ、振り子のような軌道でストロークできるということを意味します。
つまり、ショット用のクラブというよりも、その実態はパターに近いのがチッパーというクラブなのです。パターは14本のゴルフクラブのなかでもっともダフリのミスが出にくいクラブ。それはボールの近くに立つことができ、振り子軌道のストロークができる点が大きな理由ですが、その感覚で振ることができるから、チッパーはやさしいのです。
チッパーはダサい? ズルい?
チッパーを巡る議論として避けて通れないのが「チッパーなんてダサい」とか「チッパーなんてズルい」という意見です。
まず後者についていうと、少なくともルール適合のチッパーに関しては「ズルい」ということはまったくありません。チッパーを使うと簡単に寄せられることから、周囲のゴルファーが羨ましいと感じて「ズルい」と言っているだけのことであり、ルールで使用が認められているものであればズルいという批判はふさわしくありません。
では前者の「ダサい」はどうでしょうか。こちらは“お助けクラブ”のイメージが強いことでそう思われているという事情があります。
ただ、20年ほど前まではユーティリティの使用が今ほど一般的ではなく、「カッコ悪い」「ダサい」と言われることもありました。今はプロもユーティリティを当然のようにバッグに入れており、誰もユーティリティをダサいとは言いません。
ゴルフにおいてカッコいいのは「結果がいい」ことに尽きるので、チッパーでピタピタ寄せられれば、誰もそのクラブを「ダサい」とは言わないのではないでしょうか。カッコいい(とされる)クラブでミスをするのか、ダサい(と言われがちな)クラブでピタッと寄せるのか、どちらを取るかはゴルファーそれぞれ価値観が異なるところですが、いずれにせよ、チッパーには「ズルい」と言われるほどの寄せに特化した性能があるのは間違いがありません。
チッパーのデメリット
では、チッパーにはデメリットはないのかといえば、もちろんあります。すでに述べたように、基本的には「アプローチ以外には使えない」という点。そして、「チッパーを入れるために、ほかのクラブを1本抜く必要がある」という点です。
チッパーはアプローチに特化したいわばエクストラクラブ。ルールで1ラウンドに携行できるクラブは14本と定められている以上、チッパーを入れるためには別のクラブをセッティングから外さなければならないというのは、明確にデメリットと言えます。とはいえ、セッティングを眺めてみれば、ミスする確率がやたら高い3番ウッドとか、入れてはいるけどほとんど出番のない19度ユーティリティとか60度ウェッジとか、出番がないクラブも1本2本はあるもの。それらミスの確率が高いクラブを抜いて、ミスの確率が極端に低いチッパーを入れれば、スコアアップにつながる可能性は大いにあります。
チッパーを入れるためには別のクラブを抜く必要があるのは一見デメリットに感じますが、セッティングを見直すきっかけにするのもひとつの方法です。
チッパーの打ち方・使い方
すでに述べたように、チッパーはライ角や長さがパターに近いものが多いため、打ち方的にもパターのイメージになります。グリーン周りで使うからといってウェッジやアイアンのように構えたりスウィングするのではなく、ボールに近づいて(クラブのライ角どおりに)立ち、スタンスはスクエアを基本とし、下半身を固定して振り子のイメージのショルダーストロークを行うのがミスなく打つためのポイントになります。
アマチュアゴルファーがアプローチでダフる原因のひとつに、極端に左足体重で構え、極端にボールを右足寄りに置き、スティープな(鋭角な)軌道でボールに打ち込むことが挙げられます。これらは「ダフリにくい打ち方」として紹介されることもありますが、上から下にクラブを打ち込む動きになるため、本質的にはダフリやすくなります。
チッパーで打つ場合は、このような打ち方とは真逆で、パターのイメージでストロークしてあげれば、ダフることもなく、ダフリを嫌ってトップをするということもなく、35〜45度のロフトがボールをほどよく上げてくれ、ピンに寄せてくれます。自分でなにかをする必要がなく、クラブ任せでそこそこ以上に上手くいく。それがチッパーの魅力であり、チッパーを使う最大の理由なのです。
チッパーを使うべきゴルファー
以上のように、チッパーは「グリーン周りでチップショットをする」ことにおいてはメリットだらけの強力なクラブです。言うまでもなくグリーン周りのアプローチはスコアに直結するので、グリーン周りでザックリしてしまう、トップを連発する“往復ビンタ”を頻繁にしてしまうなどしてスコアを崩してしまうゴルファーは、採用を検討する価値があります。
アプローチに苦手意識を持つゴルファーでなくとも、スコアの壁に悩んでいるゴルファーはチッパーを試す価値があります。たとえば90を切りたいゴルファーならば、チッパーを入れることでアプローチのストレスが大幅に減ります。そのぶん、ただ単純に「寄せたい」だけでなく、ピンに対してどこにつければ次のパットが打ちやすいかなど、戦略面に思考のリソースを割くことができるようにもなるのです。
また、チッパーに対し「ズルい」「ダサい」といった固定概念を持つゴルファーも残念ながら一定数いるのもまた事実なので、そういった外野の声をクールに聞き流せるかどうかも地味に重要かもしれません。チッパーでガンガン寄せて、外野の声をシャットアウトしましょう!
おすすめのチッパー
転がしに特化するのであれば、ロフト角が35度程度のチッパーを選ぶのがおすすめです。ボールを上げようという意識が働かないため、よりミスしにくくなりますし、距離感にフォーカスすることができます。一方、ロフト角が45度程度のチッパーは、バンカー越えなどある程度高さを出したいショットも打ちたいゴルファーにおすすめ。ただ、チッパーの形状によってはロフト角が非常に大きく見えるため、構えたときに多少違和感がある可能性は生じます。ロフト角が55度程度のチッパーは、既述したようにボールを上げる性能が高いため、簡単に高い球を打ちたい人用、といったイメージです。
また、チッパーではありませんが、チッパー的用途で使える「アプローチ専用クラブ」という選択肢もあります。たとえば、アプローチ専用ギアとして誕生した“サブロクウェッジ”は、ヘッド形状は8番アイアンそのもの。ですが、34.5インチとパター並みに短いことで非常にヒットしやすい転がし専用設計となっています。形状はアイアンなので、「ダサい」「ズルい」という声とも無縁で、軟鉄鍛造で打感も上質。ありそうでなかったアプローチギアとして人気を集めています。
オススメチッパー① サブロクウェッジ
プロキャディ・伊能恵子さんの「アマチュアはグリーン周りで58度を使うんだろう?」という一言から誕生した転がし専用ギア「ロフト36度の“サブロクウェッジ”」。アプローチを劇的にカンタンにしてくれて、1本入れるとお役立ち度MAXのエクストラクラブだ。
オススメチッパー② R25ランニングウェッジ
ゴルフクラブアナリスト・マーク金井氏が、グリーン周りでのミスを徹底的に“消す”ために考案したロフト25度のパター型アプローチギア「R25ランニングウェッジ」。パターと同じ形状のため、違和感なく構えることができるのが特徴。
オススメチッパー③ プロギア 「R35ウェッジ」
従来のチッパーのイメージを払拭するデザインで、2005年11月に発売されて以来、19年以上のロングセラーとなっているプロギアのR35ウェッジ。ロフト角は35度。アプローチをピンまで「キャリー1:ラン3」の割合で打てるように設計されている。
オススメチッパー④ オノフ「フロッグス ランニング」
ライ角はパターと同じ70度。パターと同じようにストロークするだけで、ザックリを恐れることなく上級者のようなピッチエンドランが打てる。クランクネックを採用しているため、クランクネックやスランクネックのパターを使っている人は違和感なく構えられる。
オススメチッパー⑤ ピン ChipR(チッパー)
普通のアイアンのようなシャープなルックスでチッパーに見えないと高い支持を得たピンの「ChipR」。ロフト角は38.5度でパターと同じ打ち方で距離感を合わせることができ、ピンを狙えるランニングウェッジ。
オススメチッパー⑥ ONESIDER UT Chipper Ⅱ 45
ユーティリティ形状のため、摩擦抵抗が少なく芝の抵抗やダフリに強いのが特徴的。バンカー越えなどある程度高さを出したいショットも打ちたいゴルファーにはロフト角が45度程度のチッパーがおすすめ。
オススメチッパー⑦ アドラージャパン「JADE ADLLER CW-01」
バンカー越えなどの特殊な状況や、バンカーからの脱出に悩んでいるゴルファーにおすすめなのはロフト角50度を超えるチッパー。アドラージャパン「JADE ADLLER CW-01」は55度まで展開しているため、簡単に高い球を打ちたいゴルファーにとって救世主となるはずだ。
チッパーを使ってみよう!
「お助けクラブ」というイメージの強いチッパーですが、うまくセッティングに取り入れることでグリーン周りを攻略するための強力なツールとなります。58度のウェッジでミスするよりも、チッパーでピタピタ寄せて、ベストスコア更新を狙っていきましょう!