ヘッドスピードに応じて強く握る
スウィングにおいて、手元はゴルフクラブと体の唯一の接点。どのような形でグリップするかは弾道に様々な影響を与えるし、どのくらいの力加減で握るか=グリップ圧も重要な要素だ。
グリップ圧については、古くから「小鳥を包み込むように握る」「卵をつぶさないように握る」といった表現がよくあるように、力を入れ過ぎないよう握るのが良いとされている。
ただ「僕は間違っている……とまでは言わないですけど、グリップ圧は結構人に寄ると思っています」と後藤は言う。
「まず大前提として、ヘッドスピードに応じてグリップ圧も強める必要があります。例えば綱引きするときに綱をゆるく握ることってないですよね。スウィング中も同じで、ヘッドスピードが速くなるほど遠心力によって体の外側にヘッドが引っ張られる力も強くなるわけで、そんなヘッドと引っ張り合いをして支えられるようある程度強く握る必要があります」(後藤、以下同)
もし手元にまったく力を入れていない状態で速く振ってしまえば、クラブが暴れ、手元からすっぽ抜けてしまうだろう。まったく力を入れないのは極端だが、グリップ圧が弱いと「その時点で無意識に振りを抑えてしまうんです。なので飛距離を伸ばしたい方は基本的にグリップを強く握ったほうがいいですね」と続ける。
「僕自身、長さがあって遠心力が強くかかるクラブほどグリップ圧って強くなることが多いです。長いクラブほどヘッドがちゃんと加速して、そのぶん遠心力がかかりますから。もちろん今僕が言っている『強く』は全力で握り込むのが10だとしたら、7~8くらいの力加減です。全力の10で握ってしまうと手元がガチガチになってしまうのでもちろん良くないですよ」
握力によってもグリップ圧は変わる
グリップ圧の強弱を調節するにあたり、そもそも握力がどの程度なのかも重要となってくる。プロたちが「ゆるく握る」と表現することが多いのも「結局プロたちって握力が強いからです」と後藤。
結局のところヘッドスピード次第なのは前述の通りだが、握力平均の違いによって「少なくとも男性と女性でニュアンスは変えなきゃいけないと思っています」と続ける。
「もちろん例外にあたる方もいると思いますが、平均値で言えば男性の場合多少ゆるく握っても握力があるぶんクラブを支えられたりします。しかし比較して握力の平均値が低い女性の場合『卵をつぶさないような力加減』では支え切れず、クラブの重さに負けてしまうことが多いんです」
クラブの重さを支えるための「最低限のグリップ圧」は人によって変わるが、手軽に確認する方法があるという。「アドレスを作った状態から、クラブを自分の腰か胸の高さまで持ち上げてみてください」と後藤。
「その際にヘッドがちゃんと支えられているなら大丈夫です。ヘッドがダラーンと倒れる方は支え切れていない=グリップ圧が弱く、クラブの重さに負けている状態ということです。少なくともクラブの重さに負けない程度にはグリップに力を入れてほしいですね。これなら手元でしっかりとヘッドの重さを感じられるし、ルーティンにも組み込めます」
逆に始めからヘッドを地面にポンと置いて構えるゴルファーの場合、アドレス時点で手元で重さを支える必要がないため、グリップ圧が弱くなりやすいので注意が必要だという。
「実際にやってみると『結構ゆるく握っていいんだ』と思う人もいれば『こんなに強く握らなきゃいけないの!?』と感じる人もいると思います。でも最低限クラブを支えられるくらいには力を入れないと、そもそもクラブを操作することもできないので、そこは勘違いしてほしくないですね」