パッティングにおいて議題に上がることの多いテーマの一つが「タッチ」について。より具体的に言うならば、ぴったりカップインするように転がすジャストタッチと、少しオーバーなタッチで打つのはどちらが良いのか、ということだ。
結論から言うと「ジャストタッチが正解です」と後藤。いったいなぜなのだろうか?
「よくパットって『30センチオーバーで打たないと』とか『そもそもカップに届かないと入るものも入らないよ』とか、ショートだけはなくそうみたいなことをアドバイスとして言われるんですけれども、それは大前提30センチオーバーのタッチがちゃんと出せる人に限り、なんですよ」(後藤、以下同)
そもそも100切りを目指すレベルのゴルファーは「パットの距離感・タッチがまだ確立させられていない場合が多いと思うんです」と後藤は続ける。
「となるとまずはジャストタッチでいいから、常に自分が『あそこに止める』って思ったところに打てるような距離感を養わないと、オーバーで打てないし、ジャストタッチとの使い分けもできません。だって、30センチオーバーで打とうと思って打てるゴルファーはジャストタッチだって絶対打てるはずですからね。目標をカップにするか、カップの30センチ先にするかっていうだけの話なので」
つまりオーバーに打つのはジャストタッチで打てるようになった次のステップということ。前提となる実力がない状態で、距離感が不安定なのに強く打ってしまうと、ジャストタッチで打ったときより手痛いミスにつながりやすいからだ。
「『入れに行くパット』とか『寄せるパット』って表現をよく聞くと思うんですけど、オーバーに打つのは前者ですよね。カップインのためにショートを嫌って強く打っているわけですから。でも、もっと上のレベルだと話は別ですが少なくとも100切りのレベルでは、基本的に『入れに行くパット』ってないんです」
もちろん「別に30センチオーバーが間違いだっていう話ではなくて、30センチオーバーを打つ実力に満たしていないかもしれないというだけです」と後藤。何事にも得手不得手があり、たとえばパットが得意だと感じていて、実際にスコアにも表れているゴルファーは、後藤が語ったような「狙ったところに転がすためにどのくらいの力加減で打てばいいか」が感覚的にわかっているから入るわけだ。
「そういった距離感がまだ不安定だと感じている方は、基本はジャストタッチで打つ精度を上げていきましょう。朝のパターの練習もすべてジャストタッチ、打つ際の意識・イメージとしては『入れる』でなく『止める』を目標にしてほしいです。入る・入らないは別として、狙ったところに止める意識が大事ですよ」
距離感……感覚の話なので一朝一夕ではいかないが、続けていくうちにジャストタッチが安定してきたら「その次にオーバーに挑戦してみましょう」と後藤。
「『比較的ジャストタッチになってきたな』とか『3パットがかなり減ってパット数が安定してきたな』となってきて初めて、ちょっとオーバーで狙う選択肢が出てきます。具体的には5メートルの距離を2パット……1打目でOKの範囲に止めて2打目で沈め切ることが安定してできるようになったら、次のステップとしてオーバーに狙ってみましょう」
後藤曰く「理想は10メートルを2パット」だが、まずはハードルを下げて「5メートルを2パットを目指してください」とのこと。「5メートルでも『長いよ』と感じるかもしれませんが、日常にあるものの長さに置き換えると意外とそんな長くないですよ。例えば一般道の車道の破線の長さ、消防車の全長は大体5メートル前後です」とのこと。
「届かなければ入るものも入らない」のは間違いないが、100切りを目指すゴルファーにとってはオーバーに打つのはまだ危険な場合が多い。パットに不安を抱えるゴルファーは今一度タッチについて考え直してみてはいかがだろうか。